『新しい公民教科書』の画期性とは何か3――国家の思想を再建した

 政治編の最初で国家の役割を学ぶ

  国家の解体を進める公民教育から脱却することを目指す『新しい公民教科書』は、当然ながら、国家の思想をきちんと展開している。何よりも、平成23年版において公民教科書史上初めて本格的に国家論を展開した。今回も政治編の最初に置かれた単元14「国家の成立とその役割」と単元15「立憲主義の誕生」のなかで、国家の役割を以下の4つに整理して示した。
  1、防衛
  2、社会資本の整備
  3、法秩序、社会秩序の維持
  4、国民一人ひとりの権利保障

 そして単元14では、「政治権力の必要性」という小見出しを置き、13行用いて政治権力が生まれた所以を解説している。戦後の公民教科書は、昭和20年代以来、国家論も政治権力の必要性も記さないまま、基本的人権、民主主義、国内の政治の仕組みについて説明していた。対して、『新しい公民教科書』では、政治編の最初に国家論を学んだうえで立憲主義や民主政治、基本的人権、国内の政治の仕組みについて学習していく。このスタイルの方が、当然に生徒にとって理解しやすいであろう。

 自衛戦力肯定説を紹介した

 防衛という役割と関連して、「もっと知りたい わが国の安全保障の課題」のなかで、自衛戦力肯定説の9条解釈があることを初めて紹介した。また、単元28「平和主義と安全保障」では〈やってみよう 外国からミサイルが飛んで来たとき、あるいは飛んで来そうなとき、わが国は何ができるのだろうか、調べてみよう〉という問いかけを行っている。

総合的な安全保障という考え方

 今回、アクティブ・ラーニングの大コラムで、二つの試みを行った。一つは、「これが日本を救う公民教科書だ」の中で紹介したように、上記4つの役割を今日の日本国家が果たしているかどうか生徒に問いかけたことである。

 二つは、〈アクティブに深めよう 総合的な安全保障問題を考えよう〉という大コラムを設け、「総合的な安全保障」という考え方を公民教育史上初めて打ち出した。そして、食料問題、防災問題、水問題、エネルギー問題、医療保険問題などをすべて安全保障問題と捉える考え方を紹介した。多発する災害やコロナ・ウイルスの蔓延問題を前にして、ますます「総合的な安全保障」という考え方を広める必要性が増しているように思われる。以下に、さわりを引用しよう。一読されたい。特に傍線部に注目されたい。

永岡先生  国家の安全保障というと、国防とか軍事 のことばかり考えがちですが、それ以外   にも重要なものがたくさんあります。どんなものが ありますか。

しょうた 国家の安全保障って何ですか。国や国民を 守ることと考えれば良いですか。

永岡先生  そうだね。

しょうた  だったら、僕たちが食べるものの多くの原材料が外国産だということが真っ先に問題です。

永岡先生  なぜ、そう思うのかな。  

しょうた だって、外国と対立して、その外国が例え ば小麦を輸出してくれなくなったら、小麦を元につくるパンやうどんが食べられなくなるでは ないですか。食料がなくなれば国民は生きていけ ませんから、軍事力をいくら付けても意味がなくなりますよ。   食料問題は、国民の生存問題ですよ。 ですから、食料を基本的に自給できるようにするのが国家の基本ではないですか。

永岡先生 そうだね。食料問題は重要な安全保障問題 の一つだね。他に、重要だと思う問題はないですか。他の人の意見はどうかな。

よしこ  私は、防災問題だと思います。日本は地震も多いし、毎年、台風がやってきますし、梅雨があります。風水害が毎年あります。特にこの数年は被害が大きくなっています。人が多く亡くなっていますし、電気やガスが止まって生活が成り立たなくなります。食料問題よりもリアルな安全保障問題だと思います。

まこと それに、せっかく育った農産物がダメに なったり、道路や鉄道が寸断され、ものが生産できなくなったり、食料などの消費物資が届かなくなったりします。僕も防災がもっとも深刻な 安全保障問題だと思います。

めぐみ  私は、水問題こそ、これから重要な安全保障問題になっていくと思います。これから各国は水をめぐって争うようになると言われています。それに、イギリスや南アフリカをはじめとした世界各地では水道が民営化された結果、初めは安かった料金がどんどん値上げされていき、高すぎて料金を払えなくなった住民が、水道を止められたケースが多く報告されています。ボリビアでは、水道の水を飲めないため川の水を飲んで病気 になり死亡していくケースも報告されています。 ひどい話です。

まこと  僕も、水問題は問題だと思います。人間は 水がなければ生きていけませんし、水がなければ日本人の主食である米もつくれません。わが国でも水道を民営化する自治体が増えています。 外国で起きた悲劇が日本でも起きてくる可能性が高いと僕は思います。これからは、一番切実な安全保障問題になっていくかもしれません。水を安価に安定的に国民に供給することは、国民の生存問題じゃないですか。だから、水問題も重要な安全保障問題だと思います。

永岡先生 そうだね。防災問題も水問題も大きな問題だね。ここまで、食料安全保障、防災安全保障と水の安全保障の問題が出て来たけれども、他に重要な問題がないかな。 ――何人かが発言し、エネルギー問題、医療保険問題、 防犯問題が重要問題として浮かび上がってきました。       118頁


 発言者のところは教科書ではキャラクターになっているが、ここでは名前で記した。


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