平成18~23年度中学校公民教科書各社総合評価(1)―――日本書籍新社

今回の大地震で、公民教科書の分析どころではない気もするが、平成18~23年度中学校公民教科書について、順番に各社教科書の総合的評価をしていこう。

  さて、前に掲げた25項目について、5段階評価をしてみた。大雑把に言えば、第1項目から第8項目までは理論的な部分、第9項目から第25項目までは比較的具体的な部分と言える。理論的な部分について点数をつければ、次のようになった。

日本書籍新社  11点
東京書籍    14点
大阪書籍    23点
教育出版    14点
清水書院    23点
帝国書院    15点
日本文教出版  15点
扶桑社     19点
 

 次いで具体的な部分について点数を付けると以下のようになった。

日本書籍新社  26点
東京書籍    31点
大阪書籍    32点
教育出版    32点
清水書院    31点
帝国書院    30点
日本文教出版  33点
扶桑社     60点
 

最後に総合点を出すと、以下のようになる。

日本書籍新社  37点
東京書籍    45点
大阪書籍    55点
教育出版    46点
清水書院    54点
帝国書院    45点
日本文教出版  48点
扶桑社     79点
 

  8社の教科書は、点数をつけてみると、前の分類とは若干異なるものになった。改めてまとめてみると、8社は大きく四グループに分けることができる。最も評価できない第一のグループが日本書籍新社で、理論的にも具体的にも日本国家の解体を目指している。次いで評価できない第二のグループが東京書籍、教育出版、帝国書院と日本文教出版で、理論的にも具体的にも日本国家の解体を目指している点では日本書籍新社と同一であるが、その程度が日本書籍新社ほど激しくないものである。

  第三のグループは、大阪書籍と清水書院で、理論的には最もすぐれているが、具体的問題では第一、第二のグループと同様に日本国家解体を目指す記述を行っている。第四のグループは扶桑社一社で、理論的には第三のグループよりも劣るが、具体的問題では日本国家の解体を目指すようなことはなく、上記の三グループとは一線を画している。
 
  このように簡単に8社の概観をしておいた上で、日本書籍新社から順番に総合評価をしていきたい。



  侵略戦争史観に基づき公民教育を行う日本書籍新社

  侵略戦争史観

  侵略戦争史観は、歴史教科書にみられるだけのものではない。相当数の公民教科書にもみられるものである。その中でも最も侵略戦争史観が強く見られるのが、日本書籍新社の公民教科書である。この教科書の最大の特徴は、その侵略戦争史観と侵略戦争史観に基づく平和主義である。当然のごとく、「平和主義の原則」の小見出しの下、侵略戦争を反省して9条が生まれたと書いている。

  「第二に、憲法は、第9条を設けて一切の戦争を放棄し軍備をもたないことを宣言した。日本が過去にアジア諸国に侵略戦争をおこなったことを反省し、再び戦争をおこさないと決意し、国際平和に貢献することを望んだからである。軍備をもたないことまでうたった憲法は、世界でも例がなかった。この原則は、今日の国際社会であらためてその重要性が注目されている」(96頁)。

  侵略戦争史観は、国際社会編の所でも何度も出てくる。例えば「戦争を放棄した日本」の単元では、「戦争の傷跡」の小見出しの下、次のように出てくる。

  「日本は、明治以来台湾や朝鮮などを侵略し、1931年から15年間におよぶ戦争で中国や東南アジアを支配し、太平洋地域を攻撃した。この戦争で、2000万人近い多くの生命がうばわれた
  日本自身も、戦場では2000万人以上の人命を失い、国内でも沖縄や広島・長崎の原爆による被害をはじめ、無差別爆撃などによる無数の被災者をだした。家を失い、食料や衣料や日用品の欠乏に苦しみ、病気にかかって死んだ人々もたくさんいる。アジア・太平洋地域でも、日本でも大きな被害であった」(142頁)。

  また「平和憲法と自衛隊」の単元では、世界各国の軍事予算を比較した表を掲げ、次のように述べている。

  「右ページの表を見てほしい。自衛隊は現在、世界第3位の軍事予算をもち、隊員数約24万人(2005年)に達する巨大組織である。日本の経済力が強くなるにつれて、アメリカ側の要求もあって、自衛隊の装備は年々強化されてきた。ただ、先の戦争で日本軍に被害を受けたアジア諸国のあいだでは、装備強化についての警戒心が根強くある。」(144頁)。

  このように日本書籍新社は、この侵略戦争史観に基づき、9条を守り戦力をもたずにおこうというメッセージを生徒に送っている。そればかりではない。この侵略戦争史観は、日本人拉致問題の軽視にもつながっている。日本書籍新社は、「日本とアメリカ・近隣諸国との関係」の単元で、「今後の近隣諸国との関係」との小見出しの下、次のように述べている。

  「とりわけ経済改革を急ピッチで進める中国をはじめとしたアジア近隣諸国との関係は大切である。しかし、朝鮮人民民主主義共和国による日本人拉致事件もあり、同国との国交正常化交渉は進んでいない。また、強制連行などで、日本へのアジア諸国のわだかまりも残っている。さらに、ロシアとは日本固有の領土である北方領土の返還問題が残っている」(147頁)。

  侵略戦争史観から「強制連行」を持ち出し、その「強制連行」に基づき日本人拉致との相殺を図っていることに注目されたい。

  社会と国家の解体を目指す

  侵略戦争史観は、日本社会に対する憎悪を生み出し、社会と国家の解体を目指す意識を生み出す。日本書籍新社は、夫婦別姓を促すような資料を掲げて家族解体を目指しているし、他社も同じではあるが宗教について記さない。つまり、社会の紐帯をなす家族と宗教を蔑にし、社会の解体を目指しているのである。また、国家の目的・役割を記さないどころか、政治権力の必要性さえも記さず、国家の解体も目指している。

  社会と国家が解体されれば、残るのは個々人と地球社会なるものである。それゆえ、日本書籍新社は、国際社会と国民という言葉も使うが、第4章のタイトルを「世界平和と人類の共生を求めて」と記し、「地球市民」(135頁)という言葉を使っている。

  但し、日本書籍新社の教科書記述は、他社よりも具体的な社会問題を多く扱っているし、時に面白い記述も比較的多い。特に経済編では、日本の農業に触れたり、過労死の問題や住宅問題を取り上げたりしているし、日本的経営の変化にもふれている。この点は評価できるのだが、これらの具体的問題に気をとられすぎたのか、私的財とか公共財・公共サービスといった基礎的な事柄について説明をしていない。基礎的な事柄をきちんと教えるという教科書の本来の役割を忘れたものと言えよう

  教科書の本来の役割という点でいえば、ほとんどの公民教科書は、本来の役割を忘れているといえる。具体的個別的な差別問題だけで6頁も用いながら、法治主義や立憲主義を教えていないし、国家とは何か教えないまま、国内政治について語ろうとしているからである。


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