グローバリズムによるナショナリズム狩り―――『新しい公民教科書』に対する検閲の本質的な意義

 3月以来、『新しい公民教科書』に対する検定が過酷であり、検閲とも言えるものだったことを記してきた。特に、中国関係の記述に対する検定が厳しかったから、中国に忖度した検定だということを強調してきた。

 また、何回も前の記事で、7月に入ってから、令和元年度検定を通過した自由社以外の他社公民教科書の検討を行ったことを記した。検討を行う中で、他社教科書にはきちんとした家族論、地域社会論、国家論、国際社会論がすべて存在しないことに改めて気付いた。いや、それどころか、育鵬社以外の他社には、これら四段階の論を立てようという気さえもないことに改めて気付かされた。このように、四段階の社会論がないことは恐ろしい事態である。

 グローバリズムに無抵抗の他社

 これほどではないが、やはり恐ろしい事態に気付かされた。他社全てがグローバリズムに無抵抗であり、グローバリズムに批判的な記述を行わないことである。他社には、少なくともグローバリズム批判的な小見出しは存在しない。参考までに、他社のグローバル化を扱った単元名と、その中の小見出し名を挙げておこう。

・東京書籍

 単元名【グローバル化――結び付きを深める世界】
  小見出し名 グローバル化とは
        国際競争と国際分業
        グローバル社会と日本
・日本文教出版
 単元名【グローバル化する社会で生きる私たち】
  小見出し名 グローバル化とは
        たがいに結びつく世界
        多文化共生社会と国際協力
・教育出版
 単元名【つながる私たちと世界 グローバル化の影響】
  小見出し名 グローバル化とは
        グローバル化と国際分業の中で
        国際協力と互いの尊重
・帝国書院
 単元名【グローバル化が進む現代社会】
  小見出し名 グローバル化とは
        国境を超える人や活動
        国際協調と多文化共生
・育鵬社
 単元名【世界とかかわる私】
  小見出し名 グローバル化とは
        グローバル化の課題
        国際協力と国家存立
 
これに対して、自由社の『新しい公民教科書』には、グローバリズム批判的な小見出しが存在する。同じく、単元名他を挙げておこう。
・自由社
 単元名【グローバル化が進む世界】
  小見出し名 グローバル化
        負のグローバル化
        グローバル化への対応

トランプ大統領と英国のEU離脱を記す自由社、記さない他社

この単元を書いていた段階ではそれほど他社の記述を気にすることはなかったが、6月、そして7月に他社記述を読んでみて、『新しい公民教科書』のグローバル化に関する記述は他社と大きく違うことに気付かされた。小見出しを比べただけでも、他社との違いが歴然としているが、内容を見ると、更に違いが明確である。自由社は、「負のグローバル化」という小見出しの下、新型インフルエンザの世界的蔓延や地球温暖化の加速を指摘するだけではなく、「グローバル化への対応」という小見出しの下、トランプ大統領の誕生とイギリスのEU離脱を記している。

これに対して、他社は、東京書籍を初めとして多くの社が感染症や地球温暖化の問題は取り上げている。ところが、他社はすべて、ここ最近の一番の変化であるトランプ大統領とイギリスのEU離脱のことを無視しているのである。

グローバリズムによるナショナリズム狩り

こういう他社の記述を見て、『新しい公民教科書』に対する検定が過酷になった理由の一端が分かった。この単元1の記述には、新しく記述した部分が5分の1もないにもかかわらず、全部で8件も意見が付いていた。そのうち3件は、前回検定時と全く同じ文章に対して付いた意見であった。それゆえ、この単元1に関する検定には、不思議な感じがしてならなかった。しかし、もう一度言うが、他社教科書を読んでみて、検定が過酷であった理由が分かった気がした。

それは、グローバリズム批判を許さない、グローバリズムと対抗するナショナリズムや国家を推し出す記述を許さない、という姿勢を検定側が採っていたことである。

『新しい公民教科書』は、徹底的に、そのグローバリズム批判的、ナショナリズム肯定的記述を叩かれた。グローバリズム批判的記述から言えば、検定申請本では、「負のグローバル化」との小見出しの下、犯罪の国際化、文化や伝統の破壊という重要な二点を書いていた。しかし、検定過程であれを書け、これを書けと言われ続けて異常に多くのことを書き入れていった結果、この二点は消されてしまった。

また、ナショナリズム肯定的記述について言えば、申請本に存在した「国家とナショナリズムの復権」という小見出しは、上記のように「グローバル化への対応」と変えられてしまった。

このように執拗な検定を振り返るとき、我々は、グローバリズムによるナショナリズム狩りをうけていたのだと言えよう。


今日おかしなことに、グローバリズムに一番適応した国家は全体主義国家である中国である。いやおかしくないのかもしれない。中国は、共産党が所有する国家であり、当然に民主主義の皆無の国である。逆に言えば、共産党は国家を超えた存在であり、共産党自身にも民主主義は存在しない。グローバリズムも国家を超えており、グローバリズムの要求を通していくときの秘密主義、民主主義無視の方法には目に余るものがある。国家を超えている点、民主主義の存在しない点において、中国共産党とグローバリズムは親近性があるのであろうか。

こう考えてくれば、グローバリズムによるナショナリズム狩りという点と中国に忖度した検定という点は、見事に一致しているのだと言えよう。


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