『新しい公民教科書』の画期性とは何か7――中国の全体主義的性格、民族弾圧を記す

  今回が、〈『新しい公民教科書』の画期性とは何か〉第7回となる。シリーズの最後となる。できるだけ拡散をお願いするものである。

  21世紀の「新冷戦」

国際社会が競争社会であると捉える『新しい公民教科書』は、米ソ冷戦と類比して、今日の国際社会をアメリカと中国との「新冷戦」の時代と規定した。単元61「冷戦終結後の国際社会」で「法の支配をめぐる対立」という小見出しの下、次のように説明している。

対外的にも、中国は強権的な姿勢を強めており、2013年、フィリピンが、スカボロー礁の領有権や漁業権について、常設仲裁裁判所に仲裁を依頼した時には、仲裁に応じること自体を拒否しました。そして、2016年に仲裁裁判所が中国の領有権主張に国際法上の根拠がないと決定した時には、この決定を「紙くず」だと言って無視しました。
この中国の拡大を抑え込む動きがアメリカを中心とする諸国の間で世界に広がり、21世紀の「新冷戦」ともいわれるようになりました。わが国は、自由、民主主義、人権という価値を共有する国々と協力して、国際社会において法の支配を守っていこうとしています。  (181頁) 


経済的自由権と私有財産制の重要さを説く

言うまでもなく、日本はアメリカを中心とした自由民主主義体制の国である。本教科書では、単元25「経済活動の自由」で経済的自由権の重要さを説き、「日本国憲法」が「生産手段の私有制を中心とした私有財産制の保障」をしていると述べ、更に「社会主義化しようと思えば、憲法改正が必要である」と述べた。

そして日本などの自由民主主義体制が、中国が代表する全体主義的な体制よりも優れていることを説いた。例えば、単元44「市場経済の特色」では、市場経済が計画経済よりも効率的で公正な制度であることを展開した。〈もっと知りたい 企業はだれのものか〉では、中国の会社は共産党のものであることを以下のように記した。

中国の会社は共産党のもの
中国の会社法第19条には、「中国共産党規約に基づき、会社内に中国共産党の組織を設立し、党の活動を行うものとする。会社は党組織のために 必要な条件を提供しなければならない」とある。また、共産党規約第29条第1項には「企業、農村、政府機関、学校、科学研究機関、住民区・コミュ ニティ、社会組織、人民解放軍の中隊およびその他の末端組織で、正式党員が3名以上いるところには、すべて党の末端組織を作るものとする」と ある。  
したがって、中国国内では、原則として、共産党員が3名以上いる会社では共産党支部をつくらなければならない。国有企業や国内の民営企業では、この原則通り、共産党支部がつくられており、共産党支部が経営者の上位に位置し、いろいろ経営をめぐって指図や干渉をしている。さらに 中国は、この原則を外資系企業にもあてはめて、 共産党支部を置くことを強要している。中国では、会社は、何よりも共産党のものなのである。   (135頁)


チベット、ウイグル、モンゴルへの民族弾圧を記す

これに対して、中国の政治経済体制については、批判的に紹介している。上記単元61では、中国が共産党による一党独裁国家であると規定し、「経済活動の中心は党の方針が直接反映される国有企業であり、民有企業も党の統制に服しています」としたうえで、「要するに、自由民主主義の国家とは異なり、政治と経済は分離しておらず、両者とも共産党が強権的に支配しているのです」と結論付けている。

さらに単元61では、チベットやウイグル、内モンゴルにおいて激しい民族弾圧が行われていることを記した。民族弾圧の詳細は、〈もっと知りたい 近隣諸国の人権問題〉で示した。特に、新疆ウイグル自治区で40数回も核実験が行われたこと、約100万人のウイグル民族が「再教育センター」という収容所に入れられている危険性があることを明記した点が注目される。以下に引用しよう。

ウイグル  
かつて、東トルキスタン共和国として独立した(1944~46)ウイグル地域は、中華人民共和国時代に併合され、新疆ウイグル自治区となっている。ここに住むウイグル民族は伝統的 にイスラム教を信仰している。
この地域では、1964年から1996年まで、40数回にも及ぶ核実験が行われ、住民に重大な健康被害が起きているといわれている。しかし、適切な調査や治療は行われていない。
 2018年8月、国連の人種差別撤廃委員会は、ウイグルでは約100万人のウイグル民族が 「再教育センター」という政治犯収容所に入れられている危険性があることを、中国政府に対し勧告した。中国政府はこれに対し、再教育センターの存在は認めたが、それは、過激なイスラム教を信じる一部のテロ分子を隔離しているだけで、ウイグル地域は平穏だと反論している。     (186~187頁)



チベットやモンゴルの民族弾圧についても、同程度の詳しさで取り上げている。興味のある方は、5月下旬発行の市販本で確かめられたい。

 北朝鮮と韓国の人権問題も記す

 さらに、検定でズタズタにされたため、極めて不十分な形であるが、北朝鮮と韓国の人権問題も記した。関連して、別の箇所であるが、南シナ海での中国の横暴も記述した。

 検定によってバッサリ全面削除された箇所も多いが、全体主義批判、中国批判の特徴は基本的に残っている。

 
  転載自由





"『新しい公民教科書』の画期性とは何か7――中国の全体主義的性格、民族弾圧を記す" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。