国家の役割を明確化した―――――『新しい公民教科書』の記述(1)

 『新しい公民教科書』の記述で紹介すべき第一は、この教科書が国家論を展開し、教書史上初めて国家の役割を、防衛、社会秩序(法秩序)の維持、社会資本の整備、国民一人ひとりの権利保障の四点に明確化したことである。その記述を以下に掲げておこう。

   単元13「国家の成立とその役割」

  「国家の成立」の小見出しの下、以下の記述

  序章で学習したように、国家が農業の開発とともに生まれたのはなぜでしょうか。農業では、開墾、治水など大規模な土木工事が必要です。そこでは、それまでの小さな単位の地域社会をはるかにこえた大きな地域全体の人間が協力して働くようになります。その結果、食糧生産が増大すると、外部の狩猟民、遊牧民や他の農耕民などが奪いにくる場合があります。そうすると指導者(王)のもと、利害の共通する地域全体で軍事組織をつくって防衛する必要が出てきます。城壁もつくらなければなりません。こうして、防衛と共同の工事の必要から、大きな地域全体が一つの生活体となり、共同社会にまとめられていき、やがて国家へと成長します。

  古代の人々は宗教と密接にかかわって生活していました。穀物を保管する貯蔵庫に隣接して神殿がつくられ、神官が穀物の豊かな実りを神に祈りました。国家がさらに発展すると、文字が発明されます。文字によって記録を作成・保管し、国家を運営する役人(官僚)が生まれます。

  外敵からの防衛に失敗すれば、国家は滅びてしまいます。ですから、王は強力な軍事指導者でなければなりません。同時に、官僚を使って国内を統治し、外部に対しては国家を代表しなければなりません。
 
                                        (38~39頁)

続けて「国家の役割」という小見出しの下、以下の記述

  歴史をふり返ると、外敵からの防衛は国家の重要な役割でした。また、道路や橋の建設など、土木工事などを行って、生産と生活の基盤となる社会資本の整備を図ること、そして法を制定し、法に基づき社会秩序を維持し、国内に平和をもたらすことも、国家の重要な役割です。

  国家がもつ法に基づき社会秩序を維持する役割は、なぜ必要とされたのでしょうか。国家成立以前の、単純な群れのようにして暮らしていた社会では、領域も狭く人口も少なかったので、人々はたがいに知り合い同士でした。知人同士の人間関係のなかでは、長老の権威や道徳・慣習などによって秩序を保つことができました。ところが、国家という社会は、広い領土に大勢の人が暮らすので、おたがいに十分には知り合えません。見知らぬ者同士がいろいろな関係をもちながら暮らさなければならず、長老の権威や道徳・慣習だけでは秩序が維持できません。そこで、社会秩序を維持するために法が生まれました。そして、その法を守るよう命令し強制する力が必要となりました。これが国家がもっている政治権力です。

                                            (39頁) 


 単元14「立憲主義の誕生」

  「民主主義と国民国家」の小見出し下、以下の記述

   市民革命は、人々に政治活動の自由を与え、国家を構成するすべての人々(国民)が国家の政治に参加する可能性を開きました。そして国民は、国家の政治に参加する公民となりました。こうして、自由で平等な国民の政治参加によって運営される国民国家が成立したのです。

  結局、国民国家はそれまでの国家の役割である、防衛と社会資本の整備と社会秩序の維持とともに、国民一人ひとりの権利の保障を新たな役割として取り入れたことになります。国民一人ひとりの権利の保障を支える根本が、基本的人権の思想です。
                        
                                     (40~41頁)


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