『自衛戦力と交戦権を肯定せよ』の出版

  戦後のタブーに挑戦した

 10月9日、拙著『自衛戦力と交戦権を肯定せよ』(自由社ブックレット)が刊行される。私は、5月の安倍改憲案発表以来、戦時国際法の基礎をふまえて、また「日本国憲法」成立過程史をふまえて、戦力否定と交戦権否認の意味について考え続けてきた。その成果が拙著である。

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  書く中で改めて感じたが、特に交戦権否認問題を考察することは戦後のタブーに触れることだったようだ。江藤淳が昭和55年に交戦権否認問題を提起したにもかかわらず、言論界や政界は完全にスルーした。「日本国憲法」無効論の展開よりもはるかにタブーに触れることであり続けたようだ。
  
  しかし、拙著で展開したことは、国際標準からすれば、保守か左翼かリベラルかといった立場とは無縁の事柄である。それ以前の事柄である。諸外国の政界・軍事、学問の世界では、どの立場であれ、当然に支持できることを書いたと思われる。国家を破壊しようと考えている者でない限り、当然に支持すべき当たり前のことを書いたつもりである。私の書いたことが、日本の政界や学問・思想界の常識にならない限り、日本の生き残りは極めて難しいであろう。

  拙著の問題意識を知ってもらうため、以下に、「はじめに」の部分を転載することにする。第9条の問題、戦力否定と交戦権否認の問題について関心のある方は、是非、拙著を読んでいただきたい。

 
  はじめに

 本年、平成二十九(二〇一七)年五月三日、安倍晋三首相は、全く新しい思考による「日本国憲法」改正構想を発表した。安倍改憲構想が実現していくとするならば、平成三十(二〇一八)年に国会による改正発議と国民投票があり、二〇一九年に公布、東京オリンピックの開催される二〇二〇年に施行という順序となりそうである。
 安倍改憲構想の発表は驚きを持って迎えられたが、筆者は、この構想に驚くとともに、大きな落胆を覚えた。何と、安倍首相は、第九条第一項と第二項をそのまま維持し、第三項で自衛隊を明記する案を発表した。この案が現実のものになれば、自衛隊は、「日本国憲法」上に根拠を有することになるが、独立国の軍隊ではなく、属国日本の自衛力又は実力部隊として位置づけられることになる。「日本国憲法」第九条第一項と第二項は、次のように記されている。

第九条第一項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


 第一項と第二項に対するこれまでの政府解釈を前提に考えると、自衛隊は、戦力でもなく、当然に軍隊ではない組織として正式に定式化されることになる。第一項第二項に手を付けないのであるから、恐らく、交戦権も持たないと正式に定式化されるのであろう。

 こんな「憲法」改正案が通れば、日本は二度と立ち上がれなくなるのではないか。憲法改正は何のために行うのか。外国から侵略されない独立国日本を作ることではなかったのか。これでは、アメリが衰退していけば、いや衰退しなくても、必然的に中国に占領される事態を招来するのではないか。筆者が落胆した所以である。

 というような疑問を感じた筆者は、第九条をそのまま護持するということはどういう意味か、考え続けた。その中で一番気になったのが交戦権を否認するということの意味であった。いろいろ調べてみたが、驚いたことに、交戦権否認問題は抽象的に考察されてきたことはあるが、具体的に考察されたことはないようであった。自衛隊の内部で本当の専門家が私的に考察してきたかもしれないが、大っぴらに考察されたことはないようである。どうも、戦後日本では、交戦権否認問題の論及はタブーであり続けたようだ。「日本国憲法」無効論が前世紀までタブーであり続けたのと同じ傾向である。

  そこで、交戦権否認問題を中心に第九条護持の意味について、いろいろな文献を読みながら考え続けた。その成果が本書である。本書では、第一章で自衛戦力の否定と交戦権否認の意味について検討し、第二章で自衛戦力と交戦権を肯定するための方策について記した。本書を著す中で戦慄せざるを得なかったのが、交戦権否認の意味であった。国際法では認められる交戦権を国内法で否認することの怖ろしさは、総理大臣及び防衛省関係者や国会議員だけではなく、全国民が知っておいた方がよい問題である。多くの方が本書を一読されるようにお願いするものである。

   転載自由


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この記事へのコメント

カンパニュラ
2017年10月16日 23:36
御著書を拝読致しました。
91ページにございます、ⅰからⅳのうち、希望の党、公明党はⅱ、自民党はⅳで、ⅰとⅲの声は、どこからも聞こえてきません。
この国を諦めたくないのですが、私の様な一介の者に、何ができますでしょうか。
小山
2017年10月17日 09:45
カンパニュラ様
 拙著を読んでいただき、ありがとうございます。難しいご質問ですが、自衛隊を軍隊と位置付けていない怖ろしさ、交戦権否認の恐ろしさについて、周りの人に、議員などに知り合いが居れば彼らに説いていくことだと思います。中国軍に捕らえられたとき自衛隊員が捕虜扱いされない危険性に対してさえ、政府は楽観的です。また交戦権はなくても何とかなるさ、という根拠のない楽観が日本の「保守派」にはあるようです。交戦権がないということはどういうことか、専門家も含めて何も考えてこなかったからです。ですから、交戦権否認の怖ろしさについて、一から説いていくことからしか始まらないと思います。抽象的にしか言えませんが、以上のように思います。
カンパニュラ
2017年10月17日 21:47
御返信を頂き有難く存じます。
既に、ある党(私の嫌いな党)の政調会へ電話を致し、交戦権否認の恐ろしさについてお話し致したのですが、私の説明が下手でしたためでしょう、その党のマニュフェストを棒読みされただけで、大変不愉快な思いを致しました。
気を取り直しまして、今度は地元議員に、先生の御著書を紹介致したのでございます。
その後、先生から御返信を頂き、めげずに行動を致す勇気が更に湧いてまいりました。頑張ります。
小山
2017年10月18日 00:50
カンパニュラ様
 議員の方に拙著を紹介していただき、ありがとうございます。交戦権問題は何十年も自衛隊内部でも目をつぶって見ないようにしてきた問題ですから、なかなか分かってもらえないかもしれません。ですが、説き続けていけば、理解が広がっていくと思います。行動に移していただいてありがとうございます。

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