不正検定問題検討18――〈欧米諸国の日本接近〉は近世か近代か

 今回18回目は、欠陥箇所240番の件である。今回からまた、『教科書抹殺』が取り上げた100件について検討することとする。


 〈欧米諸国の接近〉は近代ではなく近世に置け


 『新しい歴史教科書』は、「第4章 近代日本の建設」で、第1節に「欧米の革命と日本への接近」を置き、第2節に「明治維新と近代国家の成立」を置き、第2節の最初に単元49【欧米諸国の日本接近】(156~157頁)を置いた。扱っている中身は、ロシアのレザノフの来航やフェートン号事件やモリソン号事件などである。 

 これに対して、この単元全体に対して、次のような指摘があり、欠陥箇所とされた。

学習指導要領に示す内容に照らして,扱いが不適切である。(内容B(3)のアの(エ)の「社会の変動や欧米諸国の接近,幕府の政治改革,新しい学問・思想の動きなどを基に,幕府の政治が次第に行き詰まりをみせたことを理解すること」)

内容Bの(3)とは、「近世の日本」のことを指している。要するに、この単元は第4章の近代の章ではなく、近世の章で扱えという要求である。指導要領に設定した通りにしろという要求だが、指導要領では、欧米諸国の市民革命や産業革命、アジアへの進出を近代の章で扱うこととしている。こういう流れからすれば、レザノフやフェートン号事件なども近代で扱う方が自然である。実際、学習順序の観点からして、近代で扱う方が生徒にとっても理解しやすい。にもかかわらず、指導要領では、近世で扱うことになっているのである。

日文と帝国も近代で扱う

 しかし、もう一度言うが、欧米諸国のアジア進出を学び、その流れで日本に対する欧米諸国の接近を学ぶ方がはるかに理解しやすい。それゆえ、他社を調べてみると、自由社以外にも近代で扱う教科書が存在する。
近世で記述するのは、東京書籍、教育出版、育鵬社、山川出版、学び舎の5社である。対して日本文教出版と帝国書院は、自由社と同じく、近代で扱っている。しかし、検定意見は付いていない。

 日本文教出版は、〈欧米諸国の日本接近〉に関わる構成を次のようにしている。

 第5編 近代の日本と世界
第1章日本の近代化
 1 欧米の発展とアジアの植民地化
 2 近世から近代へ
     ➀ゆらぐ幕府の支配


 この単元1【ゆらぐ幕府の支配】の最初の小見出しは「外国船の接近」となっている。この単元、172頁上欄の地図にレザノフ来航、フェートン号事件、モリソン号事件が記されている。

 次に帝国書院を見ると、次のような構成となっている。

第4章 近代国家の歩みと国際社会
第1節 欧米諸国に「近代化」
第2節 開国と幕府の終わり
1 日本を取り巻く世界情勢の変化
 

この単元1【日本を取り巻く世界情勢の変化】の最初の小見出しは「外国船の来航と幕府の対応」となっている。そして、この単元の161頁の地図では レザノフ来航などの事件記されている。

 要するに、自由社以外にも、日本文教出版と帝国書院の二社が、近代で扱っているのである。このことに教科書調査官が気付かなかったと到底思えない。しかし、文科省は、この二社には意見を付けず、自由社だけを問題にして欠陥箇所としたのである。
 本当は、文科省も、〈欧米諸国の日本接近〉は近代で扱う方が良いと思っているのであろう。だからこそ、二社の扱いには意見を付けず、自由社だけを問題にしたのではないだろうか。

 なお、この240番の件は、『教科書抹殺』でも検討されている。お読みいただきたい。また、月刊HANADA2020年12月号の藤岡信勝「〈他社は合格、自由社なら不合格〉の「ダブスタ」検定」も、この240番の件を扱っている。


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