平成24公民教科書資料Ⅲ(8)権利の捉え方

                  Ⅲ、立憲主義か全体主義か

                
                      (8)「日本国憲法」下の権利の捉え方


○分析項目
 ①人間の権利か国民の権利か
 ②公共の福祉


○東京書籍
①人権の定義……第2章1節単元2で、「人権はだれもが生まれながらに持っており、法律によっても制限されないという真の人権思想の確立」」(35頁)。
   *おかしな定義
・「第2章 人間の尊重と日本国憲法」「2 人権と共生社会」の節見出し下、単元「1 基本的人権と個人の尊重」下、「だれもがもっている人権」の小見出し下、「人権の保障は、わたしたちすべてが享受します。老人や女性、障がい者すべてに、人権が保障されます。……人権の保障は、社会の中で差別されている人々、弱い立場にある人々にとって、特に大切です。その人たちが、差別や人権侵害をうったえ、その救済を求めて政府や社会に働きかけるとき、その主張を支えるのが人権の保障だからです」(41頁)。
②公共の福祉……16行
 第2章2節単元「5 人権保障を確かなものに」の下、「人権と『公共の福祉』」の小見出し下、「人権は、法律によってもおかされない権利であり、人権を不当に制限している法律は憲法違反で無効です。しかし、法律による人権の制限が憲法違反ではないということもあります。これはどういうことでしょうか。
 人権が保障されているからといって、わたしたちは何でも好き勝手なことをしてよいというわけではありません。言論の自由といっても、他人の名誉やプライバシーを侵害することは許されません。このように、わたしたちの社会生活では、人権には他人の人権を侵害してはならないという限界があります。また、社会での共同生活のために制約を受けることがあります。このような人権の限界のことを日本国憲法は『公共の福祉』と呼んでいます。
 しかし、何が『公共の福祉』にあたるのかを政府が一方的に判断して、人々の自由な人権の行使を制限することがあってはなりません。人権が『公共の福祉』によって制限されるといっても、その人権の制限が具体的にどのような公共の利益のためなのか、考えていく必要があります」(53頁)。
 
○日本文教出版
①人間の権利か国民の権利か……国民の基本的人権の立場
第2編1章2節単元「1 人権思想のあゆみと日本国憲法」下、「人権思想の誕生」→「人権思想の発展」に続いて、「日本国憲法の人権保障」の小見出し下、「日本国憲法は、アメリカ独立宣言などと同様に、人が生まれながらにもつ自由や平等の権利を、基本的人権として保障しています。その根本には、『個人の尊重』の考え方があります。それが、『すべて国民は、個人として尊重される。』(第13条)にあらわされています。さらに、日本国憲法は、参政権や社会権も保障して、このような人権が『人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果』(第97条)であり、『国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。』(第12条)として、人権保障の考えを徹底しようとしています。」(47頁)
②公共の福祉……1頁と8行
第2編1章2節、単元「11 公共の福祉と国民の義務」下、「人権と公共の福祉」の小見出し下、「自由とは、何をしてもよい、勝手気ままに行動してよい、ということでは決してありません。人権についても同じです。ある権利が憲法によって保障されているからといって、自分の権利だけを保障せよ、といえません。
 例えば、表現の自由が保障されているからといって、他人のプライバシーや名誉を侵害することは許されないし、信教の自由があるからといって、他人の身体を傷つける宗教行為を行うことは許されません。また、職業選択の自由があるからといって、自由に病院や美容院を開業できるわけではありません。医師や美容師になるには特別な資格が必要です。
 このように、個人の人権の主張には、同時にほかの人々の人権を守るという責任がともないます。また、経済政策などの観点から自由が制約されることもあります。日本国憲法は、自由および権利は、『濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。』(第12条)とし、この限界を公共の福祉という言葉であらわしています(第12・13条)。しかし、たいせつな人権が『公共の福祉』の名をかりて、簡単に制限されないないように注意する必要があります。どのような人権が、何のために、どの程度制限されるか、それぞれの場合によって検討することが必要です。裁判所は、それが正当な制限であるのかを判断する重要な役割を負っています」(68~69頁)。

○教育出版 
①人間の権利か国民の権利か……国民の基本的人権の立場
第2章1節単元1下、「憲法で示されていること」の小見出し下、「憲法は、大きく分けて二つの内容から構成されています。一つは、国民の権利を保障する内容です。わたしたちは、だれもが生まれながらにして自由かつ平等であり、個人として尊重される権利があります。そのことは、『日本国憲法』では、現在および将来の国民に対して、『侵すことのできない永久の権利』として定められています。」(32~33頁)
 ②公共の福祉……13行
 2章2節単元「10 自由と権利を守るために 国民としての責任と義務」下、「自由と権利」の小見出し下、「日本国憲法には、自由と権利を保持するために、国民にも努力する必要があることが示されています」(60頁)。
・続けて、「公共の福祉」の小見出し下、「例えば、表現の自由が保障されているからといって、他人の名誉を傷つけ人権を侵害することは許されません。また、事前の許可もなく、公共の場所でデモ行進を行うことは禁じられています。個人の人権の主張には、ほかの人たちの権利を守るという責任が伴うのです。
 憲法は、わたしたちが社会で共同生活を営んでいくために、公共の福祉を定めています。公共の福祉とは、『国民全体の利益と福祉』という意味です。公共の福祉は、人権と人権のぶつかり合いを調整する、大事な役割を果たしています。一方で、人権の制限がどこまで許されるのかという問題は、必要な範囲で最小限に行われているかどうかで判断されなければなりません。特に、精神活動の自由の制限は、慎重に判断する必要があります」(61頁)。

○清水書院 
 ①[国民の基本的人権]の立場
 ②公共の福祉……1頁(22行)
①第1章第2節単元1「自由権(1)」下、「基本的人権とは」の小見出し下、「憲法では、一人ひとりの人間を個人として尊重し、国民のだれもが幸福を求める権利をもつことを明記している。同時に、自由や平等、幸福を求める権利は、人として生まれたことによる基本的な権利であることから『基本的人権』とよばれる。
 それは、だれもうばうことのできない永久の権利であるが、行使することをおこたると失ってしまうものでもある」(30~31頁)。
②第1章第2節単元7「公共の福祉と国民の義務」下、「日本国憲法は、いろいろな権利や自由の保障をかかげている。しかし、このことは、この権利や自由をかって気ままに使ってよいということではない。また、すべての人の権利は公平に尊重されなければならない。
 そのために憲法は、自由や権利を『公共の福祉のためにこれを利用する責任』を定めて、権利を乱用せず、みんなの利益や幸福を配慮して行使するよう求めている。
 それでは、どのようなばあい、権利は制限されるのだろうか。第一は、ある人が自由や権利を使うことが、他の人の自由や権利を不当に侵害するばあいである。
 たとえば表現の自由はたいせつだが、だからといって何を発表したり出版したりしてもいいということではなく、他人の名誉を傷つけることは許されない。このばあいの公共の福祉とは、ある人の人権と他の人の人権とが衝突しないように調整するための原理である。
 第二に、財産権などは、公共の福祉のためにより多くの制限を受ける。たとえば、道路拡張や空港建設のために代償をともなって個人の土地が収用されることがある。このばあいの公共の福祉とは、社会全体の利益のことである」(48頁)
 ・側注①「そもそも、他の人の権利との衝突がありえない人権は、公共の福祉による制限を受けない。たとえば、思想・良心の自由は、それらの思想がその人の心のなかにとどまるかぎりは、どのような制限も受けない」(48頁)。
同単元下、「人権と公共の福祉」の小見出し下、「しかし、現実には、何が公共の福祉であるか、つまりどういう理由でどこまで人権を制限できるのかを決めることはむずかしい。たとえば、政治家や有名人の私生活について、マス-メディアはどこまで報道していいのか。また、建物の高さや建てかたなどの制限は、どのような目的でどの程度までなら許されるのか。どれもむずかしい問題である。
 このように、公共の福祉とは個人の人権を制限することもあるので、慎重にあつかわなければならない。それは、国や地方公共団体が思うがままに決められるものではない。
 権利や自由に名を借りたエゴイズムが許されないように、『公共の福祉』の名のもとに、個人の権利や自由を必要以上に制限することも許されないのである」(49頁)。

○帝国書院 
①第2部第2章単元4「基本的人権と私たち」下、「日本国憲法では『侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる』もの、つまり人が生まれながらにもつ権利だと認められました。日本国憲法の三大原則の一つが基本的人権であるのも、基本的人権が日本国の基礎をつくっていると考えられたからです。」(40頁)……人間の権利の立場 *ただし、平等の所では、国民の基本的人権の立場
②公共の福祉…………17行+1頁
単元11「人権を守るためには」下、「社会の一員としてのあり方と公共の福祉」の小見出し下、「基本的人権は最大限尊重されなければなりませんが社会の大多数の人々の利益のために制限されることがあります。これを公共の福祉による制限といいます。例えば、言論の自由があるとしても他人の名誉を傷つけることは許されません。公共施設の建設のためには、正当な補償のもとに個人の土地を収用することもありえます。憲法も、国民の自由や権利は『常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ』と定めています。しかし『公共』とは、社会の一員である私たちが共同でつくりあげていくものです。公共の福祉の名のもとにむやみに人権が制限されてはなりません。
私たちは社会の一員であり、その一人ひとりがよりよく生きたいと願っています。すべての人々の基本的人権を守っていくためには、自分の自由や権利を主張するだけでなく、他人の権利を尊重する責任が生じます。私たちは、自由権や他の人権をみだりに行使(濫用)しないよう努めなければなりません」(55頁)。
・「持続可能な社会をめざして 人権の保障と公共の福祉」下、「さらにもう一歩 公共の福祉による制限」下、「人権が制限される例としては、公共の目的のために正当な補償をして土地を収用すること(財産権の規制)、他人の名誉を傷つける行為の禁止(表現の自由の規制)、デモの規制(集会・結社の自由の規制)などがあります」(56頁)。

○育鵬社 
 ①[国民の基本的人権]の立場
 ②公共の福祉……10行。
第2章第1節単元5「基本的人権の尊重」下、「公共の福祉による制限」の小見出し下、
 「憲法は、国民にさまざまな権利や自由を保障していますが、これは私たちに好き勝手なことをするのを許したものではありません。
 憲法は、権利の主張、自由の追求が他人への迷惑や、過剰な私利私欲の追求に陥らないように、また社会の秩序を混乱させたり社会全体の利益をそこなわないように戒めています。
 憲法に保障された権利と自由は、『国民の不断の努力』(12条)に支えられて行使されなくてはなりません。憲法では、国民はこれらの権利を濫用してはならず、『常に公共の福祉のためにこれを利用する責任』があると定めています(12条)」(46~47頁)

○自由社
①人間の権利か国民の権利か……[国民の基本的人権]の立場
②公共の福祉……内容・分量から……1頁弱
①単元21「基本的人権と公共の福祉」下、「国民の基本的権利」の小見出し下、「政治権力は法に基づいて行使されなければならないという立憲国家の法治主義は、政治権力の恣意的な支配から国民の自由と権利を守る役割を果たしてきました。この立憲政治の考え方は、憲法が、国民に保障される自由と権利を明確に規定することによって具体化されます。
 日本国憲法は、第3章「国民の権利及および義務」(10条~40条)において、『自由権』『社会権』『参政権』『請求権』などの幅広い国民の基本的権利の保障を定めています。第11条では、これらの基本的権利を基本的人権と呼び、これを『侵すことのできない永久の権利』として、現在および将来の国民にあたえられると宣言しています。
 この基本的権利の保障の根底にある考え方は、『個人の尊重』の思想であり(13条)、人間一人ひとりの人格をかけがえのないものとして尊重するとともに、人格としての人間を平等に差別なく尊重する思想です」(62頁)。
②「公共の福祉による制限」の小見出し下、「憲法は、人間一人ひとりを個人として最大限尊重することを政治権力に対して求めると同時に、国民に対しても求めています。第12条は、憲法が保障する自由と権利の濫用を戒め、国民は、つねに公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うと規定しています。
 この公共の福祉の考え方も、人間個々人を尊重する精神に発するものです。すなわち、ある人の自由や権利の主張が、他の人々の自由や権利を不当に侵害、抑圧することのないよう、また国家や社会の秩序を混乱や崩壊に導き、結果として多くの人々の自由、権利や幸福を侵害することのないよう戒めるものです。私たちは一人で生きているのではなく、共同で社会生活を営んでいることを片時も忘れず、自由や権利を行使する必要があります。
 一方で、『公共の福祉』の名を借りて、私たちの自由や権利が不当な制限を受ける可能性もあります。自由や権利の制限がなされることが正当か、またいかなる理由でどの程度制限されることが妥当かを判断するのは、裁判所の重要な役割の一つです。」(62~63頁)



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