家族が消えるなど内容がひどく改悪された―――――平成24公民教科書の全体評価

  前回で、公民教科書比較資料の掲載を終わった。その上で、全体的な評価と各社別の評価を行っておきたい。今回は全体的評価を行っておきたい。


   ①二種類の対立構造

  これまで、Ⅰ共同社会維持か否か、Ⅱ国家主権を維持していくか否か、Ⅲ立憲主義か全体主義かという3つの問題領域に分けて、公民教科書の比較検討をしてみた。ざっと検討してみると、前に述べたように、二つの対立構図を考えることができる。第一の対立構図は、3つの問題領域全体に目を配った場合に出てくるものである。全体に目を配れば、東書など5社VS育鵬社VS自由社という三すくみ状況である。 

  だが、私は、今回の最大の焦点は、Ⅰの問題領域、すなわち家族・地域社会、愛国心・愛郷心、公共の精神といった事柄を教科書がどう書いているかにあると考えている。このⅠの問題を重視すれば、育鵬社よりも帝国書院の方がましだとも考えられるし、両者の価値は同じようなものとなる。この考え方からすれば、東書等4社VS帝国・育鵬社VS自由社という、同じく三すくみ状況となる。

  ②改悪された教科書内容

  前回と比較すると、全体的に、歴史教科書の場合とは反対に、公民教科書の記述内容は悪化した。東書、清水、日文は明確に悪化したし、教出、帝国は似たようなものである。育鵬社も、扶桑社版から特に進化も悪化もしなかった。「つくる会」運動は、全く公民教科書に良い影響を与えることが出来ていない。

  それは、まずは、公民教科書批判の徹底的な不足によるものである。歴史教科書の場合は多くの人が批判してきた。これに対して、公民教科書を批判する言論人はほとんどいない。だが、このこと以上に大きいのは、扶桑社版の『新しい公民教科書』が、平成14~17年度版から18~23年度版にかけて内容を著しく悪化させたことである。「つくる会」の教科書が出てきてから、その内容は他社にとって改善内容の上限を指し示すものになってきた。自虐5社にとっては、「つくる会」以上に保守派的な教科書記述はする必要がないわけである。「つくる会」の教科書内容が劣化すれば、それだけ教科書の改善目標ラインが下がるのである。その意味で、著しい改悪を行った平成14~17年度版『新しい公民教科書』を作った人の責任は大きいと言えよう。

   ③家族の解体と愛国心の無視

   問題領域別に見ていこう。私が一番重視するⅠの問題領域から見れば、何度も言ってきたが、とんでもないことが起きた。一つは、家族解体の動きが加速したことである。特に、家族教育自体が放棄されたこと、家族に利益社会の考え方がストレートに持ち込まれたことが問題である。
 
  二つは、教育基本法を無視して、愛国心・愛郷心・公共の精神の教育が無視されたことである。しかも、深刻なのは、家族解体、愛国心等無視のグループに育鵬社が入っていることだ。育鵬社が入っているため、保守派と称する言論人たちが、家族を書かず愛国心を書かない教科書さえも批判できない事態を招いてしまったのだ。教科書の改善目標レベルが著しく低下したことに注目されたい。

  ともあれ、この二つは、公民教育にとって、深刻である。是非、この夏にでも秋にでも、国会で問題にしていただきたい。

  ④国家の役割を書かない

   Ⅱの問題領域に目を移せば、何よりも、私ががっくりきたのは、国家論を正面から明確に展開したのが自由社と清水書院だけだったことだ。今、日本国民に求められているのは、単なる拉致問題や外国人参政権問題などの個別問題に対する知識や意識ではない。そうではなくて、国家とはどういう存在で、何のために存在し、その役割は何かということを認識することである。つまり、国家論の教育である。国家論がきちんと身につき、国家の第一の役割が国防であるということを明確に意識するようになり、愛国心の教育がきちんとできていれば、おのずから外国人参政権問題や拉致問題などに対する意識も生まれてこよう。 また、今後、日本国家にとって危うい問題が起きたとしても、それに対処する意識がおのずから生まれてこよう。
 
  にもかかわらず、育鵬社などの6社は愛国心を展開せず、また育鵬社などの5社は国家論を展開しなかった。また、教科書改善の道は遠のいてしまった。これは、明らかに育鵬社の責任である。

  他に目につく点を挙げれば、これだけ近隣諸国の日本に対する敵意、悪意が明らかになっているにもかかわらず、国益という言葉さえも、5社は展開しない。また、日文と教出の竹島、尖閣の書き方は、中立的な書き方となっており、見方によっては韓国と中国にとって有利な記述となっている。更に言えば、沖縄と本土を切り離して沖縄を中国に引き渡していくために作られた〈沖縄に米軍基地の75%がある〉という歪曲話は、自由社以外の全社が書いている。

  ⑤全体主義的な民主主義の傾向 

  Ⅲの問題領域については、自虐5社は、全体主義的民主主義の傾向を強烈に示している。彼らの立場は、「日本国憲法」三原則、平等権に基づく逆差別思想、直接民主主義にあこがれる傾向、計画経済への無批判といったもので、まとめられる。何ともやりきれないのが、この四点のうち、最初の二点は育鵬社にもあてはまることだ。ただし、育鵬社は、平等権を肯定しながら、逆差別思想には抵抗しようという意思はあるようだ。ただ、今回、差別問題を大幅に増やしたことが気になる。

  個別問題で最も目についたのは、アイヌ差別問題が、在日差別問題にとって代わったことだ。明らかに、差別問題の、「平等権」問題の花形になった。しかも、単に花形になったのではなく、先住民族説という大嘘が同時に語られていることが問題である。辺境革命論ないしアイヌ革命論に起源をもつアイヌを異常に特別視する考え方は、今後、日本攻撃の最大の武器として利用されていくだろう。

  また、目についたのは象徴天皇制という、君主制を否定するために作られた用語を使う教科書が二社(教出と帝国)も現れたことだ。そういえば、育鵬社の歴史教科書もこの言葉を使っている。




  ともあれ、全体的には、教科書改善運動の防衛面で言えば、今度の教科書で、家族と地域社会の教育が瀕死の重傷を負った。攻撃面で言えば、愛国心等の教育、国家論の建設を大幅に進める機会を失ってしまった。

  最低限、国会などで、公民教科書に於いて家族が消えたこと、愛国心教育も存在しないこと、この二点を追及する議員が現れることを希求する。


   

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

驚いた

この記事へのコメント

okusama
2011年08月08日 20:56
どんなに採択率が低くても、「つくる会」は教科書を作り続けなくてはならないと思います。利益がでないのは最初からわかっていることです。

自由社の教科書がなければ、理想のラインがどんどん左に行ってしまいますから。小山先生、一緒に頑張ってください。
小山
2011年08月09日 10:14
今回は、読売新聞が「つくる会」潰しに出てきています。「つくる会」潰しに関しては、中国、韓国、左翼、朝日新聞、読売新聞、改善の会といった緩やかなつがりがあるようです。「つくる会」は、改善の会という刺客に暗殺されるわけにはいきません。

この記事へのトラックバック