「改憲勢力3分の2」の嘘(山際澄夫、月刊HANADA2016年9月号) -補、交戦権問題を議論せよ

  9月12日、自民党憲法改正推進本部全体会合開催

 9月12日、自民党憲法改正推進本部の全体会合が開かれた。新聞報道によれば、「日本国憲法」第九条について議論されたようだが、安倍改憲案(第九条第一項と第二項を護持し、第三項で自衛隊を明記する案=加憲案)に対する賛成が少し多数派だが、石破茂議員を中心とする反対意見も根強かったようである。賛成派の論拠は、公明党等の賛成を得て3分の2を得るには安倍案しかない、改憲派が3分の2を占めている今が改憲のチャンスというものである。

 「改憲勢力3分の2」の嘘(山際澄夫)

 しかし、そもそも、公明党は改憲派であろうか。公明党を改憲派と捉えてしまうところから、全てはおかしくなったのではないか。たまたま、1年前の2016年9月号の月刊HANADAを見ていたら、山際澄夫氏の《「改憲勢力3分の2」の嘘》という記事が目に入った。氏は、昨年の参院選の結果について、次のように述べている。

 参院選挙の結果を、メディアは〈改憲三分の二超 発議可能に〉(産経新聞)、〈改憲四党 三分のに迫る勢い〉(朝日新聞)などと大きく報じたが、私は国民は賢い選択をしたと思っただけで、胸の高鳴りを覚えることはなかった。この勝利が憲法改正論議を加速させることになるとは必ずしも思えなかったからだ。
 ……民進党も前回選挙に較べれば善戦し、……有田芳生氏、社民党の福島瑞穂氏らはしっかり当選、沖縄でも普天間の辺野古移設反対派の元宜野湾市長、伊波洋一氏が現職閣僚を破って議席を確保した。対照的に、心配していた日本のこころを大切にする党が一議席も取れなかったのにも失望した。

 そもそも各メディアがいう三分の二が曲者だと思う。これには当然のことながら、公明党が入っている。
 だが、公明党は改憲勢力と言えるのだろうか。……もともと公明党は、改憲ならぬ加憲を唱えているが、憲法九条は擁護で一貫している

 集団的自衛権の行使が限定的となり、自衛隊による領域警備が実現しなかったのも公明党の抵抗ゆえであると聞いている。

 そんなことなど承知のはずのメディアが最後まで公明党を改憲勢力として扱ったのは、民進党がそうしたように、三分の二を強調することで国民の警戒心をよびさまし、与党勢力に打撃を与えるためだったのではないか、と私は疑っている。

 
 ここに書かれているように、公明党が改憲勢力だというのはメディアが作り出した嘘である。この嘘をじょじょに信じ込んでいった所謂保守派は、公明党の賛成を得られるような「日本国憲法」改正案を出すことが改憲への第一歩だと思うようになった。その結果が、安倍改憲構想なのである。

  〈むしろ「戦後レジームの完成」〉(浜崎洋介) 

しかし、本ブログで訴えてきたように、そもそも安倍改憲案は、改憲と言えるものなのか。九条第二項を残す安倍案は、正式に、日本を永久属国と化し、滅亡させていく改悪案ではないか。言ってみれば、戦後レジームの完成形ではないか。というようなことを考えている時に、文藝春秋2017年9月号の細谷雄一、浜崎洋介、西田亮介「九条加憲案はひどすぎる」という座談会記録を読んだ。その中で浜崎氏は次のように述べている。

 「戦後レジームの脱却」と安倍首相は言いますが、これによって「戦力不保持」を憲法で半永久的に確定することになり、「脱却」どころか、むしろこれで「戦後レジーム」は完成します。これでは、安倍首相に期待していた保守層も見限るしかない。

 浜崎氏の言うとおりだが、それにしても、何故に、改憲の一丁目一番地だった第九条第二項削除案を、こんなに簡単に捨て去れるのであろうか。

 安倍真理教からの脱却を

 私は、二つの要因があると思う。

 とりあえず、大きな要因なのが、安倍首相のやることには間違いがない、あるいは妙なことをやるとしても何らかの深謀遠慮があるのではないか、他に代わるべき首相がいないのだから付いていくしかないではないか、といった安倍信仰である。いや、安倍真理教と言えるところまで来ている。本来、真っ先に反対すべき所謂保守派のうち7割程度が賛成していると思われるからである。所謂保守派の大多数は、ヘイト法の時も、民進党の案よりはましだとか言って、全く反対しなかった。その結果、帰化人を含む日本人は、この日本の中で、正式に下層国民又は民族と位置づけられてしまったのである。

 本当に、日本の所謂保守派というものは、ハーメルンの笛吹男についていくネズミの集団である。そのように見えてしまうのは私だけではあるまい。安倍首相を正道に戻すためにも、安倍改憲案に対する批判が必要であると言っておこう。

 安倍首相のやることは何でも正しいと考える安倍真理教から脱しない限り、既成保守派は、「戦後レジーム」完成に手を貸すだけの存在と化していくしかないであろう。既に半分以上そうなっているけれども。

 保守派よ、お花畑世界観から脱却せよ 

もう一つの要因は、交戦権放棄の怖ろしさに対する無知である。5月以来、交戦権否認問題について考え続けてきたが、これまで、この問題を論ずることはタブーだったようだ。いろいろと探したが、この問題を具体的に考察した論考は見付からなかった。ある意味、「日本国憲法」無効論の議論以上にタブーであり続けたようだ。つまり、交戦権否認問題について何も知らないから、交戦権が無くても何とかなると考えしまうのであろう。

 交戦権問題を考察する中で愕然としたことがある。それは、所謂保守派も、左翼リベラルと同じく、お花畑世界観の中で生きていることに気付いたことだ。一番驚かされたのが、戦争は違法化されているし、国連憲章の敵国条項も死文化されているから、交戦権の問題は議論する必要がないと考えている人が相当多数に及ぶことである。
 
 何という、お花畑! 

 戦争は違法化されているという学説が有力なことは知っているが、戦争は決して違法化されていない。それに戦争は一般的に違法化されているとしても、敵国条項は廃止されておらず、今も有効であると捉えられるから、日本に対する戦争は違法化されていないのである。にもかかわらず、戦争は違法化されているから交戦権問題など考える必要はないと考える所謂保守派とは、左翼リベラルと同じような、お目出たい世界観を持っていると言えよう。

 さらに言えば、違法化されているからといって、戦争が起きないわけではない。戦争が起きてしまえば、その場合には交戦国が持つ諸権利は何かという問題、それらの諸権利を持たなければどうなるかという問題が浮上する。それゆえ、これらの問題について議論しておく必要があるのである。

 交戦権否認の意味について議論を

 もう一度、強く言おう。交戦権否認の意味について広く議論を巻き起こしていただきたい。

 
  転載自由



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この記事へのコメント

2017年09月14日 22:18
言いたいことを言ってくれた。改正ではなく加筆。このタイミングを逃せば再び改正への道は遠のく。

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