育鵬社盗作問題二審判決の趣旨--国民の皆さん、コピペで教科書をつくっても合法ですよ  転載歓迎

  昨日、育鵬社盗作問題に関する知財高裁の判決を聞くために、上京した。ほんの20秒で、「控訴を棄却する」との判決言い渡しがあり、二審も敗訴した(清水節裁判長)。一審で負けたこともあり、勝ち四分負け六分と思っていたが、さすがにがっくりきた。東京からの帰りの新幹線も疲れているのにほとんど眠れなかった。判決文を詳細に検討する元気もなく、さりとて判決のことが頭から離れないので、今記しておきたいこと、訴えておきたいことを書きとどめておくことにする。

  盗作実行者の証人尋問申請却下の不当

  簡単に二審のことを振り返っておくならば、一審で育鵬社側を勝利に導いたのは、乙45号証という平成8年版から23年版までの各社の記述を項目別に一覧できるようにした証拠であった。この証拠を基に、原告側教科書(扶桑社版)の記述は他社も書いているありふれたものにすぎないから著作権は認められないと判示した。その際、判決の論理は、基本的に、盗作実行者の中学校教員○○氏の陳述書の通りであった。

  それゆえ、二審では、盗作実行者の○○氏の証人申請を行った。証人申請は4月16日にすぐに却下された。依拠性の問題を検討するためにも、不法行為成立の可能性を検討するためにも、当然に現実に執筆した○○氏がどういう執筆の仕方をしたのか追求しなければならない。だが、高裁は、ほとんど理由らしきことを述べずに証人申請を却下した。この時に、既に我々の敗訴は決まっていたのだと推測される。
  
  また、二審では、乙45号証がいかに出鱈目な作られ方をしているか主張した。これに対しては、育鵬社側からは乙45号の証拠能力について反論らしいものはなかった。にもかかわず、こちら側の乙45号証批判は完全に無視された。

  更に言えば、二審では、前回の記事でもふれた「鎌倉幕府の成立」などの箇所等におけるデッドコピーの存在を指摘した。だが、この問題はスルーされた。判決は、著作権の成立しないものをいくら丸ごと写しても著作権侵害にはならないといいいたいのであろう。また、平成21年8月25日東京地裁判決では一単元の本文全体の著作権を認めているので、単元本文全体を模倣されたケースに注意を喚起した。扶桑社版単元62「第一次世界大戦」と単元79「占領政策の転換と独立の回復」の二単元の例である。だが、この二つのケースについても著作権は成立しないとした。デッドコピーも著作権侵害にならない、単元本文全部を盗んでも著作権侵害にならないとすれば、一審判決以上に、教科書の単元本文には著作権は認められないという立場を二審判決は採用したということになろう。

  国民の皆さん、これからは、教科書はコピペで作っても構いませんよ

というのが、今回の判決の意味するところである。




そこで、私も、今回検定合格した4社の歴史教科書を基に、コピペ教科書、盗作教科書をつくってみることにした。以下に例文を示しておこう。

単元【市民革命の始まり】

■変わる欧米諸国 
 日本の江戸時代にあたる17~19世紀は、ヨーロッパが大きな変化をとげた時代でした。政治では、身分制が廃止されて自由で平等「市民」がつくる「市民社会」に変わり始めました。それにより、これまで国王と支配身分だけが政治を進めてきたのに対し、市民たちが主権者である「国民」となって、議会を通じて国家を運営するようになりました。産業では、工業が発達して資本主義社会が生まれました。こうした政治や産業の動きを、あわせて「近代化」とよんでいます。

■イギリスの革命 
 イギリスの政治の中心は国王と議会でしたが、17世紀半ばの国王は議会を無視した政治を続けたため、こうした専制に反対する議会との間で内戦が起こりました。そして、議会側がクロムウェル指導で勝利し、国王を処刑して共和制を始めました(ピューリタン革命)。
 クロムウェルの死後、イギリスは王政にもどりますが、再び国王が専制を行ったため、1688年から89年の名誉革命によって議会を尊重する国王が新たに選ばれ、『権利章典』が定められました。こうして世界初の立憲君主制と議会政治が始まりました。

■アメリカの独立
 北アメリカのイギリス植民地では、イギリスから移住した人々が、イギリス本国からの税金に反発し、独立戦争をおこしました。1776年、植民地側は戦争のさなかに独立宣言を発表し、勝利ののち、三権分立をかかげた合衆国憲法を制定しました(1787年)。移住者たちはアメリカ合衆国の国民となり、アメリカは国民の投票で選ばれた大統領を元首(国の代表者)とする、共和制国家となりました。

■フランス革命 
 18世紀後半になると、アメリカ独立戦争への支援などで財政が苦しくなった国王は、新たに貴族への課税を認めてもらおうとして、聖職者・貴族・市民や農民の代表からなる議会を招集しました。しかし、政治に対する不満から、一部の貴族や市民、農民が武器をとって立ち上がり、フランス革命がおこりました。革命を支持した人々は、自由・平等の権利を認め、国民が政治を行う権限をもつと主張した人権宣言を発表しました。こうした、身分制を打破し、人間の自由と平等をめざす運動を市民革命といいます。



   この例文は、単元名と「変わる欧米諸国」という小見出し及びこの部分の文章は帝国書院から、「イギリスの革命」という小見出しとこの部分の文章は東京書籍から、「アメリカの独立」という小見出し部分の文章は育鵬社から、「フランス革命」という小見出しとその部分の文章は日本文教出版から、丸ごといただいた。ただし、元になった育鵬社教科書の該当部分には小見出しが付いていなかったので、「アメリカの独立」という普通の小見出しを付けた。こうやって、私は、本当にわずかな時間で、【市民革命の始まり】という900字程度の単元本文を造り上げることが出来た。私の基本的な労力はパソコン打ち込みのみである。

  こういう教科書の作り方は、一般常識からすれば、間違いなく盗作であるだけでなく、著作権侵害である。いや、裁判官であっても、極端に著作権侵害を認めない一部のグループ(一審裁判長東海林保氏は恐らくその一員である。二審裁判長の清水節氏もその一員なのか?)でない限り、著作権侵害を認めるであろう。

  しかし、デッドコピーも不問にした二審判決の論理からすれば、これを著作権侵害として断罪する論理は出てきようがないであろう。二審の論理からすれば、帝国書院等4社それぞれの記述を検討してみても、事項の選択も配列も個性のあるものではないし、文章もありふれたものであり、4社の記述に著作権は成立しないからである。

  
  著作権が認められる一般的基準を明らかにせよ


  しかし、それにしても、二審判決は、こちら側が準備書面2で要求した次の要求に全く答えないまま、判で押したような言葉で、21箇所の著作権を認めなかった。


 仮に本件で控訴人の著作権を否定するのであれば,少なくとも原判決が一般論で認めている歴史的事実に係る事項の選択・配列及び表現による創作性につき,如何なる基準により認められるのか,一般的基準を具体的に明らかにすべきであり,その基準も示さないままに原判決のように一律に否定するというのであれば,歴史教科書出版業界は暗黒の淵に突き落とされることになるであろう。


  清水節裁判長よ、あるいは清水節氏よ

  是非、著作権が認められる場合の一般的基準を具体的に示していただきたい。

  そのことを探求されることが、著作権の有無を裁く裁判官の義務であることを肝に銘じていただきたい。

  貴方は、その基準を示しもしないまま、藤岡氏に対して、「お前の書いたものには著作権がないから盗まれても泣き寝入りしろ」と言いたいのであろうか。


   育鵬社教科書が盗作でつくられていることの道義的意味

   最後に、判決の問題と離れて強調しておきたい。法曹界の論理からすれば、育鵬社は扶桑社版の著作権を侵害していないという論理が成立すると仮定しても(私は成立不能だと思うが)、前回の記事でも示したように盗作したこと自体は隠しようのない事実である。極めて不道徳な作られ方をしたということである。他人が苦労してつくり上げた教科書をバクッた事実は消えはしない。教育の場で、盗作教科書が用いられ続けたという気持ちの悪さは消えはしない。その責任は誰も取っていない。ともかく、4年前、この不道徳な教科書が4万人以上の生徒用に採択されたのである。

  しかも、更に言えば、47箇所の盗作部分の多くはなおされはしたが、まだなおしていないところが少数ながら存在する。育鵬社には、その部分を完全になおしてもらいたいと心から願う。私の4年間は、この問題で潰された。この問題を追求する上での最低限の目的は、盗作部分を平成28年版以降に持ち込まないように持っていくことだった。この目的は8割方達成されたが、「鎌倉幕府の成立」など、何点かは盗作及び著作権侵害の痕跡が色濃く残っている。育鵬社は、これを完全に払拭するために、来年4月までに文章を訂正すべきである。

  
  いろいろ取り留めなく書いてきたが、要するに今回言いたいことは次の事である。

  これからは、誰でも歴史教科書は作れますよ、そして間違いなく検定合格しますよ、検定合格した教科書をコピペしても合法ですから


  国民の皆さん、こんなことが許せますか。


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