『新しい公民教科書』の画期性とは何か6――お花畑世界観打破のため、国際社会の仕組みを説明した

 国際社会は競争社会

国家の思想の再建を目指す『新しい公民教科書』は、国際協調の必要性を説くとともに、国際社会が競争社会でもあることを明確化した。単元59「国際協調と国際政治」では、「国益の追求と外交」の小見出しの下、現行版と同じく次のように記した。

国際社会では、主権国家は相互に自国の国益を追求し、国の存続と発展を目指す権利を認めあっています。この権利に基づき各国が、自国の国益の実現を目指しながら、他国の国益とのあいだで調整しあう営みを国際政治といい、通常、外交とよばれます。外交は話し合いで行われますが、その背後ではしばしば軍事力や経済力などの力(パワー)が外交手段として用いられています。 (172頁)


  あまりにも当たり前のことである。だが、戦後の公民教科書の多くは書いてこなかった。現行版でみても、「国益」という言葉を使うのは自由社と育鵬社だけである。何しろ、学習指導要領は「国際協調」を重視するが、「国益」という言葉を使っていない。指導要領に従えば、国益を無視し、国際協調だけを重視するお花畑世界観にならざるを得ないのである。

集団安全保障、集団的自衛権、個別的自衛権

 国際社会を競争社会と捉える『新しい公民教科書』は、上記傍線部にあるように、国際社会における軍事の問題を重視する。そこで、単元64「安全保障への努力と日本」などの中で、国連による集団安全保障の仕組みを説明し、集団安全保障を支える多国籍軍とPKO部隊の区別を説明し、PKO協力法の説明を行った。これは、公民教科書史上初めてのことである。

 とともに、単元65「自衛隊と日米安全保障条約」では、主権国家による集団的自衛権及び個別的自衛権の説明を行った。わが国特有の限定的行使の許される集団的自衛権という出鱈目な概念と別に、『新しい公民教書』は、公民教科書史上初めて普遍的な集団的自衛権の概念説明を行った。〈ミニ知識 集団的自衛権〉全体を引用しよう。

 集団的自衛権は、個別的自衛権とともに国連憲章で認められている。自国と密接な関係にある他の国家が武力攻撃を受 けた場合に、 自国が直接攻撃されていなくても、共同で防衛を行う国際法上の権 利のことである。いかなる国も保有している権利である。
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国際連合憲章第51条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発 生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必 要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害 するものではない。  (192頁)


 領土や領海及び排他的経済水域をめぐる争いを記す

 国際社会における競争という面は、領土や領海及び排他的経済水域をめぐって大きく表れる。そこで、〈もっと知りたい わが国の領土問題〉と〈もっと知りたい 海をめぐる国益の衝突〉という二つの大コラムを置き、日本の領有権の正当性を詳しく説明し、海上における日本と中国との国益の衝突を記した。さらには、日本近海を守るために「24時間365日、休むことなく働いている」海上保安庁の奮闘ぶりを伝えている。〈もっと知りたい 海をめぐる国益の衝突〉という大コラムの最後の部分を引用しよう。

 海上保安庁の役割  
  このように豊かな鉱物資源をもつ日本近海をパ トロールし、秩序を維持するのも、海上保安庁の 巡視船である。海上保安庁は、少ない人数(2018 年1万4千人弱)と巡視船(2016年430隻強)で、 24時間365日、休むことなく働いている。  (175頁)


 日本差別の敵国条項の存在を記す

 また、『新しい公民教科書』は、お花畑世界観を打破するために、国連憲章にわが国を差別する敵国条項があることを明記した。それだけではなく、〈やってみよう なぜ敵国条項があるのだろうか。また、わが国はどうしたら敵国条項を撤廃できるだろうか、話し合ってみよう〉と生徒に問いかけている。


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