不正検定問題検討24――「武士」

 今回24回目は、欠陥箇所134番の件である。今回は再び『教科書抹殺』が取り上げた100件以外の件となる。134番については、『月刊 HANADA』12月号掲載の前掲藤岡論文が取り上げている。

 「武士」ではなく「武官」と記せ
 
 『新しい歴史教科書』は、単元19【武士の台頭と院政】に春日権現験記絵の写真を掲載し、そのキャプションで「警備の武士、僧兵たち」と記していた(70頁)。

 これに対して、「生徒が誤解するおそれのある表現である。(「武士」)」との指摘があり欠陥箇所とされた。武士ではない、武官であるとの指摘である。

帝国書院は「武士」と書いて合格

 そこで、他社を調べてみると同じ絵の写真を掲載している教科書は、教育出版、帝国書院、育鵬社と三社存在した。そのうち、教育出版はキャプションを記していないが、帝国書院と育鵬社は、この絵について、次のようなタイトルとキャプションを付けていた。以下に掲げよう。

帝国62頁 「白河上皇と警備する武士」のタイトル。キャプションは以下の通り
牛車に乗った白河上皇が春日大社(奈良県)に到着した場面です。周囲には同行してきた貴族や警備に当たる武士たち、参列した春日大社の僧たちが居並んでいます。(「春日権現験記絵」宮内庁三の丸尚蔵館蔵)

育鵬社74頁 「貴族や武官を従える白河上皇」のタイトル、キャプションは以下の通り

車に乗って春日大社に到着した白河上皇のまわりには、同行してきた貴族(➀)と、警護に当たる武官たち(⓶)、僧侶(➂)の姿がえがかれている。(「春日権現験記絵」宮内庁三の丸尚蔵館蔵)

 武士なのか武官なのか、二社で見解が分かれる。いずれかに意見が付いても良さそうであるが、二社とも検定意見は付いていない。武官と記すべきだとすれば、自由社と帝国書院との間でダブルスタンダードがあると言えよう。

 調査官的に気になったこと

 ダブルスタンダード問題としてはここまでで議論は終了だが、気になったことがある。それは、自由社が「僧兵たち」と記しているのに対し、帝国書院と育鵬社は「僧」「僧侶」としていることである。「僧」と「僧侶」は同じ意味だとして話を進めると、自由社か二社かいずれかが間違いだということになる。どうなのか。

 『新しい歴史教科書』70頁の絵を見ると、左上に僧侶か僧兵かと思しき一群の人たちが描かれている。武器を持っていないように見えるから僧侶かなとも思われるが、頭も顔も隠しているから、むしろ武器を持っていない僧兵と理解した方が良いのかもしれない。服装のことは私にはよく分からないから、ここまででとどめる。

 それから、調査官的発想に立つならば、もう一点気になった。それは、帝国書院の「参列した春日大社の僧たち」との表現である。ここは厳密には「興福寺の僧たち」とすべきではないかと、ふと思った。当時の春日大社と興福寺を区別する必要はないとも思われるが、両者の関係は興福寺の方が強力であるし、「僧たち」とあるから「興福寺の僧たち」とすべきのように思った。興福寺とくれば、「奈良法師」であり、僧兵ではないかとも思う。いろいろ、素人が勝手に思った疑問である。

 ともあれ、本題に戻るならば、調査官にとっては、武官か武士かはどうでもよい問題だと思われる。自由社が「武士」と書くから「武官」でなければならないということになったのであろう。

  転載自由

 

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