平成24公民教科書資料Ⅲ(9)平等主義と自由主義

                   Ⅲ、立憲主義か全体主義か


                   (9)平等主義と自由主義


    戦後公民教科書は、「日本国憲法」を全体主義的に解釈する尖兵の役割を果たしてきた。昭和30年度からは権力分立などを排除した「日本国憲法」三原則を展開し、国民全体に広めてきた。次いで、昭和41年度から平等権という思想を展開してきた。平等権とは結果の平等を求める思想であり、過激な平等主義を生み出し、逆差別思想の根拠となるものである。

   平成に入ると、この平等権思想を根拠にして、自由権に関する教育はおざなりにされながら、差別問題に多くの頁が割かれるようになる。明らかに、日本の公民教科書は、自由主義を軽視し、平等主義に偏する形で教育を行ってきたのである。そして、平等主義の花形として、在日韓国・朝鮮人差別問題が過剰かつ過激に強調されてきたのである。

  今回の7社の公民教科書を検討してみると、平等権思想に染まった東書、育鵬社等6社VS自由を重んずる自由社という対立構造となる。以下、7社の記述を比較されたい。


○分析項目
 ①平等権という言葉を用いるか
  絶対的平等ではないことを断るか
 備考②平等権の例
 ③分量
 ④自由権の分量

○東京書籍
 ①平等権という言葉を用いるか……用いる
 ②平等権の例……部落差別、アイヌ、在日、障害者差別、外国人、女性差別、
 ③分量……6頁
 ④自由権の分量……2頁
①「第2章 人間の尊重と日本国憲法」「2 人権と共生社会」の節見出し下、単元「2 平等権と共生社会」下、「平等に生きる」→「部落差別からの解放」→「アイヌ民族への差別撤廃をめざして」→「在日韓国・朝鮮人への差別撤廃をめざして」→「男女平等をめざして」→「障害のある人への配慮」→「日本に住んでいる外国人」→「共生社会をめざして」の小見出し(42~45頁)の小見出し。「平等に生きる」の小見出し下、全文引用
 「すべての人は平等であって、平等なあつかいを受ける権利(平等権)を持っています。しかし、歴史的には偏見にもとづく多くの差別があり、現在でもなお残っています。とりわけ生まれによる差別は、平等権に反し、個人の尊重の原理をおかすものなので、一日も早くなくさなければなりません」(42頁)。
 ・更に、「深めよう 共生社会について考えよう」の大コラム下、障害者の分が少し、次いで部落差別、在日の分が多く書かれる(46~47頁)。

○日本文教出版 
 ①平等権という言葉を用いるか……用いる
 ②平等権の例……女性差別、障害者、部落差別、アイヌ、在日
 ③分量……6頁
 ④自由権の分量……2頁
 ⑤備考……ここでは、[国民の基本的人権]の立場
第2編第1章2節、単元「3 等しく生きる権利①」下、「平等権とは」→「男女共同参画社会をめざして」→「障害者とともに生きる社会」の小見出し。「平等権とは」の小見出し下、全文引用
 「人にはだれでも個人として尊重され、平等なあつかいを受ける権利(平等権)があります。日本国憲法は、すべて国民が、法の下に平等であることを確認して、さらに、人種(民族をふくむ)、信条、性別、社会的身分などを理由にして差別されないと定めています(第14条)。これは、身分上の差別や性別による差別など、歴史上くり返されてきた不当な差別を例にあげ、そのような差別がないように、平等を保障しているのです。
人の生まれや、人が生まれつきもっている性別や肌の色、身体の障害などの理由で差別を受け、不利益をこうむることは、個人の尊重の考え方からは許されないことです。人々を豊かにする社会とは、ちがった人種や国籍や信条などをもつ人たちが、互いを尊重し、理解しあってともに生きる社会です」(50頁)。
・次の単元5「等しく生きる権利②」の下、「部落差別をなくすために」→「アイヌ民族への差別」→「在日韓国・朝鮮人差別」の小見出し(54~55頁)。
・単元4「バリアフリー社会をめざして」(52~53頁)。

○教育出版
 ①平等権という言葉を用いるか……用いる
 ②平等権の例……ハンセン病患者、女性差別、障害者、部落差別、アイヌ、在日
 ③分量……6頁
 ④自由権の分量……2単元4頁
第2章「2 憲法が保障する基本的人権」の節見出し下、単元「3 法の下の平等とは 平等権①」下、「法の下の平等と差別問題」→「男女の平等」→「障害のある人とともに」の小見出し。「法の下の平等と差別問題」の小見出し下、
 「個人の自由が妨げられ、人の心を深く傷つける差別が残っているとしたら、わたしたちに個人の尊厳が保障されているとはいえません。日本国憲法は、法の下の平等をかかげています。これによって、これまでに多くの人々が差別や偏見から解放されてきました。近年の例としては、ハンセン病患者に対する差別や偏見の問題がありました。現在、国や地方公共団体では、それらの差別や偏見をなくすために、過去の反省をふまえてさまざまな啓発活動に取り組んでいます。
しかし、今日においても、なお、さまざまな不平等や差別が残っていて、多くの人々を苦しめていることも事実です。男女差別、障害のある人への差別、部落差別、アイヌ民族への差別、在日韓国・朝鮮人に対する差別などをどのように解決していくかは、わたしたちにとっても、社会にとっても重要な問題です」(44頁)。
・単元「4 差別をしない、させない 平等権②」下、「部落差別からの解放」→「アイヌ民族への差別」→「定住外国人への差別」の小見出し(46~47頁)。
・「ともに生きる社会をめざす人たち」の大コラム下、部落差別他(54~55頁)

○清水書院
 ①平等権という言葉を用いるか……用いる
 ②平等権の例……部落差別、アイヌ、在日、ハンセン病、女性、高齢者、障害者
 ③分量……6頁
 ④自由権の分量……2単元4頁+1頁の大コラム
 ⑤備考……ここでは、[国民の基本的人権]の立場
第1章2節単元3「平等権(1)」下、「平等権とは」の小見出し→「男女の平等」の小見出し→「家族生活と人権」のサブ小見出し。「平等権とは」の小見出しの下、全文引用
 「人は、国も民族も、性別も家庭も能力も、自分で選ぶことなく生まれてくる。一人ひとりがちがう条件をもち、異なった存在である人間にとって、平等とは何だろうか。
 それは、だれでも人間としての尊厳にちがいはないということであり、それゆえに、すべての人が差別なく人間として平等なあつかいを受ける権利をもつということである。憲法はこれを平等権として保障している。
 基本的人権は、すべての国民にひとしく保障されなければならない。差別によってゆえなく結婚や入学、就職などを拒まれることがあってはならない。そのため、憲法は、国民の法の下の平等を宣言している。
そこでは、これまでの歴史や現実をふまえ、すべての国民は、人種、思想や宗教、性別、社会的身分や家がらなどのちがいによって、政治的・経済的・社会的関係において差別されないと記されている。
 この憲法の平等権の保障は、法律の制定や社会のしくみをつくる指針となり、差別の撤廃を求める運動をすすめる人びとにとって、大きなよりどころとなってきた」(36頁)。
 ・側注①「日本国籍をもたない人もふくめ、日本に住むすべての人びとに基本的人権が認められるか、については議論が分かれる。」(36頁)
・「平等権(2)」の単元見出し下(38~39頁)、「差別の撤廃を求めて」の小見出し下、部落差別、アイヌ。次いで「ともに幸福に生きられる社会へ」の小見出し下、在日中心。
・「公民ファイル 平等権について考える」の下、「男女平等をめざして」→「ハンセン病元患者の長いたたかい」→「部落差別の撤廃をめざして」→「外国人お断り?」の小見出し(40~41頁)。

○帝国書院
 ①平等権という言葉を用いるか……用いる
 ②平等権の例……単元6「現代社会に残る差別(1)」下、「部落差別」の小見出し。次いで、「アイヌの人々への差別」の小見出し(44~45頁)。
・単元7「現代社会に残る差別(2)」下、「在日外国人への差別」の小見出し。続いて「さまざまな偏見・差別」の小見出し下、エイズ、ハンセン病患者、障がい者(46~47頁)
 ③分量……6頁
 ④自由権の分量……2頁
⑤備考……ここでは、[国民の基本的人権]の立場。
第2部2章単元5「平等権について考えよう」下、「平等権とは」→「平等のあり方」→「男女平等はいま」の小見出し。「平等権とは」の小見出し下、全文引用
 「個人の尊重の原則は差別があっては実現できません。そのため、すべての国民は法のもとに平等とされ、ひとしく生きる権利(平等権)が保障されています。人種、性別、社会的身分や家がら(門地)によって、いかなる差別も受けない権利をもっているのです。現在では、明治時代に設けられた華族など貴族の制度も認められません。……選挙でも平等が保障され、選挙区の議員定数も、一票の格差が不合理な程度に達しているときは、憲法に反するとされます」(42頁)。
⑥備考……珍しく、絶対的平等ではないとしている。
 同単元下、「平等のあり方」の小見出し下、「平等といっても、すべてを一律に同じ扱いをすることが要求されているわけではありません。平等とは、人それぞれに違いがあることを前提として、同じ事情と条件のもとでひとしく取り扱うということです。
 そのため、個人の尊重の考え方に反しない確かな理由にもとづくならば、取り扱いに差が出たとしても許されます。人の個性や価値観にもとづく違いは、認められます。また選抜試験のように、ひとしい機会が与えられたうえで、結果が違ってくることはやむをえません。
 確かな理由にもとづかない取り扱いだけが、差別として禁止されます。しかし一つのことがらについてもさまざまなとらえ方があり、何が確かな理由にもとづき、何が差別にあたるかを判断することは、実際には容易ではありません。」(42~43頁)。

○育鵬社
 ①平等権という言葉を用いるか……用いる
                      絶対的平等ではないことを断るか……断る
 ②平等権の例……部落差別、男女平等、外国人、障害者、アイヌ、ハンセン病元患者、エイズ感染者
 ③分量……2単元+1頁、計5頁
 ④自由権の分量……2頁
 ⑤備考……学説・判例に従い、合理的区別が許されることを書いている。他社は、自由社を除けば、[国民の人権]的か、[国籍を問わぬ人権]的かで違いがあるが、絶対的平等論である。
第2章第2節単元1「平等権」下、「法の下の平等」の小見出し下、全文引用。
 「人間は顔や体格はもちろん、その能力も性格も千差万別です。しかし法はそのようなちがいをこえて平等な内容をもち、全ての国民に等しく適用されなくてはなりません。憲法は『すべて国民は、法の下に平等』(14条)であり、人種や性別、社会的身分などによって差別されてはならないと定めています。
 しかし、これはすべてのちがいをとりはらった絶対的な平等を保障するものではありません。また、行き過ぎた平等意識はかえって社会を混乱させ、個性をうばってしまう結果になることもあります。
例えば、人は大人と子ども、親と子、先生と生徒、職場の上司と部下のように、年齢や立場のちがいなどに基づいて人間関係を築いています。円滑な人間関係を維持していくためには、そのようなちがいを認め合いながら、たがいを人間として尊重していく態度が必要です
」(52頁)。

○自由社
 ①平等権という言葉を用いるか……用いない
  絶対的平等ではないことを断るか……断る
 備考②平等の例……部落差別のみ(68頁)
 ③分量……1.7頁
 ④自由権の分量……2頁
①単元23「権利の平等と社会権」下、「権利の平等」の小見出し下、「日本国憲法は、第13条で『すべて国民は、個人として尊重される』と規定し、第14条で『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又または門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない』と定めています。このように、国民のだれもが一個の人格として差別なく尊重され、自由な社会的活動の機会を等しく享受できることの保障を法のもとの平等、または権利の平等といいます。
  しかし、憲法が保障する平等とは、あらゆる社会的活動への参加の機会が国民全員に平等に開かれていること(機会の平等)であって、各人の努力や、能力、適性のちがいによって生じた社会的役割のちがいや差をなくすこと(結果の平等)ではない点に注意する必要があります。」(66頁)



"平成24公民教科書資料Ⅲ(9)平等主義と自由主義" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント