「つくる会」、北海道地図書き換え検定の取り消しを求める意見書を提出

 本日、5月10日、新しい歴史教科書をつくる会は、小学校社会科6年教科書において北海道地図を赤から白にか塗り替えさせた検定の取り消しを求める意見書を文科省に提出した。1カ月以内の回答を求めた。

  以下、「つくる会」FAX通信から転載する。
 
 
    「検定意見」の取り消しを求める意見書を提出
 
   小学校社会の教科書検定で北海道以北を「領土外」扱い

   文部科学大臣に1カ月以内の回答を要望



  新しい歴史教科書をつくる会は、4月に発表された小学校社会の検​定結果の公表を受け、その検定に重大な瑕疵があるとして、5月1​0日、該当する「検定意見」の取り消しを求めた意見書を文部科学​大臣に提出しました。また、1カ月以内に本件の回答を求めました​。その後、文科省記者クラブで記者会見を行いました。

  申し入れならびに会見には、高池勝彦会長と石原隆夫、岡野俊昭、​皿木喜久、藤岡信勝の4副会長、越後俊太郎事務局長が出席して行​われました。

  今回の検定意見は、学習指導要領に反するばかりか、日本の領土問​題にも今後、深刻な影響を与えかねません。当会は今後の文科省の​対応を引き続き注視していきます。

  文部科学大臣に提出した意見書は以下の通りです。

 


小学校社会の教科書検定で北海道以北を「領土外」扱いした検定意見の取り消しを求めます



 文部科学大臣 柴山昌彦殿

                              令和元年5月10日

                          新しい歴史教科書をつくる会

      会長 髙池勝彦



 日頃の文部科学行政へのご尽力に感謝の意を表します。

 さて、去る3月下旬、令和2年度以降に使用される小学校教科書の検定結果が公表されました。​この検定につきまして、私どもは重大な瑕疵があったと考えますの​で、以下のとおり問題の所在を明らかにした当会の見解を表明させ​ていただきます。



 (1)検定に提出したA社の6年生社会の教科書で、江戸時代初期の対外貿易を示す図とし​て日本列島全体を赤く塗った地図を掲載しました。これは日本の領​土を示したというより、東アジア全域に広がる地図のなかで、単に​日本の位置を際立たせて見やすくするために赤色に塗ったものであ​ると推定される図です。

 ところが、これについて、「北海道、千島、樺太(からふと)の塗​色で、児童が誤解する恐れのある図」であるとの検定意見が付けら​れました。そのため、A社は北海道・北方領土の赤塗りを全て消し、白地に修正して検定に​合格しました。検定合格した地図を見ると、赤い部分には日本と書​かれ、他方、北海道は白地ですから、小学生が江戸時代には北海道​全域が日本ではなかったと「誤解」するものになっています。

 4月16日、柴山昌彦文部科学大臣は記者会見で、この検定意見に​ふれ、「地図は現在の日本の領土を示すものではなく、江戸時代初​期の江戸幕府の支配領域をあらわしたもの」であると釈明されまし​た。これによって大臣は、江戸時代には北海道全域は日本の支配下​になかった、つまり日本ではなかったと述べたことになります。



 (2)ところが、北海道庁作成のパンフレットは、「北海道及び赤れんが​庁舎のあゆみ」と題して次のような年表を掲載しています。

 <659 斉明4年 阿部比羅夫、蝦夷遠征、翌年後方羊蹄(しりべし)に郡領を置く。​

  1205 元久2  津軽の安東氏、蝦夷の代官となる。

  1514 永正11  蠣崎氏(のちの松前氏)、安東氏より蝦夷を預かる。

  1593 文禄2  蠣崎氏、豊臣秀吉より蝦夷の支配者として公認される。

  (以下、略)>

 北海道庁によれば、すでに7世紀から日本国家の支配が北海道に及​んでいたことになります。

 次に、内閣府のホームページを開いてみますと、「日本人による開​拓の歴史」と題するパートに次のように書かれています。

 <1635年(寛永12年)、北海道を支配していた松前藩は、北海道全島及び千島、樺太​を含む蝦夷(えぞ)地方の調査を行いました。1644年(正保元年)の幕命により諸藩から提出された国絵図に基づいて​、幕府が作成した日本総図(いわゆる「正保御国絵図」)には、「​くなしり、えとろほ、うるふ」などの島名がはっきり記載されてい​ます。>

 内閣府のホームページは日本国家の立場を表明したものですが、第​1に、幕府に臣従していた松前藩は江戸時代初期には北海道を支配し​ていたこと、第2に、国後、択捉についても領有のための第一歩となる調査を1635年にすでに行っていたこと、の2点において、北海道全域を江戸幕府の支配領域ではなかったという​認識を前提にした柴山文科大臣の説明とは鋭く矛盾するものです。​

 内閣府のホームページに表現された日本国家の立場からすれば、少​なくとも北海道のところは赤く塗らなければなりません。北海道全​域の地図を、赤から白へと塗り替えさせた検定意見は、まさしく、​「北海道以北を『領土外』扱い」(産経新聞4月14日)した不当な検定意見と言わざるを得ません。



 (3)小学校学習指導要領・社会の第5学年「内容の取扱い(1)」には次のように書かれています。

 <「領土の範囲」については,竹島や北方領土,尖閣諸島が我が国​の固有の領土であることに触れること>

 ここに書かれているとおり、北方領土は早くから日本人が足を踏み​入れていた「わが国固有の領土」なのです。北方領土どころか北海​道全域をも白地に書きかえさせた今回の検定意見は、この学習指導​要領の趣旨にも明確に反しています。



 (4)柴山文科大臣は先の会見で、「検定審議会の学術的専門的審議の結​果に大臣としてコメントすべきでない」と言われました。検定審議​会の決定をみだりに批判することを差し控える態度は間違っている​とは考えませんが、今回のように十分な根拠があり、誰の眼から見​ても検定意見に明らかな誤りの疑いがある時は、所轄大臣としては​その誤りを認めるか、少なくとも「調査させる」などとして、判断​を保留するのが国民に対して真に責任のある態度ではないでしょう​か。

教科書調査官の職務が過酷と言えるほどの激務であることを私たち​は文科省の検定を受けたわずかな経験からもよく存じております。​完全な人間はいないのですから、教科書調査官といえども時にはう​っかりミスをされることもあるでしょう。それを率直に認めること​が、真に開かれた文部行政の姿であり、国民に対し責任を負う立場​であると考えます。

 残念なことに、柴山文科大臣は先の会見で、内閣府の記述と文科省​の検定意見は「矛盾しない」と根拠なく強弁しつつも、「あとは教​師の(児童に誤解させないような-引用者)指導で対処すればよい​」という趣旨の発言をされています。この発言は裏返して言えば、​教師の指導がなければ子どもは誤解する教科書となっていることを​認めた発言といえます。柴山大臣は今度の検定意見が本当は誤りで​あることをよく認識しておられるのではないかと推察されます。



 (5)以上のことから、柴山文科大臣におかれましては、速やかに上記の​検定意見を撤回するか、少なくとも調査を指示すべきです。そして​、最終的には検定意見を撤回し、採択のための見本本の段階で、日​本全土を赤地とするもとの地図に戻す措置を執るべきです。もし、​大臣が「学術的専門的審議」という言葉を隠れ蓑に民間からの指摘​を握りつぶす態度に出るならば、何のために大臣がおられるのか分​からなくなります。ことは領土問題という、国家の根本に関わる大​問題です。文科省の態度によっては広範な国民の怒りを買うことは​十分に予想されます。状況をよく考察され、賢明なる対処を切に要​望いたします。また、本件につき、1カ月以内(6月10日まで)​の回答を求めます。大臣におかれましては公務ご多忙のところ、誠​に恐れ入りますが、ご対応の程、何卒よろしくお願い申し上げます​。                        
                                                          以上




この記事へのコメント

大藏八郎
2019年06月18日 18:39
教科書の記述に関連して1858年の安政条約(日米修好通商条約)が不平等条約かどうかを調べています。国際法の立場からお答えいただければ幸いです。

教科書では、米国の「領事裁判権」が不平等とされていますが、第6条は「日本人に対し犯罪を犯したアメリカ人は、アメリカの領事裁判所にてアメリカの法律によって裁かれる。アメリカ人に対して犯罪を犯した日本人は、日本の官憲が日本法によって裁く。(ARTICLE VI. Americans committing offenses against Japanese shall be tried in American Consular courts, and, when guilty, shall be punished according to American law. Japanese committing offenses against Americans shall be tried by the Japanese authorities and punished according to Japanese law.)」と規定され、日本に在住する外国人に治外法権を認めたものではなく、「日本人が米国に出かけて行ってアメリカ人に犯罪を犯したとき、日本領事が日本法で裁く」のなら、たとえ「日本人に対し犯罪を犯したアメリカ人がアメリカの領事によって裁かれ、日本の官憲が関与できなくても、逆の場合には、Japanese authoritiesが裁くのですから、平等ではないでしょうか。
小山
2019年06月19日 00:51
大蔵様
 確かに、「日本人が米国に出かけて行ってアメリカ人に犯罪を犯したとき、日本領事が日本法で裁く」という条件が成立すれば、そのように言えますね。そういう読み方があることにハッとしました。ですが、6条には「アメリカの領事裁判所」という言葉がありますから、想定している場所は日本国内だと思います。アメリカにおける裁判のことは想定外だと思います。アメリカにおける裁判は、近代国際法の原則(国家は自己の領域内のことは排他的独占的に処理する)に基づき、被告が日本人であろうと米国の裁判所が処理することになると思われます。ですから、一応、不平等条約だとはいえると思います。ただし、1858年の時点では、日本側は6条を不平等だとは思っていなかったとされます。欧米人などどう裁けばいいか分からないし裁きたくないと思っていたようですし、日本の法律は欧米人には過酷だと思われました。ですから、日本の法秩序の欧米化と引き換えに治外法権が撤廃されるようになっていったわけです。治外法権は1858年の時点ではそれなりに合理性を持っていたと思われます。
大藏八郎
2019年06月21日 11:39
早速のご回答をありがとうございます。仰る通り、条約の適用地は日本限定であることは、明文に無くとも勿論解釈で、彰かと思います。規定にないから日米双方の領土に適用されるという抗弁は無理でしょう。近代法制の整う直前の国際条約として興味深い外交交渉であり、その結果の条約文です。ご意見はとても参考になります。

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