盗作実行者の証人尋問を要求した書面(平成27年4月14日)

  前々回、前回と、盗作実行者○○氏に対する証人申請についてふれた。今回は、原告・控訴人側が要求した○○氏に対する証人申請要求の文書、すなわち準備書面(1)を掲げることにする。以後、適宜、必要な二審資料を掲載していくこととする。二審判決というものが、いかに非論理的で恥ずかしい判決か、あからさまにしていくつもりである。

  この準備書面(1)を読むと、どう考えても、○○氏に対する証人尋問が必要であったことが分かるし、これが行われていれば、控訴人側勝訴の確率は格段に高まったものと思われる。例えば、前々回の「鎌倉幕府の成立」に関して、1185年説の育鵬社記述が何故に1192年説の扶桑社版と同一の記述になってしまうのか、こちら側が問いただせば、○○氏による盗作の悪質性があからさまになったものと思われる。にもかかわらず、証人尋問は実現しなかった。

  単に、著作権侵害を認めない傾向の裁判官が担当したから育鵬社が勝ったのではなく、大きな政治的背景が作用して、育鵬社が勝訴したのであろう。

  また、一審はともかくとして、二審では控訴人側は懸命に闘った。これに対して、被控訴人側の反論は弱弱しく、3行ぐらいのデッドコピー(別の言葉でだが)などよくあることだとか、失言暴言が目立ったし、一審とは異なり余り労力を割いていない感じがした。やけくそなのかとさえも感じさせられた。しかし、被控訴人側はまたも勝利した。裁判所は、最初から勝たせる算段だったとしか、私には思えないのである。

  腹立たしいのだが、笑ってしまう。余りにも正義が通らない法曹世界に。余りにも、歴史記述の著作とはどういう事なのか、特に歴史教科書執筆とはどういう事なのか、全く御存知ない裁判官の姿に。

  また、次の事に笑ってしまう。法を守るべき裁判官が、コピペ教科書を合法化し著作権法を破壊してしまったことに気付いていない姿に。

  それはともかく、熟読玩味していただきたい。我々が証人申請した理由について了解していただけるものと思う。ポイントは、やはり○○氏尋問であったと思う。これを拒否した二審裁判は、手続き的にも不当なものであった。




                  準備書面(1)           
                                            
                                                      平成27年4月14日
知的財産高等裁判所第2部 御中

     ―――――――――――――――― 

 本準備書面では,被控訴人書籍本文大半の元原稿を執筆したとされる○○○○の陳述書の不合理を指摘し,同人の証人尋問の必要性について述べるものとする。
            
                        記

第1 ○○供述の不合理性と証人尋問の必要性

1 総説
 原審で被控訴人側から提出された○○陳述書(乙42)は,本件訴訟における被控訴人書籍本文の依拠性(一般不法行為における成果物不正利用にとも重なる)を検討する当たって重要である。既に控訴理由書で問題点を指摘済みの原判決の論理は,同陳述書における○○供述をそのまま鵜呑みにしていることが窺われるが,同陳述書には以下に述べるような様々な問題がある。

 上記争点を解明するためには○○の証人尋問が不可欠である。

2 ○○供述の不合理性等
(1) 控訴人からの事前警告の認識(盗作の故意)
○○は,
     訴状にもある「内容,形式及び理念のいずれの面から見ても,模倣とは認められないものとするよう」という教科書の偏向被害に直面している肝心の生徒を一顧だにしない「つくる会」の狭量さに深い失望を覚えました

と言う(乙42:2頁)。

○○が上記引用する文章とは,平成19年2月に被控訴人扶桑社から一方的な絶縁通告を受けた「つくる会」が,被控訴人扶桑社に対し,被控訴人らが教科書を制作するに当たっては控訴人を含む執筆者らが執筆した控訴人書籍を模倣・利用することがないように予め警告を発した同年6月13日付け「通知書」(甲18の1)に記載された内容である。これは著作権を有する著者らとして当然の警告であるが,その後,同警告にもかかわらず,正に控訴人が懸念した通りのことが起こったのである。そもそも,○○が「教科書の偏向被害に直面している肝心の生徒を一顧だにしない『つくる会』の狭量さ」と非難するのは全くの筋違いであり,著作権に対する初歩的な感性を欠く人物であると断ずるほかないが,むしろ重要なことは,同人が上記警告内容を通知書が送られた当時に既にこれを認識し,かつ,同警告につきこのような受け止め方しかしていなかったという点にある。結果が大々的な盗作であった訳であるから,上記は本件盗作行為の故意自白に等しい。

(2) 担当作業量の過大性と盗作の因果関係
  ○○は,平成20年4月の編集会議で執筆者に指名されてから,平成21年12月までの1年9か月の間に,現職の公立中学校の教員の多忙な生活のなかで,単元本文70時間分とコラムや課題学習など50本,合計120本の原稿を書き上げた旨供述する(乙42:2~3頁)。

  歴史教科書の執筆・制作は一般の論文や書籍の何十倍もの時間と労力を要する大変な作業であるが,上記のような過大な作業を同人一人で引き受けたこと自体,歴史教科書制作の経験を有する者が聞けばおよそ信じがたいことであるが,仮にそれが事実であるとすれば,これは今回の盗作事件の背景に存在する根本的原因となったものと考えられる。なぜならば,既にある教科書から手っ取り早く盗作する以外に,上記膨大な作業を1人であの短期間になし遂げることなど不可能であるからである。控訴人が属する「つくる会」においては,自由社版教科書を平成26年度検定に申請するに当たって,旧版の文章を基本的に維持しながら制作を行ったにもかかわらず,10名以上の執筆者が執筆作業に携わって執筆時間のみで延べ3000時間を要した。これは一日8時間の作業時間で考えたとしても,一人が行えば(本業を捨てて執筆に専従して一日も休まず)375日即ち約1年余りを要する作業量である。基本的に部分修正であった自由社版教科書でさえも,このように膨大な時間を要したのである。これに対し,○○によれば,被控訴人書籍の単元本文原案のほとんどを中学校教員としての本業を抱える同人が一から起稿したというのであり,余程手抜き(既に検定に合格した教科書からの盗作以外に方法はない)をしない限り120本もの教科書原稿をわずか1年9か月で成し遂げることはできないことは明かである。

(3) 執筆方法から窺われる盗作
 ○○は,執筆方法について,
      まず各社教科書の本文記述に目を通し,大まかな内容と重要語句,分量を把握した後,一から文章を「一太郎」のソフトを用いて入力するという方法をとりました。執筆にあたっては,これまで長年自分が授業でおこなってきた展開方法や自作の予習プリント,板書図などをベースとして,その上で他社の教科書記述を参考にしながら,教科書にふさわしいものとなるよう文章を紡いでいきました。

と言う(乙42:3頁)。

  同人は,まず「大まかな内容と重要語句,分量を把握」するために,各社教科書の本文記述に目を通し,次いで文章を実際に紡ぐために「他社の教科書記述を参考に」したというのであり,二度も他社教科書の内容及び文章に影響される形で執筆しているのである。要するに,同人は盗作を惹起し易い方法で執筆をしていたのであり,それ故に控訴理由書別表2で示したデッドコピーを含め多数の盗作を行っているのである。

  さらに,○○は,被控訴人育鵬社から控訴人書籍のデータを貰わなかったとして,「従って,訴状にあるような「被侵害書籍の本文記述を流用することを企てた」という指弾はまったくの事実無根と言わざるをえません」と言う(乙42:3頁)。

 百歩譲って被告扶桑社から控訴人書籍のデータを貰わなかったという主張をそのまま信ずるとしても,同人の上記論理は破綻している。この場合のデータとは電子データを指しているが,仮に電子データを貰わなくても,同人は,控訴人書籍を見て参考にしたことについては,前述の通り陳述書の中で告白しているのである。同人は参考にした控訴人書籍からデッドコピーさえも行ったのである。「電子データ流用をしなければ,盗作にならない」と言うに等しい馬鹿げた弁解であると言わざるを得ない。

 しかも,同人は,御丁寧にも,
    そのようなもの(代理人注:控訴人書籍のデータ)があったとすれば私の労苦は大幅に軽減され,予定よりはるかに短時間で執筆が完了したでしょう。

などと述懐しているのである(同頁)。

  これは一々控訴人書籍本文を手作業で書き写さなくてもデータがあれば「コピー&ペースト」ができたので,もっと早く盗作執筆ができたはずであると言っているようなものであり,開いた口も塞がらない。著作権に対する初歩的感性を欠く人物の本性見たりというべきか。

 なお,同人は一太郎ソフトを使用したことを強調し,あたかも控訴人書籍データがマイクロソフトWORDであったことからデータ流用などしていないと言いたいようであるが,一太郎でWORDデータを読み込むこともできれば,WORDで保存することも可能であること(常識)を念のため指摘しておく。

(4) 主張の矛盾等

 ○○は,各社の教科書記述には大きな違いはないと繰り返し,
   育鵬社の歴史教科書は他社本と同様,一般的な史実や解釈を一般的な表現を用いて記述したものです。 原告が著作権の侵害を主張する個所についても ,すべてありふれた歴史記述の表現にすぎません。

と言う(乙42:4頁)。

  しかし,各社の教科書記述に大きな違いがないのであれば,なぜ,歴史教科書問題が国際的な問題にまでなるのであろうか。なぜ,同人や被控訴人伊藤隆や同八木秀次は,「新しい歴史教科書をつくる会」の運動に参加したのか。自己矛盾も甚だしい。

 また,○○は,
   私の歴史認識を形成するにあたっては「つくる会」 に属している(いた)諸先生の影響を長期間にわたり強く受けています。 執筆にあたり,そのような方々の著書の内容が念頭にあったことは当然ですし,記述に類似点があるというならそのような思想の近さが内容にも反映している点があるものと思われます 。無論,一度私の中で咀嚼し血肉化された歴史認識に基づく文章は,その素材がだれのものであれ私自身の作品であることは論を待ちません

と述べている(同頁)。

  しかし,「私の中で咀嚼し血肉化された歴史認識に基づく文章」がどうして他人の文章のデッドコピーになるのか,甚だ疑問である。デッドコピーを「私自身の作品」と胸を張って言い放つ同人の神経の程が疑われる。もっとも、上記前半部こそは,同人が執筆したとする被控訴人書籍本文の多数の箇所が著しく類似しているという客観的事実に対する見苦しい弁明にほかならない。

 さらに,○○は,
   もしも原告の主張する著作権侵害の認定を一部分でも受けるようなことになれば,以後,どのような歴史教科書も執筆できなくなるのではないかと危倶しております。私は現場教員として,教育界にそのような大きな混乱を招く事態は避けねばならないと考えます。

などとして陳述書を締め括っているが(乙42:4頁),仮に歴史認識を同じくする立場であっても,執筆者が盗作することなく独自の文章で教科書を執筆する限り,他社から訴えられるようなことはあり得ず,上記危惧など無用のことである。同人は,自身が行った他社教科書を切り貼りして教科書を作成することが許されなくなることを危惧しているだけである。

3 ○○に対する証人尋問の必要性

(1) 上記2で指摘した通り,第1次的な盗作行為者と目される○○供述には自身の盗作行為を暗に窺わせる内容,自己矛盾及び不合理な弁解などが山積しており,同人の証人尋問は是非とも必要である。特に依拠性については原審で必ずしも十分な審理が行われていないことから,同争点に関する最重要証人である○○の尋問は不可欠というべきである。

 (2) さらに,○○供述を具体的に見るならば,次のような疑問点も浮上する。
   ○○は,
     執筆分は文化の領域の一部や江戸時代の大半,どうしても思いつかない部分を除き,本文約70時間分及び扉,コラム(ミニコラム含む), 課題学習約 50本でした。また,本文は育鵬社から台割りが示されていたため,それに基づいて執筆しました。

と言う(乙42:3頁)。

 問題の焦点である単元本文のうち,「文化の領域の一部」,「江戸時代の大半」,「どうしても思いつかない部分」の三つは,○○自身は書いていないという。であるならば,同人に対しては,次の問い質しが必要である。

① 「文化の領域の一部」とは,被控訴人書籍のどの単元を指し,この部分は誰がどのような方法で執筆したのか。
② 「江戸時代の大半」とは,被控訴人書籍のどの単元を指すのか。この部分は誰がどのような方法で執筆したのか。
③ 「どうしても思いつかない部分」とは,被控訴人書籍のどの単元を指すのか。この部分は誰がどのような方法で執筆したのか。

 特に重要なのは②である。江戸時代部分にも,「21五人組と年貢」など6件ないし7件の盗作箇所がある。もしも,○○の言うことが本当ならば,同人以外に盗作を行った人物がいることになるからである。

 また,上記供述によれば,被控訴人書籍第4章「近代の日本と世界」についてはほとんど○○が執筆したことになるが,同章単元47「新しい国づくりへの道」以降にはほとんど盗作はない。同章は歴史認識等に関して控訴人書籍と最も似通うはずの箇所であるにもかかわらず,全体として類似性がほとんど感じられず,同章は一から自分の頭で文章を紡いでいったと推察される。そうであれば,単元47以降の第4章は,○○以外の人物が書いたとしか考えられない。おそらくは,被控訴人ら側の歴史認識をしっかり持った有能な書き手,推察するに著名な言論人が執筆したものと思われる。もし仮に○○自身が書いたとすれば,なぜ同人は古代や現代についても第4章と同じように自分の頭で一から文章を紡がなかったのか,疑問である。そこで,○○に対しては,次の問い質しが必要である。

④ 単元47以降の第4章は誰がどのような方法で執筆したのか。

 さらに,○○は「本文は育鵬社から台割りが示されていた」というが,それはどのようなものだったのであろうか。控訴人が提訴にまで踏み切ったのは,被控訴人書籍の47箇所の部分が,控訴人書籍と個々の具体的文章が類似しているだけではなく,事項の選択・配列まで類似しているからである。被控訴人育鵬社が台割を示していたとすれば,大津寄よりも,むしろ被控訴人育鵬社主導の組織的盗作である可能性が浮上する。示された台割とは,小見出しレベルのものだったのか,それとも更に細かいレベルまで書く事項を指定したものだったのだろうか。小見出しの下に書くべき事項までも何点か細かく指定していたとすれば,被控訴人育鵬社による組織的盗作だったことになる。それゆえ,○○に対し,次の問い質しが必要である。

⑤ 被控訴人育鵬社から示された本文の台割りとはどういうものだったのか。その際の同被控訴人からの指示事項はどんなものだったのか。

第2 求釈明 

 被控訴人らに対して下記釈明を求める。

(1) 被控訴人書籍本文原稿執筆者の氏名と担当箇所の一覧を開示せよ。
(2) 被控訴人育鵬社から執筆者らに対して示した本文の台割りを提出せよ。

                                              以上


        ○○氏に対する尋問事項

別紙
          尋 問 事 項

1 甲 1 8 号証の 1 「 通知書」 に関する証人の認識について
2 被控訴人育鵬社から 示さ れた本文台割り の内容
3 証人が執筆担当した単元箇所の特定
4 執筆に当たっての同被控訴人からの指示事項
5 執筆担当箇所の事項の選択と配列の方法・過程
6 他社教科書の何をどのように参考にしたのか
7 証人が被控訴人書籍制作に要した作業時間
8 編集会議その他で証人の原稿が控訴人書籍と酷似 している こ との指摘を受けた事実の有無
9 その他本件に関する事項一切


   転載歓迎



"盗作実行者の証人尋問を要求した書面(平成27年4月14日)" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント