平成24公民教科書資料Ⅱ(1)国家論

           Ⅱ、国家主権        
 
   総じて戦後の公民教科書は、国家論を展開せず、政治権力の必要性さえも教えてこなかった。そして、国益という言葉さえも追放してきた。具体的問題では、領土問題に関する教育を蔑にし、平成に入ってからは、日本の国家主権を外国人に売り渡していく在日韓国・朝鮮人の参政権を推奨してきた。 

  それゆえ、日本の国家主権を維持・再建する考え方から教科書を書いているか、主権を破壊したり諸外国に譲り渡していく考え方から書いているか、という問題に関連する比較資料を、第Ⅱ部としてまとめておこう。

               (1)国家論

   まずは、国家論から見ていこう。今回、さすがに政治権力の必要性を認める教科書は増加し、認めない教科書は東書と帝国だけになった。だが、相変わらず、きちんとした国家論は、自由社と清水書院以外は展開しなかった。国家の役割として防衛を明確に据える教科書は自由社だけである。

   次回には、育鵬社をはじめ、全社が自由社のような記述を行うようにならないと、日本の前途は非常に厳しいと言えよう。

   以下、比較資料を掲げていきたい。

○分析項目
①国内政治編における国家の定義、目的・役割
②政治権力の必要性
備考③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有りや。三要素説有りや。


○東京書籍
①「第2章 人間の尊重と日本国憲法」「第3章 現代の民主政治と社会」の章見出しの下、全く出てこない。なし
②政治権力の必要性、なし
③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有り
            しかし、三要素説もかかれず。
「第5章 地球社会とわたしたち」1節「国際社会と世界平和」の下、単元「2 国際社会における国家」下、「主権国家」の小見出し下、
「世界には190ほどの国があり、それぞれの国は主権を持っています。主権は、ある国が他国に支配されたり、干渉されたりしない権利(内政不干渉の原則)、ほかの国々と対等である権利(主権平等の原則)からなっています。国際社会は、このような主権をもつ国々からなり、それを主権国家と呼んでいます。……
国家の主権がおよぶ範囲を領域といいます」(150頁)。
・同単元下、「国際社会の光と影」の小見出し下、「国家は国民の生活を守り、維持する役割をになっています。多くの国家の国民は、その努力もあって、よいくらしができるようになりました。その一方で、国家でありながら、果たすべき役割をじゅうぶんに果たすことができない国がまだ存在します」(151頁)。

○日本文教出版
①国家の定義、目的・役割……なし
②政治権力の必要性……有り
③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有り
            三要素説も有り。
②「第2編 わたしたちの生活と政治」「第1章 個人の尊重と日本国憲法」「1 法に基づく政治と日本国憲法」の節見出し下、単元1「法に基づく政治と憲法」下、「法に基づく政治」の小見出し下、
「社会で生活するわたしたちの希望をみたしながら、社会の秩序を守り、安心できる生活を維持していくはたらきを、政治といいます。政治には、人々の利害や意見を調整し、ルールをつくり、ルールに反する行為をとりしまり、命令し、強制する力が必要です。この力を政治権力といいます
  政治権力は、ヨーロッパの絶対王政のころのように、権力者の思いのままに使われることがありました。そこで、ロックをはじめとする思想家たちは、国家が人々の合意によってつくられたものであり、政治権力は人が生まれながらにもっている権利を侵害してはならないと考え、政治権力も法に従わなければならないと主張しました」(38頁)。
③「第4編 現代の国際社会」「第1章 国際社会と人類の課題」「1節 国家と国際社会」の節見出し下、単元「1 国際社会と主権国家」下、
 「国際関係の成り立ち」の小見出し下、「……こうした国々は、国土の大小、歴史、文化、言語、宗教、経済的・社会的発展などのちがいはあっても、平等な独立国で、他国による国内政治への干渉は許されません(内政不干渉の原則)。国々は、たがいに外交関係を結んで交流し、国際的なルールである国際法のもとで、国際関係を形づくります」(182)。
・続いて「国家と主権」の小見出し下、「国家が成り立つためには、一定の領土と、そこに居住する人々(国民)、そして、それらを統治する権力が必要です。国内で統治権をもち、外から支配を受けずに独立を保つ国家を、主権国家といいます。すべての国の主権を平等に尊重し合うことが、国際社会の大切な原則です。国旗・国歌を……」(183頁)。
④備考……第2編2章2節単元2下、「地方公共団体の仕事」の小見出し下、「国は、国民全体のために、防衛、外交、貨幣の発行、年金の管理などを行います。
 都道府県は、……」(92頁)。
  *なぜ、国内政治編の最初に国家論を書き、上記のことを書かないのか。

○教育出版
①国家の定義、目的・役割……なし
②政治権力の必要性……有り。しかし、法や立憲主義と関連付けず。
③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有り
            三要素説を明確に言わないが、三要素説とも一応言える?
①なし
②「第2章 人間を尊重する日本国憲法」「1 民主政治を支える憲法」の節見出し下、単元「① 憲法とは何だろう 憲法を学ぶにあたって」下、「わたしたちと憲法」の小見出し下、「社会が安全で、人々が安心して暮らすことのできる政治が行われるためには、政治を動かす権力(政治権力)が必要となります。政治権力はさまざまなルールをもとに、国を動かします。
 しかし、……濫用されることのないように……制限……」(32頁)。
③第6章第2節単元1「国際社会を構成する国家 国際社会のしくみ」下、「主権国家」の小見出し下、「現在、世界には200近くの独立国があります。それらの国々はすべて、他国に支配されたり干渉されたりしないで、国内の政治や外交について、自ら決める権利をもっています。その権利を主権といいます。主権には、他国の侵略などから自国を守るための自衛権が含まれます。国際社会は主権国家によって構成されていて、それぞれの国家は領土と国民をもちます。国家にはさまざまな違いがありますが、主権をもつことにおいては平等です。これを、主権平等の原則といいます」(194頁)。

○清水書院
①国家の定義、目的・役割……国内編でも国家を説明。
②政治権力の必要性……有り
③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有り
②「第1章 人権の尊重と日本国憲法」1節「民主政治の成立」下、単元1「政治のはたらき」下、「政治とは何だろう」という小見出しの下、
「政治とは、多数の人びとが共同で生活する社会で、それぞれの利害を調整し、秩序を形成・維持する営みである。そして、そのためには、対立を合意に導き、ばあいによっては人びとを強制し服従させる力(権力)が必要である。このように、政治は人びとが生きていく条件を大きく決定づけており、どのような政治がおこなわれるかによって、人びとの生活や幸福は大きく左右される」(24頁)。
①続けて「政治の場としての国」の小見出し下、「政治は、国や地方公共団体、あるいは国際機関など、さまざまな場で営まれている。
 『くに』はもともと生まれた場所や故郷をあらわすことばであったが、国家という意味での『国(くに)』は、決まった範囲をもち、そこで生活する国民から成り立っている。
  『国』は、現代では対外的には独立を保ち、国内での秩序を維持し、国民の安全を守るとともに、経済、福祉、教育などさまざまな分野で国民が健康で快適な生活をおくることができるように支援することが重要な役割と考えられている。それらの役割をになうのが、国会や行政機関、裁判所などの機関である。
国民のあいだには、多様な考えや利害・欲求があり、そこには対立や争いがおこることもある。そこで、国民相互の意思を調整し、協力しあえるようにまとまりをつくりあげることが必要である。
  しかし、多様な意見の調整につとめても、対立がなくなるとはかぎらない。それをかぎられた時間で調整し、実行しようとすれば、権力による強制もさけられない。
  このように、国には国民の共同体という顔と、強制力をもった権力機関という、もうひとつの顔がある」(25頁)。
③第3編第1章1節単元「1 国際政治と法」下、「独立国(主権国家)」の小見出し下、
 「どんな国でも、政治のありかたを最終的に決定するのはその国の国民であり、他の国からの支配や干渉は許されない。国家が対外的に独立を保つ権力を主権といい、主権の確立している国が独立国(主権国家)という。主権国家はどの国も対等で、平等にあつかわれる(主権平等の原則)。
 ……現在、地球上には約190の独立国がある」(156頁)。

○帝国書院
①国家の定義、目的・役割……なし
②政治権力の必要性……なし
第2編第1章「民主主義について考えよう」下、単元1「民主主義と私たち」下、なし
(30~31頁)。
③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有り
           三要素説。
第4部1章単元1「国家と国際社会」下、「主権国家とは何か」の小見出し下下、
 「ある土地と、そこに住む人々がいたとしても、それだけでは主権国家ではありません。その土地が領土であり、そこに住む人が国民であると主張する政府が存在し、その政府が世界各国によって認められることによって初めて、独立した主権国家が生まれます。このように国家とは、領土・人口、・主権という三つの要素から成り立っています。
 では、主権を認めるとはどのようなことでしょうか。それはその国が領土と国民を支配する権利を他国が認め、外から干渉しない(内政不干渉)という意味です。現代世界では、それぞれの国家が平等な主権をもち(主権平等)、相手の領土、領空、領海に無断で立ち入らないこと(領土不可侵)が原則とされています。ただし、内政不干渉の原則があるからといって、大量殺人のような形で多くの人々から人権がうばわれた場合、国際社会が無視してよいとはいえません。」(172~173頁)。

○育鵬社
①国家の定義、目的・役割……定義をすれど、「共同体」と書かず。
  目的・役割は正面からは書かれず
②政治権力の必要性……有り
③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有り
           三要素説なし。
①第1章第3節単元3「国家と私」下、「国民の意識」の小見出し下、「国家とは、その領土に住む人々が憲法や法律、日常の慣習などの共通のルールを共有し、共通の政治体制の下に共存する空間です。国家を構成する人々は、単一の民族に属する必要はありません。しかし、……」(32頁)。
①同単元下、「国家に守られて生活する私」の小見出し下、明確に役割を書かず(32頁)。
②「第2章 私たちの生活と政治―――日本国憲法の基本原則」第1節「日本国憲法の基本原則」下、国家論を展開せず。
・「なぜ法は必要なのだろう」の小見出し下、法が必要であることを述べた上で、「法に基づく政治」の小見出し下、法治主義(38~39頁)。
続けて「法を守る心」の小見出し下、「法だけが制定されてもじゅうぶんとはいえません。実際に法が守られるためには、まず人々がその法を知っていなければなりません。
そのためには、さまざまな機会と手段を通して、法の内容や意義を説明することが必要です。法を守ろうとしない人々に対しては、警察や裁判所などの、強制的な力をともなうしくみが必要となります」(39頁)。
③第5章第1節単元2「国家とは何か」下、「主権国家」の小見出し下、
 「現在、世界には約190の国家があります。国家は、領域・国民・主権の三つの要素からなり、領域の大きさや国民の数は国によってちがいます。主権とは、ある国が他の国から支配や干渉をされない独立の権利や、他の国々と対等である権利からなっています。国際社会は主権をもつ国々(主権国家)によって構成されています」(156頁)。

○自由社
①国家の定義、目的・役割……「共同社会」と定義
  目的・役割を正面から記す
②政治権力の必要性……有り
③主権国家(国際編)……主権平等の原則他、記述有り
            三要素説
・国内政治編の最初に単元13「国家の成立とその役割」下、「国家の成立」の小見出し下、「序章で学習したように、国家が農業の開発とともに生まれたのはなぜでしょうか。農業では、開墾、治水など大規模な土木工事が必要です。そこでは、それまでの小さな単位の地域社会をはるかにこえた大きな地域全体の人間が協力して働くようになります。その結果、食糧生産が増大すると、外部の狩猟民、遊牧民や他の農耕民などが奪いにくる場合があります。そうすると指導者(王)のもと、利害の共通する地域全体で軍事組織をつくって防衛する必要が出てきます。城壁もつくらなければなりません。こうして、防衛と共同の工事の必要から、大きな地域全体が一つの生活体となり、共同社会にまとめられていき、やがて国家へと成長します。
古代の人々は宗教と密接にかかわって生活していました。穀物を保管する貯蔵庫に隣接して神殿がつくられ、神官が穀物の豊かな実りを神に祈りました。国家がさらに発展すると、文字が発明されます。文字によって記録を作成・保管し、国家を運営する役人(官僚)が生まれます。
外敵からの防衛に失敗すれば、国家は滅びてしまいます。ですから、王は強力な軍事指導者でなければなりません。同時に、官僚を使って国内を統治し、外部に対しては国家を代表しなければなりません。」(38~39頁)
・続けて「国家の役割」という小見出しの下、
「歴史をふり返ると、外敵からの防衛は国家の重要な役割でした。また、道路や橋の建設など、土木工事などを行って、生産と生活の基盤となる社会資本の整備を図ること、そして法を制定し、法に基づき社会秩序を維持し、国内に平和をもたらすことも、国家の重要な役割です。 国家がもつ法に基づき社会秩序を維持する役割は、なぜ必要とされたのでしょうか。国家成立以前の、単純な群れのようにして暮らしていた社会では、領域も狭く人口も少なかったので、人々はたがいに知り合い同士でした。知人同士の人間関係のなかでは、長老の権威や道徳・慣習などによって秩序を保つことができました。ところが、国家という社会は、広い領土に大勢の人が暮らすので、おたがいに十分には知り合えません。見知らぬ者同士がいろいろな関係をもちながら暮らさなければならず、長老の権威や道徳・慣習だけでは秩序が維持できません。そこで、社会秩序を維持するために法が生まれました。そして、その法を守るよう命令し強制する力が必要となりました。これが国家がもっている政治権力です。
・単元14「立憲主義の誕生」下、「民主主義と国民国家」の小見出し下、「市民革命は、人々に政治活動の自由を与え、国家を構成するすべての人々(国民)が国家の政治に参加する可能性を開きました。そして国民は、国家の政治に参加する公民となりました。こうして、自由で平等な国民の政治参加によって運営される国民国家が成立したのです。
 結局、国民国家はそれまでの国家の役割である、防衛と社会資本の整備と社会秩序の維持とともに、国民一人ひとりの権利の保障を新たな役割として取り入れたことになります。国民一人ひとりの権利の保障を支える根本が、基本的人権の思想です」(40~41頁)。


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