平成24公民教科書資料Ⅲ(6)「日本国憲法」の原則

               Ⅲ、立憲主義か全体主義か

             (6) 「日本国憲法」の原則


   「日本国憲法」の原則を、各社はどう規定しているであろうか。国民主権、平和主義、基本的人権尊重主義のいわゆる三原則に限定しているであろうか。それとも、権力分立や間接民主主義などの立憲主義的な原則をも掲げているであろうか。権力分立などの立憲主義的な原則を排除する教科書は、明らかに全体主義的民主主義を目指す教科書である。この問題では、自由社VS東書など6社の対立構造となる。

   比較資料を掲げよう。


○分析項目
 ①「日本国憲法」の原則又は原理として何を挙げているか
 付属②国民主権の意義……権力的か権威的か


○東京書籍
 ①国民主権、平和主義、基本的人権の尊重
「第2章 人間の尊重と日本国憲法」「1 人権と日本国憲法」の節見出し下、「3 日本国憲法の基本原理」の単元見出し下、「日本国憲法の制定」の小見出し下、
 「日本国憲法は、戦前の天皇主権を否定して国民主権の原理を採用し、人権の保障をいちじるしく強化しています。また、多くの犠牲を出した戦争と戦前の軍国主義の反省にもとづいて、戦争を放棄(憲法第9条)して平和を強く希求しています。
 国民主権、平和主義、基本的人権の尊重は、日本国憲法の三つの基本原理です」(37頁)。
②同単元下、「国民主権」の小見出し下、「国民主権とは、国の政治の決定権は国民が持ち、政治は国民の意思にもとづいて行われるという原理です。国民主権のもとでは、国民一人ひとりの意見を尊重し、話し合いによって、全体の意思を民主的に決定します。そこで、国の政治では、国民によって選ばれた代表者が議会で決定するという議会制が採用されています。主権である国民にとっては、議会の議員を選挙する選挙権が重要になります」(37頁)……完全に権力的。しかも、主権を国民一人ひとりが持つような感じ。

○日本文教出版 
①国民主権、平和主義、基本的人権の尊重
第1章1節、単元「2 日本国憲法の制定と基本原則」下、「三つの基本原則」の小見出し下、「このように、日本国憲法は、大日本帝国憲法を改正するという手続きによって成立しましたが、内容はまったく新しい憲法です。
 日本国憲法の前文には、この憲法が、なぜ、何のために、どのような考えでつくられたのかが書いてあります。それによると、日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの基本原則から成り立っていることがわかります」(41頁)。
・続けて、「世界とつながる日本国憲法」の小見出し下、「日本国憲法の基本原則は、18世紀後半以来世界に広まった立憲主義の考え方に基づいています。大日本帝国憲法と異なり、主権者は国民になり、人権保障について法律による制限がなくなりました。また、世界では、20世紀の二度の世界大戦の反省から、平和主義の考え方が強くなりました。日本国憲法も、戦前の苦い経験から二度と戦争を起こしてはならないとして、前文や第9条などで平和主義を徹底することにしました。そして、人は個人として尊重され生まれながらに人権をもっているという考え方が、この憲法ではじめて明記されました」(41頁)。
  *西欧米国の所では、権力分立を立憲主義の重要な要素として挙げていたのに、なぜここで入れなのか。フランス革命の反省一切なし。
②第1章1節、単元「3 日本国憲法と国民主権」の下、「国民主権」の小見出し下、
「国の政治のあり方を最終的に決める権限が国民にあることを、国民主権といいます。私たちが、個人として尊重され、人権が保障された生活をおくるには、国の政治のあり方を、だれか人に任せるのではなく、私たち自身の手で決めることが必要になります。日本国憲法の前文は、『ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。』と、はっきり国民主権の原則を打ち出しています」(42頁)

○教育出版 
①国民主権、平和主義、基本的人権の尊重
第2章1節単元「4 憲法の三つの柱」下、「三つの基本原理」の小見出し下、「この前文から、日本国憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの考え方を基本的な原理としていることが読み取れます」(38頁)。
 ②同単元「国民主権」の小見出し下、「主権とは、国の政治のあり方を最終的に決める力を意味します。大日本帝国憲法のもとでは、主権は天皇にありましたが、日本国憲法では、主権者はわたしたち国民であり、国民が政治のあり方を決める力をもっていることが明示されています。これを国民主権といいます」(38頁)。

○清水書院
①②第1章1節単元3「日本国憲法の成立と基本原理」下「日本国憲法の原理」の小見出し下、
 「日本国憲法は、三つの基本原理から成り立っている。
まず第一は基本的人権の尊重である。日本国憲法は、専制的な政治や戦争による国民の犠牲を深く反省し、憲法が保障する基本的人権を『侵すことのできない永久の権利』としてかかげている。
こうした基本的人権を最大限に尊重する政治は、政治について決定する最高の権力を国民自身がもつことによって、もっとも確実に実現できる。そこで定められたのが、第二の柱となる国民主権の原理であり、最高権力をもつ国民の選んだ代表者が、国民のための政治を実現していく道すじが明確に示された。
 ……
 三つめの原理が平和主義である」(29頁)。
①国民主権、平和主義、基本的人権の尊重
②国民主権の意義……権力的

○帝国書院 
①国民主権、平和主義、基本的人権の尊重
第2章単元1「日本国憲法とは」下、「日本国憲法の三大原則」の小見出し下、
 「日本国憲法は『国民主権』『基本的人権の尊重』『平和主義』を三大原則としています。国民が国のあり方を決める主権をもつとされ、選挙を通じて国のあり方を決められるよう、20歳以上の男女全員に選挙権を保障しています。そして、基本的人権を尊重し、表現の自由などの自由権を保障するとともに、人間らしく豊かに生きるための社会権なども新たに保障しています。さらに、第二次世界大戦の反省にたって平和主義を選択し、戦争を放棄し、戦力をもたないことを宣言しています。戦後の日本は、日本国憲法にもとづいて歩んできました」(35頁)。
 ②国民主権……第2章単元2「国民主権と政治参加」下、「国民主権」の小見出し下、「国民主権とは、国民の幸福の実現をめざして行われる民主政治において、政治のあり方を最終的に決める力(主権)が国民にあるということを意味します」(36頁)。

○育鵬社
①3章1節下、単元2「大日本帝国憲法と日本国憲法」下、「日本国憲法の基本原則」の小見出し下、一方で、側注欄で「日本国憲法の基本原則」という図を設け、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の三つを示す(41頁)。
他方で、同小見出し下、「日本国憲法は天皇の位置づけを、大日本帝国憲法での統治権の総攬者から、日本国および日本国民統合の象徴へと、とらえ直しました。また、主権が国民に存すること(国民主権)を宣言し、戦争の放棄と平和の希求(平和主義)、国民の基本的人権の尊重をうたうとともに、国政が議会制民主主義に基づくことを確認しました」(41頁)。
②国民主権の意義……権力的(42頁)
 ・側注①「この場合の国民とは、私たち一人ひとりのことではなく、国民全体をさすものとされています。」(42頁)。

○自由社
 ①国民主権などの三原則を挙げたうえで、「立憲主義が支える日本国憲法の原則」の小見出し下、「このような3原則を支えているのは、立憲主義の憲法としての原則です。
 その第1に、象徴天皇の原則にのっとっています。憲法に規定する天皇は象徴であり、政治権力はもちません。象徴である天皇は、権力機関の長である内閣総理大臣を国会の指名に基づいて任命し、さらに、内閣の指名に基づいて最高裁判所長官を任命します。諸外国では、天皇が国家の元首とみられることがあります。
 第2に、法治主義の原則をとっています。憲法は国家が行う行為はすべて、「国権の最高機関」(41 条)である国会の定める法律に従わなければならないことを規定しています。第3に、日本国憲法は前文第1 段で、間接民主主義または議会制民主主義の原則を打ち立てています。第4に、憲法の条文が、第4章で国会、第5章で内閣、第6章で司法と分けて規定していることからもわかるように、三権分立の原則を採用し、立法、行政、司法の三権がたがいに抑制、均衡し合うことを予定しています」(52頁)。
   *検定の結果、検定申請本の「立憲主義が支える日本国憲法7原則」という言い方は、「立憲主義が支える日本国憲法の原則」に修正され、「立憲君主制の原則」は「象徴天皇の原則」に修正されている。また、検定申請本では「諸外国では、天皇を国家の元首とみています」と記していたが、「諸外国では、天皇が国家の元首とみられることがあります」に修正されてしまった。
 ②国民主権の意義
「第1は国民主権の原則です。憲法の前文では、主権が国民にあり、国政は国民の厳粛な信託により、その権威は国民に由来し、国民の代表者が権力を行使するとしていますから、国民主権とは、国の政治のあり方を最終的に決めるのは国民であるということです。つまり、国民の代表者が行使する権力は国民の権威に基づいていなければなりません。」(52頁)……*検定で大きく修正
側注①「この国民主権は、国民全体としてもっているもので、基本的人権のように国民一人ひとりが、別々にもっているのではない、とされている」(52頁)。
  *申請本は、「第1に、主権が国民にあるという国民主権の原則です。国民主権の主権とは、、国民を統治する政治権力に対して正統性を与える権威のことであり、その権威は国民に由来すると憲法は規定してあります。ただし、これは、基本的人権のように国民一人ひとりが、別々にもっているというのではありません。国民全体としてもっているという意味です。」(52頁)



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