育鵬社の出鱈目証拠乙45号の作り方(6)冷戦開始と朝鮮戦争・独立回復

 「育鵬社の出鱈目証拠乙45号の作り方」のシリーズの最後に、「43 冷戦開始」と「44 朝鮮戦争・独立回復」のケースを見ておこう。この二つは、扶桑社版では単元79【占領政策の転換と独立の回復】の全体に当たる部分であり、育鵬社版では単元78【朝鮮戦争と日本の独立回復】の全体に当たる部分である。要するに、育鵬社は、扶桑社版の一単元全体を盗作したのである。単元全てを盗作しても著作権侵害とはされなかったのだから、真面目な執筆者には、何とも恐ろしい判決が出たものである。逆に言えば、手抜き執筆者には涎の出そうな判決が出たものである。

 「33 満州事変」のケース

 さて、43のケースでも、44のケースでも、乙45号証は複数単元から文章をかき集めた例であふれている。複数単元からのかき集めという点では、「33 満州事変」のケースも目立っている。平成8年版の教育出版、大阪書籍、日本書籍、日本文教出版、清水書院の5社と平成13年版の教育出版、日本文教出版の2社は、別々の単元の文章をよせ集めたものである。このような教科書を見るとき、1単元のなかにまとめた扶桑社の個性が一定程度浮かび上がってくる。

 また、満州事変以降の時期の記述について検討する時、平成17年版日本書籍新社を削除した乙45号証の出鱈目性がより鮮明になる。前にも述べたように、平成17年版において、扶桑社版と最も激しく対立したのが日本書籍新社である。互いに相手方を意識し、互いに相手を一種の反面教師として記述を行っていた。日本書籍新社は、第5章4節「日本の中国侵略」という節見出し、単元【15年にわたる侵略戦争がはじまる】という単元見出しの下に満州事変について記している。満州事変を侵略戦争と見る歴史認識、表現の視点が、これらの節見出しや単元名に現れているのである。ところが、乙45号証は、この教科書を隠してしまった。扶桑社版の個性を目立たないようにする狙いからであろう。

 「43 冷戦開始」のケース 

「33 満州事変」のケースはこれぐらいにして、43のケースから見ていこう。平成8年版から見ると、大阪書籍の場合は、節さえも異なる3つの単元からバラバラに抜き書きした文章をかき集めている。ここまでひどくなくても、東京書籍、帝国書院、日本書籍、日本文教出版の4社の場合は、別々の二単元から文章をかき集めている。

 13年版に目を移すと、大阪書籍と日本書籍の場合は、節さえも異なる二つの単元から抜き書きしたものである。17年版でも、大阪書籍の場合は別々の二単元から文章が寄せ集められている。このような教科書を見るとき、国際連合の成立から冷戦開始に至るまでの過程を一つの単元の中にまとめた扶桑社版の一定の個性が浮かび上がってくる。

 「43 冷戦開始」のケースでは、文章のえげつない削除はほとんど存在しないが、それでも、平成13年版の日本文教出版の「上の写真は、何の会議のようすだろう。」という個性的な出だしが削除されている。この削除は、教科書の表現はありふれたものであるという被告側の主張に合わないから行われたものであろう。

「44 朝鮮戦争・独立回復」のケース――18社中15社が複数単元からの寄せ集め

 次いで「44 朝鮮戦争・独立回復」のケースを見ることにする。このケースでは、複数単元にわたる文章を(時には節さえも異なる)、多くの中略部分を交えて引用しているケースが目立つ。甚だしいのは平成8年版の教育出版の場合であるが、節も違う3単元にわたる文章を寄せ集めて掲載している。

 南北朝鮮の成立から朝鮮戦争、独立と国連加盟までの過程を一単元の中にまとめたのは、扶桑社以外に平成8年版の日本文教出版、清水書院、平成13年版の帝国書院の3社だけである。それ以外の延べ15社は、全て複数の単元から文章を集めている。扶桑社は、単元構成だけをとっても個性的なのである。

 なお、44のケースでは、文章の省略部分が多いのが気になる。やたらに《中略》とされた部分が出てくるが、平成13年版の日本書籍では、「占領政策の転換」の小見出しの下に書かれている「このため、それまでのきびしい賠償計画はとりやめとなり、独占禁止法の改正によって、大企業の活動に対する制限もゆるやかになった。」という、左翼的で個性的な記述が削除されている。ともかく、被告は、個性的な記述を出来るだけ隠す形で乙45号証を作っているのである。

  ここまで43と44を別々に見てきたが、43と44は、扶桑社版も育鵬社版も共に一単元の中にまとめられている。他社で一単元にまとめているものを調べてみると、平成13年版の帝国書院だけである。つまり、43と44をまとめて考えれば、両者を一単元にまとめただけでも、扶桑社版にはかなりの個性及び創作性があると言えよう。しかも、育鵬社の43と44の文章表現には、扶桑社と酷似したものが多々あった。こういう43と44の部分さえも、東京地裁は、扶桑社の創作性を認めず、育鵬社による著作権侵害を認めなかったのである。

 以上で、一審で決定的な意味をもった乙45号証の出鱈目性に関する報告を終わることとする。このままでは、日本の教科書検定制度と著作権秩序は音を立てて崩れていくことだろう。二審で公正な判断がなされることを期待するものである。

    転載自由






ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック