不正検定問題検討12――仏教伝来の時期

 長らく休んだが、『新しい歴史教科書』に対する不正検定についての具体的検討を再開する。2日ほどで出来るだけの検討を行いたいと考える。

 12回目からは、『教科書抹殺』(飛鳥新社、2020年5月)で取り上げていない件についても手を伸ばしていきたい。やはりダブルスタンダードと思われるものに絞って検討していきたい。12回目は欠陥箇所92番の件である。『新しい歴史教科書』は、単元11【聖徳太子の政治】という単元で、「仏教伝来と崇仏論争」という小見出しの下、次のように記していた。

欽明天皇の治世であった552年、金銅 (銅・青銅の金メッキ)の仏像と経典 を大和朝廷に献上しました。これを仏教伝来といいます。 44頁

この記述は、現行教科書と同一の記述であるにもかかわらず、「生徒が誤解するおそれのある表現ある。(仏教伝来の年についての現在の学説状況)」として、欠陥箇所とされてしまった。これは、538年説の方が552年説よりも有力であるから付いた指摘のようである。その指摘そのものは間違ってはいないので、自由社としては反論しなかったようだが、他社教科書を調べてみると、これもダブルスタンダードによる指摘であった。

他社教科書の記述を紹介すると、以下のように4タイプに分類できる。先に言ってしまえば、いずれにも検定意見は付いていない。

(ⅰ)伝来時期を書かないもの
・日本文教出版33頁 儒教や仏教の思想をもたらし
・教育出版35頁 百済から儒教や仏教が伝えられ

(ⅱ)6世紀と書くもの
・帝国書院31頁 6世紀には、仏教や儒教を伝え

(ⅲ)6世紀半ばと書くもの
・東京書籍35頁 6世紀半ばに仏教を伝え
・山川出版36頁 6世紀半ばに百済から仏教が伝えられると

(ⅳ)6世紀前半と書くもの
・育鵬社41頁 6世紀前半には…仏教が伝来しました。
・学び舎38頁 仏教は6世紀前半に、朝鮮半島の百済から伝えられました。

 538年説が正しいものとして全教科書を眺めてみると、6世紀半ばと書く(ⅲ)説に必ず意見を付けないとおかしいであろう。しかし、調査官は、東京書籍や山川出版には意見を付けず、自由社の記述だけを問題にして欠陥箇所としたのである。とんでもないダブルスタンダードである。

 恐らくは、調査官は、538年説に立とうと552年説に立とうと、あるいは6世紀前半説に立とうと6世紀半ば説に立とうと、どちらでもよいのであろう。どちらでもよいと考えていながら、自由社を不合格にするために、自由社にだけ〈538年説の方が552年説よりも有力である学説状況〉を持ち出したのであろう。坂本龍馬の件の場合と同じである。

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