不正検定問題検討11――ヤマト王権という用語が使われる理由

 11回目は、『教科書抹殺』の88番、すなわち欠陥箇所71番の件である。『新しい歴史教科書』は、【古墳の広まりと大和朝廷】という単元の〈歴史の言葉④大和朝廷〉という小コラムで、次のように記していた。

「ヤマト王権」とする用語も使われています。カタカナ書きは、地名との混同を避けるためです。 36頁

これに対して、〈「ヤマト」の意味について、生徒が誤解するおそれのある表現である〉との指摘があった。自由社自身は「ヤマト王権」ではなく「大和朝廷」との言葉を採用しているのだから、地名との混同問題を理由に挙げれば十分だと思われる。しかし、意見が付けられた。意見の趣旨は、地名との混同問題以外の理由を挙げよということだと私は考えた。しかし、文科省と自由社のやり取りを検討してみると、そうではなく、地名との混同問題は理由にならないというのが文科省の立場であった。最終的に文科省の立場を表明した12月25日の「反論認否書」には以下のように記されていたからである。

「ヤマト」にも地名としての意味があり,誤解するおそれがある。反論は認められない。

地名との混同問題は理由にならないと表明したのである。そこで、ヤマト王権という言葉が使われる理由を書いている教科書が存在しないか、調べてみた。すると、帝国書院が見つかった。帝国書院は、【鉄から見えるヤマト王権】という単元の側注➀で、次のように記している。

国号の「倭」や後の地域名の「大和」と区別するため、「ヤマト」と表記しています。  30頁 

このように、帝国書院も、地名との混同を理由に挙げているではないか。なぜ、帝国書院に対して、〈「ヤマト」の意味について、生徒が誤解するおそれのある表現である〉という検定意見を付けなかったのであろうか。ここでも、自由社差別が行われていたのである。

 学び舎・育鵬社――東書など5社――自由社の序列

 ここまで、『教科書抹殺』の100件から、適宜、タブルスタンダードとして目につく事例を検討してきた。まだ他にも、100件中にはダブルスタンダードの事例が存在するが、当ブログにおける検討は今回で終えることとする。公民教科書の問題にまた戻ることとする。暇ができ、気が向いたら、100件以外の件について何件か報告するかもしれない。

 さて、11回の検討をふまえて、つくづく感じたのは、学び舎と育鵬社に対しては、文科省は本当に甘い検定をしているなということだ。とはいっても、育鵬社に対する検定は不当に甘いというものではなさそうだ。対して、学び舎に対しては、検定意見を付けないとおかしいところに付けていないケースが目につく。学び舎に対しては、本当に不当に甘い検定を行っているなと感じた。

 特に学び舎及び育鵬社と対比したとき、本当に自由社はイチャモンを付けられどうしだったという感じがある。結局、文科省の頭の中では、学び舎・育鵬社――東書など5社――自由社の三段階の序列があるのではないか。端的に言えば、学び舎と育鵬社は絶対に通せ、自由社は絶対に落とせ、という方針で検定を行ったのであろうと推測できるのである。

    転載自由



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