教科用図書検定基準改正に反対する----なぜ、近隣諸国条項を撤廃しないのか 転載拡散歓迎

  この間、本務の方が忙しく、教科書問題や憲法問題について考える暇が全くなかった。その間に、思慮が足りないのか、教科書問題に関して、安倍政権はおかしなことを始めてしまった。

 12月20日、教科用図書検定調査審議会は、「教科書検定の改善について(審議のまとめ)」と、それに基づく小中学校の社会科、高等学校の地理歴史科と公民科に関する検定基準の改正案を了承した。そして、12月25日、文科省は、この改正案に対するパブリックコメントを求める旨を発表した。コメントの期限は1月14日までだという。多くの人たちにコメントを提出していただきたいと考える。

 教科用図書検定基準改正案

 パブリックコメントを行う場合の関連情報として挙げられている「義務教育諸学校教科用図書検定基準及び高等学校教科用図書検定基準の改正案について」には、「2. 改正の概要」というタイトルの下、以下のように記されている。

検定基準のうち、社会科(地図を除く)固有の条件(高等学校検定基準にあっては地理歴史科(地図を除く)及び公民科)について、以下の改正を行う。
① 未確定な時事的事象について記述する場合に、特定の事柄を強調し過ぎていたりするところはないことを明確化する。
② 近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示され、児童生徒 が誤解しないようにすることを定める。
③ 閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていることを定める。


丸数字の三点が今回の改正の要点である。一見当然のことを記しているように思われる。しかし、これから検討していくように、反って日本が追い詰められていく可能性の高い改正であると言わねばならない。三つの改正点は、小中学校の場合に即して言えば、義務教育諸学校教科用図書検定基準の中の第3章「各教科固有の条件」社会科部分の「2 選択・扱い及び構成・排列」の中に取り入れられている。この「2 選択・扱い及び構成・排列」の部分は、以下のような構成となる。

(1)小学校学習指導要領第2章第2節の第2「各学年の目標及び内容」の[第6学年]の3「内容の取扱い」の(3)のアについては、選択して学習することができるよう配慮がされていること。
(2)未確定な時事的事象について断定的に記述していたり、特定の事柄を強調し過ぎていたり(傍線部は引用者)、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げていたりするところはないこと。

  *現行基準は以下の通り。
(2) 未確定な時事的事象について断定的に記述していたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げていたりするところはないこと。


(3) 近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示されているとともに、児童又は生徒が誤解するおそれのある表現がないこと。
(4) 閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること。
(5) 近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。
(6) 著作物、史料などを引用する場合には、評価の定まったものや信頼度の高いものを用いており、その扱いは公正であること。また、法文を引用する場合には、原典の表記を尊重していること。
(7) 日本の歴史の紀年について、重要なものには元号及び西暦を併記していること。


(1)(5)(6)(7)は、全て現行検定基準と同一である。(2)は、「① 未確定な時事的事象について記述する場合に、特定の事柄を強調し過ぎていたりするところはないことを明確化する」という趣旨を受けて、傍線部の「特定の事柄を強調し過ぎていたり、」を付加したものである。

(3)は、②「近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字など……」をそのまま、(4)は、③ 「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解……」をそのまま定めたものである。


「(4) 閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解……」は新設すべきではない

 今回改正乃至新設される予定の(2)と(3)は、当たり前のことを定めたものであり、特に反対するものではない。ただし、自虐史観の根源である(5)の条項が削除されれば、こんな細かい条項は不要であることは強調しておきたい。

これに対して、政府統一見解と最高裁判例を重視せよと要求する(4)は大反対である。(4)の条項を政府見解・最高裁判例条項と名付けたい。(4)の条項を新設する目的として喧伝されているものは、領土問題の記述の適正化ということである。確かに、この条項が入れば、適正化のスピードは上がるだろう。しかし、実は、中学校社会科のケースで言えば、前回の教科書検定(平成22年度検定)で領土問題の記述は大幅に改善されている。隔世の観があるのである。別に(4)のような条項を設けずとも、次回検定では更に改善されていくことは目に見えていることに注意されたい。

  領土問題の記述についてはプラスであるとしても、他の多くの点でマイナスであるとしか私には思えない。「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例」という文言を見て、私が真っ先に思い浮かべるのは、河野談話であり、菅談話、村山談話である。さらには、最近の婚外子をめぐる最高裁判決、衆議院選挙「違憲状態」判決である。

(4)が規定されれば、河野談話に基づき、「従軍慰安婦」問題の記述が中学校でも復活するだろう。菅談話に基づき、日韓関係の記述がさらにおかしくなっていくだろう。村山談話に基づき、大東亜戦争を「侵略戦争」と規定しなければならなくなるだろう。最近は、中学校教科書では「侵略」という言葉は極めて小さくなっていたが、再び章見出しや節見出しで「日本の中国侵略」といった文字が大きく踊ることになろう。

更に私が恐ろしいと考えているのは、平成20(2008)年の衆参両院によるアイヌ先住民族決議だ。学問上アイヌは先住民族と確定していないにもかかわらず、先住民族として承認する決議を、アイヌの歴史も現状も知らない国会議員が可決してしまった。もちろん、衆参両院の決議は、政府の統一見解とは違うというのかもしれないが、立法部の意思だから両院決議は政府見解よりも権威があるとみなすこともできる。

先住民族決議は、アイヌを北米インディアンやアボリジニと同様のものと位置づけ、贖罪意識を日本人にうえつけようとする狙いをもったものである。

平成に入ってから、公民教科書では、平等権の例の花形として在日韓国・朝鮮人差別の例が取り上げられてきた。そして、歴史教科書では、在日韓国・朝鮮人強制連行等の虚構が語られてきた。在日韓国・朝鮮人問題が日本を叩くための切り札として用いられてきた。だが、在日韓国・朝鮮人強制連行等の虚構が暴かれてきてからは、アイヌ問題が日本を叩くための切り札として用いられ出している。既にアイヌ先住民族決議は教科書に登場しているが、更に多くの教科書に登場してくることになろう。いや、この決議のことを記さなければ検定合格できないということにさえなっていくのかもしれない。

アイヌ先住民族論は、1970年代に登場してきた周辺革命論・アイヌ革命論の系譜に位置するものである。周辺革命論・アイヌ革命論の代表格が反日原理主義の元祖である東アジア反日武装戦線である。アイヌ先住民族論は、日本を破壊するための言論なのである。この言論を教科書で更に広げていくことになるだろう(4)の条項を入れることに、私は断固反対する。

  近隣諸国条項こそ撤廃を


  更に言えば、我々が常に撤廃を要求してきた近隣諸国条項は、全く手付かずに残っている。上記のように、(4)の条項(いわば、政府見解・最高裁判例条項)に続いて、(5)の条項として近隣諸国条項が挙げられている。

(5) 近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。

政府見解・最高裁判例条項と近隣諸国条項をセットで考えると、政府見解や最高裁判例のうち自虐派に有利なものこそ重視されることになろう。すなわち、村山談話、河野談話、菅談話、アイヌ先住民族決議こそ優先されていくことになろう。そして、自虐史観が大幅に拡大していく最悪の結果を招来することになるかもしれない。

私には、平成20年の学習指導要領改定の時が思い出される。指導要領は改善されたと保守系マスコミは喧伝した。しかし、公民的分野に関しては、家族が指導要領から消えたことなど改悪が行なわれたことを、彼らは隠してしまった。その結果、公民教科書から家族論が減少するどころか、多数派の教科書から家族論が消えてしまった。それだけではなく、総じて、公民教科書は改悪されてしまったのである。

  今回は、平成20年の時どころの騒ぎではない。近隣諸国条項に続いて、自虐史観にお墨付きを与える政府見解・最高裁判例条項が出来ようとしてるのである。
以上をふまえて、私は、文科省に、以下の二点を要求する。

一、政府見解・最高裁判例条項―――「(4) 閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること。」を新設しないこと

二、近隣諸国条項-―――「(5) 近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。」を削除すること


検定基準の世界では、近隣諸国条項は原理的なものを表す条項であり、諸悪の根源である。この条項さえ削除すれば、(3)の条項を新設せずとも、「南京事件」をめぐる記述は改善されていくだろうし、更には記述自体が消滅していくことにもなろう。また、領土問題の記述も一挙に改善されていくことになろう。

にもかかわらず、文科省は、諸悪の根源を断つことをせず、自虐史観を拡大する政府見解・最高裁判例所条項を新設しようとしているのである。反日主義者は、今回の検定基準改正に対して表向き反対しているが、ひそかにほくそ笑んでいるであろう。いや、狂喜しているに違いない。安倍内閣は、教科書問題に関して、よほど「愚かな」ブレーンを抱えているのではないだろうか。

自虐史観を克服したいと考える全ての人よ、政府見解・最高裁判例条項「(4) 閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること。」に反対する意見を文科省に寄せられよ。


     窓口は、以下の通り
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000672


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