5月27日、『市販本 検定合格 新しい公民教科書』発売

 5月27日、『市販本 検定合格 新しい公民教科書』(自由社)、全313頁が発売される。これを読めば、今年の採択戦に臨む『新しい公民教科書』の内容が分かる。とともに、『新しい公民教科書』が検定に名を借りた過酷な検閲を受けていたことが分かる。最初はそうでもなかっただろうが、年が明けてから、文科省は『新しい歴史教科書』だけではなく、『新しい公民教科書』も落としに来ていた。今回の『新しい歴史教科書』不合格事件に興味のある方にもお勧めする。『検定不合格 新しい歴史教科書』(自由社)や『教科書抹殺』(飛鳥新社)と併せて読まれれば、現在の検定制度の欠陥又は問題点がより鮮明に知られるだろう。

 以下に、『市販本 検定合格 新しい公民教科書』の目次を示すとともに、まえがき的な部分を以下に掲載しておく。

目次

 我々の主張 国家の解体を進める公民教育からの脱却を 『新しい公民教科書』代表執筆者・小山常実
   
 検定合格 新しい公民教科書 

 特別報告 『新しい公民教科書』と教科書検定をめぐって
  検定合格『新しい公民教科書』の思想とは何か         小山常実
  我々はどのような公民教科書をつくろうとしたのか➀――『新しい公民教科書』の検定をめぐる攻防                    小山常実
  我々はどのような公民教科書をつくろうとしたのか②――「家族」と「国家」を希薄化しようとする意志を強く感じた検定          服部剛
  我々はどのような公民教科書をつくろうとしたのか➂――公民教育として経済をどのようにとらえたか                  杉原誠四郎
  我々はどのような公民教科書をつくろうとしたのか④――中国など「近隣諸国」の人権問題を教科書に明記したことの意義         三浦小太郎
 資料1 検定意見書(抄)  
 資料2 検定申請本の中で検定意見により削除または顕著に内容を変えられた例


 

我々の主張 国家の解体を進める公民教育からの脱却を             
                 『新しい公民教科書』代表執筆者・小山常実
 

 日本国家の解体を進める公民教育

 昨年10月の消費税増税、今年1月からの中国武漢発の新型コロナウイルスの蔓延を待たずとも、日本国家は粛々と解体し滅びに向かっている。その原因は、経済を委縮させる均衡財政主義にあるとか、9条に代表される「日本国憲法」にあるとか、自虐史観に基づく歴史教育にあるとか、いろいろ言われてきた。しかし、一番の原因は公民教育にあるというのが我々の見立てだ。

 家族・私有財産・国家を否定する公民教育

  中学校公民教科書は、マルクス主義の経典の一つであるエンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』で展開された家族・私有財産・国家の三者をすべて否定する思想に基づき作られている。

 第一に、平成24~27年度版以降の中学校公民教科書は、家族論を展開せず、家族の大切さを教えない。国は少子化対策、少子化対策と騒いでいるけれども、公民教科書は、子供が生まれ育っていく場である家族の大切さについて教育することに不熱心なのである。

 第二に、公民教科書は、昭和20年代以来、資本主義の前提である経済的自由権の大切さを説いてこなかった。日本のように資本主義と自由民主主義の体制を維持している国では、居住・移転・職業選択の自由や財産権などの経済的自由権が極めて重要である。これらの経済的自由権は、国民が自己の力で生きることを支え、自由な精神をはぐくむために必要なものである。だが、公民教科書では、経済的自由権の重要さの理由が一言も書いていないし、経済的自由権の記述はほんの少しである。特に私有財産制を「日本国憲法」が維持していることを書かない。「日本国憲法」が私有財産制護持の立場であり、社会主義に移行するためには「日本国憲法」の改正が必要であるということは、憲法学の通説ないし多数説の立場である。にもかかわらず、私有財産制のことを記さないのである。

 第三に、公民教科書には、国家の思想が欠如している。これも昭和20年代以来の特徴である。何しろ、『新しい公民教科書』第3版(平成24~27年度版)が登場するまで、本格的に国家論を展開した教科書は存在しなかった。それどころか、ほんの10年ほど前までは、政治権力の必要性を認める教科書さえも常に少数派であった。そして、平成18(2006)年の改正教育基本法第2条で謳われた「公共の精神」、愛国心、愛郷心を記す公民教科書はいまだに少数派である。

 このように公民教科書は、国家の基礎単位である家族を大切にせず、国民経済の基本である経済的自由も大事にせず、国家の思想を欠落させている。それゆえ、日本国民が公民教育を受ければ受けるほど、公民教科書の思想に染まれば染まるほど、国家は解体していくしかなくなるわけである。

日本国家は国家の4つの役割を果たしているのか

  それゆえ我々は、3つの否定的な特徴をもつ公民教育から脱却する内容の教科書を作って検定申請した。特に第3の否定的特徴を問題視し、国家の思想の再建ということに力を入れた。『新しい公民教科書』では、まず国家が1・防衛、2・社会資本の整備、3・法秩序・社会秩序の維持、4・国民一人ひとりの権利保障という4つの役割を担っていることを強調した。そして、このことをより深く学習してもらうために、検定を受ける過程で、52頁の〈アクティブに深めよう 立憲主義の大切さについて考えよう〉というアクティブ・ラーニングの大コラムを設定した。その大コラムで、次のような設問を行った。

➀4つの役割を果たすために存在するものは何か、またそれらはどんな働きをしているのか
②現在のわが国は、それぞれ4つの役割をどの程度果たしているか


 この設問に答えるべく、いろいろ考えてみていただきたい。国民を育成すべき公民教育は、かかる設問について他者と話し合いながら深く考えることを通じて、国家とは何か、国民とは何か、考えることから始まるのではないだろうか。

 『新しい公民教科書』を通じて、国家が4つの役割を持っているということをきちんと学習すれば、第1の役割は戦後の日本が捨ててしまったことは直ぐに知られる。また、社会資本の整備という第2の役割も、日本国家は少しずつ放棄してきたことがわかる。財務省が均衡財政主義を説き、政治家と国民を洗脳し続けた結果、インフラの高度化どころか、高度成長期に整備したインフラの老朽化に対応することさえも行えなくなっている。自然災害の多いわが国では、他国以上に、この2番目の役割が重要なのに、インフラ整備に投資するという発想が消えてしまって久しい年月が過ぎてしまった。第4の役割についても、北朝鮮に拉致された日本国民さえも一向に取り戻せていない日本国家は全く果たしていないことが分かる。

 国家の基本的な4つの役割のうち3つまでもが壊れてきているわけだから、日本国家の滅亡が危惧されるのは当然であろう。

『新しい公民教科書』を通じて国家の思想の再建を

 しかし、戦後教育を受けて大人になった私たち日本国民は、国家の4つの役割どころか、愛国心や公共の精神についてさえ学んでいないから、現在の日本国家の歪みや問題点を大局的に捉える問題意識さえ持つことが出来なくなっている。愛国心や国家の4つの役割などについてきちんと教わっていたならば、少なくとも昭和52(1977)年以来発生していた拉致問題を放置することもなかったであろう。

 だからこそ、『新しい公民教科書』では、国家の思想の再建を何よりも重視した。そして同時に、家族の大切さを説き、経済的自由を基礎とした自由民主主義体制の優位性を展開しようとした。検定の中で、特に国家の思想の再建という点は相当に「待った」をかけられたが、この3つのことは基本的に達成できたのではないかと思われる。

 特別報告〈『新しい公民教科書』と教科書検定をめぐって〉の一読を 

 まずは『新しい公民教科書』自体をお読みいただきたい。そして、巻末に特別報告〈『新しい公民教科書』と教科書検定をめぐって〉を掲載したので、これもお読みいただきたい。『新しい公民教科書』は検定の中で何度も書き直しさせられたが、特別報告では、その検定過程を明らかにした。検定の厳しさは、想像以上だった。教科書検定というものに興味のある方は、特にお読みいただきたい。


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