平成24公民教科書の各社別評価―――――評価できるのは自由社のみ

   全体評価に次いで、各社別評価を試みていこう。東書から順に見ていこう。

○東京書籍……日本を解体し、バラバラな個々人からなる地球社会を目指す

①東書は、著しく内容が悪化した。平成18~23年度教科書を比較検討した時に予告しておいたように、日本書籍新社撤退後、最も左翼的な教科書となった。歴史教科書の場合と同じである。全体的にも、3つの問題領域すべてにおいても、最も評価できない教科書である。

  東書が全体として目指しているのは、家族、地域社会、国家を解体し、バラバラな個々人からなる地球市民を作ることである。東書は、家族と地域社会の教育を全くせず、国内政治のところで国家論も展開しない。それどころか、帝国とともに、政治権力の必要性さえ認めない教科書である。最低限、こんな教科書だけは採択しないでいただきたい。 

 といっても、かなりの教育委員会が東書を採択している。彼らは、一体、何を考えているのであろうか。日本国家解体を最も激しく目指す教科書を採択するとは。

②3つの問題領域について見ていこう。Ⅰの問題領域から言えば、東書は、家族や地域社会の教育を放棄しただけではない。前述のように、教基法を無視して愛国心、愛郷心、公共の精神の教育も放棄するばかりか、日本文化の本質、統一性を示すことなく、その多様性ばかりを説くことに熱心である。文句なく、断トツに、共同社会を解体していく教科書である。

③Ⅱの問題領域に関しても、東書は最悪の教科書である。領土問題だけは比較的良い記述をしているが、他の箇所はほとんどが最悪の記述となっている。前述のように政治権力論さえないし、防衛ばかりか警察さえも公共財として認めない。詳しくは、比較資料のⅡ部をご覧いただきたい。

④Ⅲの問題領域についても、最悪の教科書である。特に、その「日本国憲法」における人権論が異常である。東書は、「法律によっても制限されないという真の人権思想の確立は、日本国憲法の制定まで待たなけれはなりませんでした」(35頁)と述べる。「法律によっても制限されない」は今回加わったものであるが、ここまで人権至上主義の書き方をする教科書は存在しない。普通は、「侵害されない」という言い方をするからである。

  人権の暴走、平等権の暴走によって国家社会を解体していくことを目指しているのが東書であるといえよう。

⑤平成18~23年度版公民教科書の検討をした際、私は、宗教、家族、国家論、公共財、西欧政治思想史の5点を理論的、原理的部分と位置づけた(「資料・平成18~23年度中学校公民教科書分析(1)~(8)を載せて思うこと」2010年10月25日記事)。不正確な言い方ではあるが、原理的部分であると位置付けた。その際は、西欧政治思想史の部分を4件に分けていたので、全部で8件という数え方をしていた。今回は、西欧政治思想史の部分は全体で一件と数えて比較検討した。

  すると、やはり、この理論的部分に関しても、東書は、最も評価できない教科書である。宗教について極めて簡略にしか記さない。また、繰り返すが、家族論も国家論も書かないし、政治権力の必要性さえも記さない。そればかりか、前述のように、国防どころか警察さえも公共財と位置付けないのである。第九条の弊害ここに極まるというところであろう。

  理論的部分については、各社をグループ分けすれば、圧倒的な上位グループとしては自由社一社、次に日文と育鵬社の二位グループ、教出、清水、帝国の三位グループ、断トツの最下位が東書である。

⑥再度いうが、あらゆる点で、最下位グループに位置するのが、採択率一位の東書である。最も採択してはいけない教科書である。


○日本文教出版……理論面では育鵬社なみ、個別実際面では東書なみ

①日文は、理論面では、特に西欧政治思想史の箇所では最も充実した評価できる記述をしている。少なくとも育鵬社なみには評価できる教科書である。ところが、個別実際的な部分では東書なみにひどい教科書である。トータルでは、東書よりはましだが、教出、清水と同じ程度に評価できない教科書となる。

  おかしなことに、理論的には権力分立を立憲主義のきわめて重要な原則として掲げながら、「日本国憲法」の箇所では権力分立を原則の中に入れない。全く入れたいというそぶりも見えない。

②Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの問題領域ごとに見ていくと、特に日本の国家主権破壊の傾向は東書と並ぶひどさである。拉致問題に関する記述もひどいが、一番問題にすべきは、竹島と尖閣に関する記述であろう。完全に中立的な立場から記されているので、日文の教科書は、韓国や中国にとっては自分たちの主張をアピールする場になったと位置付けられよう。


○教育出版……全体主義的な民主主義をめざし、村山談話を持ちだす教科書

①全体的に教出は、日文、清水と同グループとなる。そして、3つの問題領域に注目すれば、共同社会破壊、国家主権破壊、全体主義的民主主義という3つの特徴をもっている。

②3つの特徴の中では、最大の特徴は全体主義的民主主義を目指していることであろう。教出は、直接民主主義を理想的な政治システムと捉え、象徴天皇制という君主制否定思想の言葉を使い、天皇の公的行為を無視する。反天皇制思想が明確に読み取れる教科書である。

③次に特徴的なのは、国家主権を中韓に譲り渡そうという傾向である。つまり、中韓隷属史観・意識が顕著にみられる。比較資料で紹介したように、村山談話を引き、「戦争によって、日本がアジアの人々にもたらした被害については、深く反省し、今後も引き続き、近隣諸国との良好な関係を強めていく必要があります」としている。そして、在日に参政権を付与しないのは差別だと言い、更には外国人一般に参政権を与えようと述べている。あまりにも、明白な日本解体計画の宣言を、国民教育の教科書が述べていることに注目されたい。


○清水書院……評価すべき記述と、強烈な対韓隷属意識の併存

①全体的には、日文、教出と同じグループに属する。東書、日文、教出と同じく、3つの否定的特徴をもっている。

②そのうちでも目立つのは、地域社会の教育を放棄しただけではなく、家族の単元や小見出しさえ設けず、家族論の教育を放棄したことである。すなわち、共同社会破壊傾向がすさまじいことである。

③更に大きく目立つのは、その対中韓隷属意識、特に対韓国隷属意識である。日本の首相が「痛切な反省と心からのお詫び」を述べた1998年の日韓共同宣言を引くとともに、東書や教出と同じく、東アジア共同体構想にふれている。そして、在日=被強制連行者子孫説を展開したうえで、参政権を与えるべきだと展開している。

④ただし、清水書院は、国家論を正面から展開しているし、効率と公正のバランスといった、まだこなれていない考え方の導入を拒否して見せた。ある意味、これらは、評価すべき態度だと言えよう。


○帝国書院……全体主義的な民主主義を目指す教科書、ただし家族と地域社会は維持

①何日か前の記事で記したように、帝国書院については、二通りの評価ができる。とりあえず、日文、教出、清水と同じグループに属する。東書よりはましだが、全体として良くない教科書と評価できる。
  
  しかし、家族や地域社会といった共同社会を破壊しようという動きが強くなった今回の状況を強く意識すれば、共同社会を守るという点で、自由社の次に評価できる教科書ともいえる。 

②このように、問題領域別に言えば、Ⅰの[共同社会維持か破壊か]という問題ではある程度評価できるのだが、ⅡⅢの問題領域に関しては東書と並ぶ問題教科書だと言える。

 Ⅱの領域に関して言えば、東書と同じく、国家論どころか、政治権力の必要性さえも記さない。また、唯一、竹島・尖閣を書かないところからも、主権破壊傾向の強さがうかがわれよう。

③Ⅲの領域に関して言えば、帝国は、全社の中で最も全体主義的な民主主義を目指す教科書である。もちろん「日本国憲法」三原則説をとるし、先ほど述べたように「象徴天皇制」という言葉を用いるし、直接民主主義を本来あるべき政治システムと捉えている。そして、他の4社と同じく、平等権を根拠に逆差別思想を展開し、日本人を差別する。


○育鵬社……愛国心を展開せず、教基法を無視した「保守」の教科書、理論は日文なみ

①育鵬社教科書が作られる背景、作り手が「保守」を標榜している点を除いて考えれば、育鵬社は、自由社と自虐5社の中間に位置する教科書であり、5社よりは圧倒的に評価できる教科書である。

  しかし、育鵬社は、愛国心などを規定した教基法改正に関わった人たちが支援してつくられた教科書である。ところが、何度も述べてきたように、育鵬社は、強烈な家族解体思想を展開し、愛国心、愛郷心を完全無視し、公共の精神も基本的には無視した。これで、今後愛国心教育の復活は8年(教科書発行2回り)は遅れることになろう(そこまで遅れないことを祈るが)。この責任を、彼らはどうとるのであろうか。「つくる会」に目先でどう勝つか、といった問題意識しかなくなってしまったのだろう。

  このような背景を併せて考えれば、育鵬社よりは、帝国を評価すべきではないかとも思われてならないのである。

②育鵬社の教科書は保守の教科書とは到底言えない。保守の一番のメルクマールは、共同社会を維持するという点にある。しかし、育鵬社は、他の5社と同じく、共同社会解体の思想を表明した。

③また、前に挙げた理論面と分類できる5件の記述に注目すれば、日文と同じ程度の評価しかできない。家族論は最悪だし、国家論は正面から展開していないし、国防を公共財と位置付けることさえもしていない。

  公共財に国防を入れないのは左翼理論そのものであるが、「日本国憲法」をめぐる理論面を見ても、左翼と同じく「日本国憲法」三原則説を採用しているし、同じく左翼の平等権思想に染まっている。ともかく、理論は保守よりも左翼に近いというのが、育鵬社の姿である。

④ただし、人目を引く領土問題や拉致問題、外国人参政権問題、国旗国歌問題などは、自由社と並んで評価できる。3つの問題領域に即して言えば、共同社会破壊の傾向こそもつが、トータルとして国家主権維持の方向、全体主義的ではなく立憲主義的民主主義の方向を目指すことはわかる。

⑤ただ、私が一番重視するのは、家族論、国家論、愛国心・愛郷心・公共の精神、「日本国憲法」の原則、法の下の平等などの捉え方である。私が重視する部分では、ことごとく左翼と同じ立場を示し、期待を裏切って見せたのが育鵬社である。


○自由社 ……唯一の保守独立派の教科書

①全体的に言っても、3つの問題領域別に言っても、理論的にいっても、最も優れた教科書が自由社の教科書である。

②Ⅰの共同社会維持か否かという問題から言えば、自由社は家族と改正教基法を守る唯一の教科書である。7社の中で唯一、家族に2単元用いているし、家族の四つの意義を公民教科書史上、初めて明らかにした。すなわち、1、家族が共同体であること、2、家族間の愛情を育む場であること、3、子供を保護し教育する場であること、4、「祖先から子孫への縦のつながり」という四点で、家族を意義付けた。

 また、地域社会の単元を維持し、七社で唯一、「公共の精神」、愛郷心、愛国心を展開した。つまり、自由社は、最も改正教育基本法を守った教科書である。他の六社がすべて、改正教基法を無視したのとは大違いである。

③Ⅱの国家主権維持か破壊かという問題について言えば、国旗国歌、領土問題、拉致問題などの個別的・具体的事柄については、おおよそ、育鵬社も同じレベルのことを記している。だが、国家主権維持のための理論装置の点では、育鵬社とは雲泥の差がある。国防・自衛隊を公共財と位置付けているし、教科書史上初めて、本格的に国家の役割を整理した。すなわち、1、防衛、2、社会資本の整備、3、法秩序、社会秩序の維持、4、国民一人ひとりの権利保障という四点で、国家の役割を提示したのである。

  このような基本的な事柄こそ、本当は、中学生にきちんと教えるべきことである。ところが、家族論も基本的な事柄といえるが、日本の言論界は、教科書の検討を行うときに、基本的な事柄を問題にせず、個別的・具体的事柄ばかりを問題にする傾向がある。

  他にも、唯一、愛国心を定義し、その大切さを説いたこと、9条解釈で自衛戦力肯定説を初めて紹介したことなどは、育鵬社も含めた六社とは全く異なる点である。

④Ⅲの全体主義か立憲主義かという問題領域について言えば、この領域に関しても、個別的な事柄については、自由社と育鵬社のレベルはあまり変わらない。だが、理論的な面では、自由社が「日本国憲法」七原則の立場に立っているのに対し、育鵬社は三原則に立っている。また、自由社は、平等権という言葉を用いる育鵬社と異なり、唯一、「法の下の平等」という言葉を用いる。育鵬社が左翼的、全体主義的な理論を用いるのに対し、自由社が立憲主義的理論を用いることに注目されたい。

⑤以上の記述からわかるように、公民教科書では、自由社と育鵬社は、全く種類もレベルも異なるものとなった。特に理論面で大きなレベルの差が生まれた。また、Ⅰの領域について、共同社会破壊の育鵬社VS共同社会維持の自由社という対立構造が生まれたのである。



   以上を踏まえて言えば、採択すべき公民教科書は自由社の『新しい公民教科書』だけである。この教科書が採択を広げ、この教科書に書かれた思想が広がらない限り、日本は滅んでいくことになろう。  



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