平成24公民教科書資料Ⅲ(13)市場経済と計画経済の比較

                  Ⅲ、立憲主義か全体主義か

                 (13)市場経済と計画経済の比較


   日本は、資本主義経済の国である。にもかかわらず、公民教科書を支配してきた全体主義的民主主義を目指す人たちは、計画経済にシンパシーを抱いている。それゆえ、経済的自由の箇所では経済的自由の制限を力説する。そして、市場経済の積極的な意義を、計画経済と比較して説くということをしない。このような問題意識は、自由社と育鵬社にしか存在しない。

  以下、7社の記述を比較されたい。

○分析項目
①資本主義経済の良さ
②計画経済の欠陥


○東京書籍……
①資本主義経済……第4章2節「生産と労働」下、単元「1 企業の役割と意義」の下、「資本主義経済」の小見出し下、「自給自足の経済とちがって、現代の経済では、企業が生産の役割を専門的にになっています。自動車会社や製鉄会社はもちろん、家族経営の農家や個人商店も企業です。小売店なども企業で、各種のサービスを生産しています。企業は、利潤を得ることを目的として生産活動を行います。利潤を生み出すもととなる資金は資本と呼ばれ、この資本という言葉をとって、わたしたちの経済は資本主義経済とも呼ばれます」(114頁)。
②なし

○日本文教出版
①資本主義経済……第3編第2章1節単元「3 企業の競争と独占の問題」下、「企業の競争」の小見出し下、「私企業が生産の中心になった経済を、資本主義経済といいます。この経済のもとでは、生産活動全体は主に市場によって調整されています」(138頁)。
②計画経済……第4編1章1節、単元「5 現代世界の戦争と平和」下、側注欄に「キーワード 社会主義」の欄で「生産手段の社会的所有により、社会全体の生産と消費を計画によって調整し、公平な所得の分配をめざす制度です。現実に導入したソ連や東ヨーロッパ諸国では、一般市民の自由がかなり制約されました」(192頁)。


○教育出版
①資本主義経済……第4章2節「生産のしくみと企業・金融」下、単元1「生産活動を担う主体 生産と企業」下、「私企業と資本主義経済」の小見出し下、「このような私企業の生産活動を中心に営まれる経済のあり方を、資本主義経済とよびます。資本主義経済のもとでは、私企業は機械設備や土地を所有し、市場における自由な競争を通じて、利益を上げることを目的に、生産活動を行います。日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国など、現在ではほとんどの国の経済が、資本主義経済です」(135頁)。
②計画経済……なし
付録……「読み物資料3 「『経済』を学ぶということ」で、「家庭や国家などの共同体を管理する活動のことを、『Economy』という言葉が表すようになりました」(178頁)。

○清水書院……
①資本主義経済……
第2編第2章1節単元1「市場経済と企業」下、「資本主義経済とは」の小見出し下、
 「生産のために必要な工場や設備などを私有(私有財産制)している人が、労働者から労働力を買って、もっぱら売るための商品を生産し、販売する。利潤は、資本を投下した人の私有となる。このしくみは資本主義経済とよばれ、財産権の保障や営業の自由などをその前提としている」(106頁)。
②計画経済……同単元下、側注欄①「資本主義経済に対し、社会主義経済は、工場や設備(生産手段)の公有を前提とした経済である。旧ソ連や中国では、さらに国家が生産や流通を統制していた。1990年代以降、中国では生産手段の公有を維持したまま、市場経済を導入する試み(社会主義市場経済)がおこなわれている」(106頁)。

○帝国書院
①資本主義経済……特に良さなし(110頁)
②計画経済……ともになし

育鵬社
①資本主義経済……第4章第3節「市場経済と金融」下、「資本主義経済と企業」の小見出し下、「日本やアメリカなどは、土地や資本財を私的に所有できる資本主義経済(自由主義経済)を採用しています。資本主義経済では、企業が資本(元手)を用意して、生産要素を組み合わせて利潤(もうけ)を目的として生産活動を行っています」(121頁)
②計画経済……同単元下、「社会主義経済」の小コラム下、「資本主義経済でないしくみとして、生産手段の公有を基本とし、社会全体の消費と生産を計画によって決める社会主義経済があります。社会主義経済は、本来、一般の人々ができるだけ平等な機会を得るべきだという、弱者に配慮した考え方のはずでした。
しかし現実に社会主義を導入した多くの国では、一部の権力者が国民生活全般を統制し、国民の自由と権利はいちじるしく制限されました。
 ソビエト連邦の強制的な集団農場化や急速な工業化、中観人民共和国の大躍進政策の失敗など、相つぐ経済政策の失敗による飢餓や貧困などにより、多くの犠牲者が出ました。今も北朝鮮では、多くの国民が飢餓に苦しんでいます。
 多くの人間や組織が多様な欲望と技術をもって活動している社会では、政府による生産量や消費量の決定は大きな無駄を生み、また権力が一部に集中してしまいます。
今でも中国などでは、土地と重要企業の公有を維持していますが、市場経済の活力を導入しようとして、私企業や外国資本の参入を認めるようになっています(社会主義市場経済)」(121頁)。
……自由社の説明の方が相当よい。どうも、経済の話として理屈がすっきり捉えられていない。
③備考……マルクスの写真下、「資本主義体制を批判し、社会主義経済の理論を説きました」(120頁)。

○自由社
①資本主義経済の良さ……計画経済と比較して説く。
②計画経済の欠陥……有り
単元41「市場経済の特色」下、「市場経済と計画経済」の小見出し下、
 「市場での自由競争にまかせて社会全体の経済を運営していくしくみが市場経済です。市場経済では、つねに市場価格をふまえて生産量と消費量が調節される結果、各種の商品が市場の価格で社会のすみずみまで効率的にいきわたっていきます。また、生産者同士の自由競争を通じて、消費者の需要に合った新商品がたえず開発され、生産技術の向上も常に行われていきます。こうして市場経済は、経済成長と豊かさの増大を社会にもたらします。しかし、自由競争にまかせるわけですから、もうかる人ともうからない人が出たり、工場や商店が倒産して失業者も出たりして、貧富の差が生じます。
 この市場経済に対して、各種の経済財の生産量と価格、さらには消費量までを国家の計画に基づいて決めていく計画経済があります。計画経済は、理論上は、経済財の生産量に過不足が起こらず、競争がないため平等で貧富の差のない社会を築くことができるとされました。しかし、実際は、消費者一人ひとりの要望は無視され、競争がないため生産技術の開発も停滞し、計画を決める国家官僚に権力と特権が集中し、独裁政権が生まれやすくなるなど、非効率的で不公正な経済制度であることが明らかとなりました。
・「ミニ知識 市場経済の公正と効率」下、「旧ソ連をはじめとする社会主義国家を建設した人たちは、市場経済は人々の自由な利潤追求と競争が社会に勝者と敗者を生み出し、貧富の差を拡大すると考えた。そのため、一切の生産活動を国家の計画のもとにおき、国家の計画に従って国民を生産活動に従事させ、賃金を平等に配分する計画経済を採用した。
  しかし、このような計画経済の生産のしくみでは、労働者は努力や工夫の有無にかかわらず賃金が同じであるため、労働意欲が減退し、技術の発展も停滞してしまった。また、複雑で予測しにくい経済の動きをあらかじめコントロールすることは不可能なことでもあった。計画経済の考え方としては賃金を平等にし、公正な経済の運営を目標としたのだが、効率が悪く、国民の豊かな経済生活を実現することはできなかった。しかも、国民の自由に対する欲求を抑圧してしまった。
 市場経済では、計画はしないが、競争を公正に行わせることによって、自由を抑圧せず、結果として、豊かな生活を効率よく実現することに成功した」(115頁)。



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