資料・平成18~23年度中学校公民教科書分析(19)――国際社会のとらえ方

教科書は、国際社会を基本的にどのようにとらえているだろうか。話し合いによって収まる平和的な世界としてとらえているか、各国が国益を突き合わせる競争的な世界としてとらえているだろうか。前者の見方をする教科書は「地球市民」としてやっていこうと考え、国益という観点を示さない。これに対して、後者の見方は、人類の協調とともに国益という観点も示している。


Ⅲ、国際社会編 


(19)国際社会の捉え方
 
○分析項目
 ①地球市民という言葉
 ②国益という言葉の有無
 ③競争社会として国際社会を描いているか
 ④戦前日本の位置づけ
⑤国際社会編の章節タイトル
 

○日本書籍新社
 ①地球市民という言葉……有り
 ②国益という言葉……なし
 ③競争社会として国際社会を描いているか……描いていない
 ④戦前日本の位置づけ……「日本は、明治以来台湾や朝鮮などを侵略し、1931年から15年間におよぶ戦争で中国や東南アジアを支配し」(142頁)。
⑤国際社会編の章節タイトル
  「第4章 世界平和と人類の共生を求めて」
    「1.世界平和の実現」
    「2.地球時代の課題」

「第4章 世界平和と人類の共生を求めて」の頁で、女教師の言葉として、
 「戦争はもう、終わりにしたいですね。でも、むずかしい問題になっていることも確かなんですね。世界に平和をつくるにはどうしたらいいのか、人類の課題になっているよ。平和を築くために日本の役割も考えないとね。みんなが平和のために何をするかも、だいじなことよ。それから、地球環境のこと、エネルギーのこと、貧困で苦しんでいる人のことなども、『地球市民』の一人として、いろいろと学んでおかないといけないんだ。戦争の原因は、こうしたことともつながりがあるからね」(135頁)。

○東京書籍
 ①地球市民……有り
 ②国益という言葉の有無……なし
 ③競争社会として国際社会を描いているか……描いていない
 ④戦前日本の位置づけ……国際社会編では特になし
⑤国際社会編の章節タイトル
    「第5章 地球社会とわたしたち」
      「1.国際問題と地球市民」
           「① 地球市民をめざして」
      「2.国際社会と世界平和」


○大阪書籍
 ①地球市民という言葉……なし
 ②国益という言葉の有無……なし
 ③競争社会として国際社会を描いているか……描いていない
 ④戦前日本の位置づけ……国際社会編では特になし。
 ⑤国際社会編の章節タイトル
  「第4編 現代の国際社会」
    「第1章 国際社会と人類の課題」
       「1 国家と国際社会」
       「2 地球環境と人類」

④国内政治編では、「第2編 わたしたちの生活と政治」「第1章 個人の尊重と日本国憲法」「3 日本の平和主義」の節見出し下、「日本国憲法の平和主義」の単元見出し下、「前文と第9条」の小見出し下、
 「わが国は、日中戦争や第二次世界大戦を通じて、アジア・太平洋の広い地域を侵略し、多くの人々に大きな被害をあたえました」(62頁)。

○教育出版
 ①地球市民かという言葉……なし。しかし、「地球社会」という章タイトル
 ②国益という言葉の有無……なし
 ③競争社会として国際社会を描いているか……描いていない
 ④戦前日本の位置づけ……否定的
  ⑤国際社会編の章節タイトル
       「第4章 地球社会とわたしたち」
           「1 世界平和の実現に向けて」
           「2 地球社会の危機を救うために」

④「1 世界平和の実現に向けて」の節、「④日本と世界の平和」の単元見出し下、「アジアとの共生」の小見出し下、
 「日本はアジアのなかの一国です。世界平和のために何をなすべきかを考えるときにも、このことを忘れてはなりません。かつて、日本とアジアの国々との間では、戦争という不幸なできごとが生じました。このことによって、アジアの人々に被害をもたらしたことを深く反省する必要があります。 
  日本政府は、国家間の補償問題はすでに解決したという立場をとっています。しかし、現在でも戦争時に日本軍の行為で被害を受けた人々から、加害について補償を求める動きが続いています」(139頁)。

○清水書院
 ①地球市民という言葉……なし
 ②国益という言葉の有無……なし
 ③競争社会として国際社会を描いているか……描いていない
 ④戦前日本の位置づけ……国際社会編では特になし。
 ⑤国際社会編の章節タイトル
    「第3編 国際社会を生きる」
       「第1章 こんにちの国際社会」
            「1 国際社会のしくみ」の節
            「2 人類の課題」

④国内政治編では、「第3章 平和主義」「1 平和主義と日本の国際的立場」の節見出し下、「戦争の惨禍と日本国憲法の平和主義」の単元見出し下、「戦争の惨禍」の小見出し下、
  「日本は、第二次世界大戦において、他の国々の多数の人びとを殺傷し、莫大な被害をあたえた」(92頁)。


○帝国書院
 ①地球市民という言葉……有り
 ②国益という言葉の有無……なし
 ③競争社会として国際社会を描いているか……描いていない
 ④戦前日本の位置づけ
 ⑤国際社会編の章節タイトル
     「第4部 地球市民として生きる」
           「1章 世界平和の実現をめざして」
           「2章 私たちの地球をみつめて」
           「3章 地球市民として生きる」

④「3章 地球市民として生きる」「⑥国際社会における日本の役割」の単元見出し下、「平和主義と国際協力」の小見出し下、
 「国際平和を実現するためには、日本はどのような役割をはたせばよいのでしょう。アジアのなかでは、日本はGDPが最も多い国です。また、第二次世界大戦で悲惨な経験をしました。そのため、日本は、軍隊で攻撃するよりも国際協力と経済協力によって、おたがいに信頼できる国際関係をつくっていこうという考えが強くなりました。そこで、防衛については、アメリカとの間で日米安全保障条約を結び、外交の面では、諸国との合意を大切にする多国間協力と国際重視、また武力にたよらない貢献をめざす非軍事協力の、三つの原則にそってすすめられてきました。戦争の絶えない地域に対しても、そこに軍隊を送ることよりは、人々のくらしをささえ、戦後の復興をはかることをめざしたものです。こうした努力によって、日本は国連の活動をささえ、かつては日本が占領した東南アジア諸国などからも信頼されるようになってきました。このように、アジア諸国をはじめとして、世界各国がより協力できるよう努力、行動することが日本の新たな役割です」(162頁)。

○日本文教出版
 ①地球市民という言葉……なし。しかし、「地球社会」の節タイトル
 ②国益という言葉の有無……なし
 ③競争社会として国際社会を描いているか……描いていない
 ④戦前日本の位置づけ……少し否定的
 ⑤国際社会編の章節タイトル
     「第7章 かけがえのない地球と人類の共生」
             「1 国際政治の動向と日本」
             「2 国際経済の動向と日本」
             「3 地球社会の課題」

④「1 国際政治の動向と日本」の節見出し下、「平和憲法と日本の役割」の大見出し下、「日本の外交」の小見出し下、
 「アジア諸国との関係は、第二次世界大戦後、戦争賠償の支払いや経済協力などにより改善されてきた。しかし、戦争被害者に対する個人補償問題など、残された課題もある」(152頁)。

○扶桑社
 ①地球市民という言葉……なし
 ②国益という言葉の有無……有り
 ③競争社会として国際社会を描いているか……一応、描いている
 ④戦前日本の位置づけ……特になし
 ⑤国際社会編の章節タイトル
             「第4章 世界平和と人類の福祉の増大」……節はなし

②③「第4章 世界平和と人類の福祉の増大」「43 外国との関係」の単元見出し下、「国際社会と外交」の小見出し下、全文引用
 「現代の世界は、経済だけではなく、政治上の結びつきがますます強くなり、主権をもった独立国であっても、国際関係を無視してさまざまな政策を決定することはむずかしくなっている。
 そこで、国と国とが利害の調整をはかり、たがいの利益や国際社会の秩序を確保していくために外交が必要となる。現代の世界では、国と国とだけではなく、国際連合をはじめとするさまざまな国際機関を通して、政治、経済、軍事のほか文化や人道問題など、あらゆる面において外交が活発に行われている。
 しかし、外交は常に友好的、平和的に行われるとは限らない。外交は、国際社会のルールに基づいて行われるが、各国は自国の利益、すなわち国益を守ろうとするために、時には軍事力や経済力を利用することもある」(126頁)。





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック