不正検定問題検討13――帝国憲法55条輔弼

 今回13回目は、欠陥箇所272番の件である。『新しい歴史教科書』は、単元61【大日本帝国憲法と立憲国家】の小コラム〈大日本帝国憲法の主な条文〉で、第55条 ①項の「国務各大臣は天皇を補弼しその責に任ず」を引用していた(185頁)。

 これに対して、「生徒にとって理解し難い表現である。(「補弼」は184ページ7行目の「輔弼」との関連が 理解し難い。)という指摘があり、欠陥箇所とされた。

 単元本文の184頁7行目を見ると、「実際の政治は、各大臣の輔弼(助言)に基づいて行うものとされ」と記されている。この単元本文の「輔弼」の根拠として、第55条➀項の条文が小コラムで引用されているわけであり、何の変哲もないものである。この当たり前の記述に対して、何を思ったか、調査官は「生徒にとって理解し難い表現」との指摘を行った。

 私には指摘の趣旨が全く分からなかった。執筆者たちも訳が分からなかったためか反論しなかったようだが、ともかく他社の記述を調べてみた。すると、三タイプに分かれることがわかった。

(ⅰ)第55条 ①項の引用もしないし、単元本文で「輔弼」との言葉も使わないもの
 ・東京書籍185頁
 ・教育出版180頁
 ・帝国書院186頁
 ・学び舎174頁


(ⅱ) 第55条 ①項の引用を行うが、 単元本文で「輔弼」との言葉を使わないももの
 ・日本文教出版199頁……第55条➀、上欄に掲げる。
 ・山川出版188頁……上欄で第55条➀、上欄に掲げる。

(ⅲ) 第55条 ①項の引用を行い、単元本文で「輔弼」との言葉を使うもの
・育鵬社193頁上欄……小コラム〈大日本帝国憲法のおもな条文〉で55条➀項を引用している。
同192頁単元本文……各大臣の輔弼(助言)と責任により、憲法の規定に従って政治を行うものと定められました。 

 育鵬社も、第55条 ①項の条文を引き、単元本文で「輔弼(助言)」と記すだけである。自由社と同じく、何の変哲もない書き方である。ところが、育鵬社には意見が付かず、自由社だけに付いたのである。これも、ひどいダブルスタンダードである。


補記 2020年10月23日記 人から指摘を受けて、自由社の検定申請本と育鵬社の検定申請本の記述を見直してみた。すると、自由社に関しては、55条の条文の方は「補弼」、本文の方は「輔弼」となっていた。条文の「補弼」は誤字だが、一見、字が使い分けられているように見える。それゆえ、「生徒にとって理解し難い表現である。(「補弼」は184ページ7行目の「輔弼」との関連が 理解し難い。)」という指摘となったものと思われる。対して、育鵬社に関しては、両者とも「輔弼」で統一されていた。したがって、この事例はダブルスタンダードの例から外さなければならない。

 しかし、よく考えてみれば、本来、ここの指摘は、「誤記である。(「補弼」)」と書くべきものである。しかも、調査官にとっては、「補弼」が誤字であることは百も承知のはずであるから、普通の調査の仕方をしたならば、「誤記である」で済ませたはずである。にもかかわらず、何ゆえに、こういう訳の分らぬ書き方をしたのか、大きな疑問を感じるものである。


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