令和元年度検定は自由社潰しが目的

 文科省ホームページに教科用図書検定調査審議会の公民小委員会や第2部会の議事録が載ったと聞いたので、のぞいてみた。ずいぶん驚いた。二点のことを報告しておきたい。

 公民教科書・歴史教科書の検定意見数の割合 

第一は、検定意見数のことである。中学校公民教科書は6社が検定申請して合格したが、6社全体の検定意見数が250件であるのに対し、その過半の129件、51.6%を自由社の『新しい公民教科書』が占めていることだ。ちなみに、『新しい歴史教科書』に対する意見数は、全8社(令和書籍の場合は個別意見がなく全体に対する意見なので比較材料から除いている)の意見数733件のうち405件、55.3%を占めている。自由社の歴史・公民教科書の検定に、教科書調査官や審議会は過半のエネルギーを割いていたことが知られる。

公民教科書検定意見数の割合

帝国書院 12件 4.8%
東京書籍 16件 6.4%
日本文教 26件 10.4%
育鵬社 32件 12.8%
教育出版 35件 14%
自由社 129件 51.6%
    250件

  歴史教科書検定意見数の割合

東京書籍 21件 2.9%
育鵬社 23件 3.1%
日本文教 24件 3.3%
帝国書院 26件 3.5%
教育出版 38件 5.2%
山川出版 52件 7.1%
学び舎 144件 19.6%
自由社 405件 55.3%
   733件

 上記二つの表を作ってみて、私は他のことにも驚いた。何よりも歴史・公民に共通する現象として、育鵬社に対する検定意見数が東京書籍など長年検定合格してきた自虐教科書と同じレベルであることに驚いた。特に歴史に関しては、東書の21件に次ぐ2番目の検定意見数の少なさである。自由社と比べれば、おおよそ20分の1ということになる。

 ということはどういうことか。『新しい歴史教科書』の検定不合格や『新しい公民教科書』に対する過酷な検定は、単なる「保守的」教科書に対する差別ではないということを意味する。「保守」的教科書に対する差別ではなく、自由社に対する差別だということを意味するのである。

 また、学び舎に対する検定意見数が144件と自由社の3分の1程度であることにいたく驚いた。それ以上に、初めて検定を出した山川出版が52件しかつかなかったことにも驚いた。通常初回検定の際には全面的に新しい記述をしなければならないから、検定意見が多くなるものだが、山川の検定意見は教育出版より3分の1程度しか多くないのである。高校教科書で慣れているのも一因かもしれないが、それだけでは納得できない。何とも不思議な現象である。

 公民小委員会の概観から 

  第二は、審議時間のことだ。公民に関する審議を専門的に行なう公民小委員会から見るならば、公民小委員会は3回行われている。第一回は、令和元年9月30日(月曜日)に開催され、三島委員を委員長に選任し、清水委員を小委員長代理に指名した。そして、自由社以外の5社の審査を行い、5社について合否判定留保の決定をしている。第二回は、10月3日(木曜日)に開催され、自由社一社だけの審査に費やされた。自由社も合否判定留保の決定となる。この後に検定意見書が各社に渡され、各社は修正表づくりの中で、教科書調査官とやり取りをしながら意見の付いた箇所について修正していくわけである。

 第三回は、令和2年2月19日(水曜日)に開催され、6社が提出した修正表について審査され、6社とも検定合格した。ただし、自由社だけには、次のような条件が付いていた。明らかに、自由社の審議のために一番の時間が割かれたようである。

 意見番号6番,74番,94番及び95番による修正箇所については,修正の内容に不適切なものがあるが,なお適切な修正の余地があると認められた。他の箇所については,いずれも検定意見に従った修正が行われたと認められた。
このため,申請者に,当該箇所の修正表の変更を求め,適切に修正が行われたと認められる場合は合格と判定することが適当とした。
(検定意見による修正箇所数合計 129)


ナショナリズムをつぶせ、ヘイト法を守れ

  ちなみに、6番は、単元1「グローバル化が進む世界」の「国家とナショナリズムの復権」という小見出し部分全体についた意見である。この小見出しは「反グローバリズムの動き」と変えられて修正表に載せられて第三回会議の審査にかけられたのだが、その翌日20日には、調査官から自由社に「反グローバリズムの動き」という小見出しを「グローバル化への対応」に変更しろと命令され、これを受け入れて6番が合格となったのである。

  74番は、ヘイト法に関する検定意見である。検定申請本では〈ミニ知識 法の下の平等に反するヘイトスピーチ解消法〉とのタイトルの下、ヘイト法の問題点を簡単に記していた。検定過程で記述内容が少しずつ削除されていったが、タイトルそのものは修正表にそのまま残っていた。恐らく、この第三回会議で、タイトルに対する批判が出たのであろう。20日には、タイトルを〈ミニ知識 ヘイトスピーチ解消法〉にしろと指示され、その通りにしたわけである。参考のため、削除された検定申請本の記述を示しておこう。

そして、国民だけではなく日本居住の外国人にも義務を課すべきである。同じことを、2018年、国連人権理事会は日 本政府に対する勧告の中で指摘した。本法は、明らかに権利の平等に反する法律である。 

 削除された記述、及び〈ヘイトスピーチ解消法〉へのタイトル修正から知られるように、第三回公民小委員会は、ヘイト法という日本人差別法を擁護するために動いていたのである。

 また、「グローバル化への対応」への小見出し変更命令は、ナショナリズムの再興をつぶすことを狙ったものだったのである。

 歴史小委員会の概観から
 
  少し横道にそれたが、次に歴史に関する審議を専門的に行なう歴史小委員会についてみよう。第1回は、令和元年9月19日(木曜日)に開催され、令和書籍の不合格が決定し、自由社の100頁まで(古代から中世)審査された。第2回は、9月27日(金曜日)に開催され、自由社の残り頁を審査し、検定審査不合格を決定した。第3回は10月4日(金曜日)に開催され、学び舎と育鵬社の審査を行い、ともに合否留保との判定であった。第4回は10月10日(木曜日)に開催され、教育出版等5社の審査を行い、合否留保の判定を行った。

 そして第5回は12月16日(月曜日)に開催され、自由社からの反論を審査し、全ての反論について,認めないという決定を行っている。
 最後の第6回は令和2年2月7日(金曜日)に開催され、教育出版など7社の審査が行われ、7社とも検定合格と決定した。
 全6回のうち3回までが自由社の審査に費やされていることに注目されたい。

 今回の検定は、自由社差別である

 以上から今回の検定の第一の目的は、自由社と「新しい歴史教科書をつくる会」をつぶすことであったことが知られよう。

 また、これと劣らない大きな第二の目的は、従軍慰安婦を記した山川出版をスタンダードに持っていき、学び舎にその補佐をさせるという体制を作ることであろう。育鵬社の検定意見数の少なさから見てとれるのは、その体制を「左」から学び舎に補佐させるとともに、「右」から育鵬社に補佐させるという構想なのであろう。この構想を実現することで、中韓の御機嫌を取ろうということなのであろう。いずれにせよ、自由社と「つくる会」だけが反体制、学び舎も育鵬社も東書など5社も体制内ということであろう。

 第二の目的はともかく、第一の目的を確認するならば、今回の『新しい歴史教科書』検定不合格は、著しく不公正かつ不当な処分だと断言できよう。また、『新しい公民教科書』に対する過酷な検定も不当検定だと言えよう。


 自由社差別、「つくる会」差別に対しては、いわゆる保守派であろうと、左派リベラルであろうと、黙っていてはいけないであろう。でなけれは、今度は所謂保守派も左派リベラルも一つずつ、つぶされていくだろう。何しろ、今回の差別検定は、余りにも恣意的な検定であり、不合格にした当人たちも、不合格理由の正当性を信ずることができないのだから。


  転載自由




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