不正検定問題検討25――日中戦争長期化の原因

 今回24回目は、再び『教科書抹殺』が取り上げた100件の中から、欠陥箇所361番を取り上げる。361番も、『月刊 HANADA』12月号掲載の前掲藤岡論文が取り上げている。
 
 『新しい歴史教科書』は、第5章の章末の《時代の特徴を考えるページ 近代後半(大正昭和前半)とはどんな時代だったのか》で、右上囲み【課題②について書いたさくらさんのノート】を置き、次のような記述を「さくらさん」の学習ノートとして示した。「さくらさん」は日米関係に焦点をおいてまとめを行った。

⑤日本と中国の紛争においてアメリカは中国を支援し、日中戦争が始まってからも援蒋ルートによる支援を続けたので、日中戦争は泥沼化した。  253頁

 これに対しては、「生徒が誤解するおそれのある表現である。(日中戦争長期化の原因)」との指摘があり、欠陥箇所とされた。しかし、他社の扱いは以下のとおりである。どの教科書にも検定意見は付いていない。

・東書230、234頁 援蒋ルートのみ

・日文245頁  国民政府は、アメリカやイギリスなどの援助を受けて抗戦を続け、戦争は長期化していきました。

・教出235頁  アメリカ・イギリス・ソ連などの援助も受けて日本軍と戦いました。その間、ドイツを仲介に……自ら交渉を打ち切りました。…戦争は泥沼のような長期戦となっていきました

・帝国238頁  国民政府は、……アメリカ・イギリス・ソ連などの支援を受けて抵抗を続けたため、戦争は長期戦となっていきました。
 
・育鵬社238頁 アメリカ・イギリス・ソ連の援助を受けて徹底抗戦を続けました。和平交渉が何度か行われましたが、条件が一致せず、戦争は長期化していきました。

・山川241頁  これに対し国民政府は、……物資の支援路(援蒋ルート)を通じてアメリカやイギリスなどからの援助を受けながら抗戦を続けたため、日中戦争は長期戦となった

・学び舎224頁 援蒋ルートなし



 東京書籍と学び舎は比較対象にならないが、他の5社は全て似たようなことを書いているとも言える。特に下線を引いた日文、帝国、山川の三社は、アメリカの支援と戦争の長期化との因果関係を明らかに認めているから、自由社と同類型の記述と言える。これも、三社と自由社とのダブルスタンダードの例と言えよう。

 ただし、「さくらさん」のノートには、国としてはアメリカしか出てこず、他社では他にイギリスやソ連が出てくる。文科省としては、アメリカしか支援者として出てこないのが欠陥だと主張するのであろうか。

しかし、中国にたいする支援はアメリカ中心である。また、不合格となった『新しい歴史教科書』を見ていただきたい。これは、「さくらさん」という一人の生徒の学習ノートである。「さくらさん」がまとめた6ポイントはすべてアメリカに焦点を合わせている。ここにイギリスやソ連が出てきたら、学習ノートとしてはそれこそおかしなことになるのである。単元本文などとの違いを弁えて、検定していただきたいと考える。

それゆえ、仮にダブルスタンダードの例としては弱いとしても、不当検定の一例であることは明確である。

補記、2020年10月31日記 学び舎の日中戦争に関する記述をみなおしてみた。すると、「南京事件」を強調し、「三光作戦」を記して日本軍のイメージを悪くしようとする記述が目立つが、さらには国民党軍の戦いよりも八路軍の戦いを目立たせようともしている。そして驚くべきは、援蒋ルートのこと、アメリカなどの援助のことは一切書いていない。恐ろしく偏った記述だが、学び舎には全く意見が付いていないのである。

 このような学び舎の記述に全く意見を付けようとしない文科省の態度に鑑みると、文科省が361番を問題にした本当の理由は、援蒋ルートのこと、アメリカの援助のことを記したことが気にくわなかったことかもしれない。教科書調査官にとっては、他社が記すのも気にくわないが、自由社が記すことが一番許せないことだったのではないか。



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