対育鵬社著作権訴訟・東京地裁不当判決についての声明--教科書制度と著作権制度の破壊をもたらす

  12月19日、原告藤岡信勝氏と「つくる会」は連名で、「対育鵬社著作権訴訟・東京地裁不当判決についての声明」を発表し、「本訴訟に至る経過」という文書を資料として添付した。今回はまず声明文を転載し、次回には「本訴訟に至る経過」も転載することにする。声明文に付した小見出しは私が付したものである。

  
  育鵬社の考え方は、コラムには著作権があるが教科書の中心である単元本文には著作権はないというものだった。だからこそ、扶桑社版を基本にしてリライトし、東京書籍からも文章を流用して教科書をつくり上げていたのである。その育鵬社の主張を判決は認めてしまった。教科書制度と著作権制度を破壊に導く不当判決である。

  とりわけ教科書会社、教科書執筆者等の教科書関係者に忠告する。

  
  今後は盗まれ放題ですよ。折角自分の頭で考えて文章をひねり出して教科書を書いても、他の人がそれを1頁丸ごと流用し、少しだけ文章を変えて他の教科書に掲載しても合法となっていきますよ。ばかばかしくてやってられない時代になりますよ。声を上げなくて良いのですか。




      対育鵬社著作権訴訟・東京地裁不当判決についての声明

                                                       平成26年12月19日
                                                          原告 藤岡信勝
                                                (社)新しい歴史教科書をつくる会


(1)訴えの概要

  本訴訟は、『新しい歴史教科書』の著者である原告藤岡信勝が、被告(株式会社育鵬社及び八木秀次、伊藤隆、屋山太郎の各氏)に対し、著作権を侵害されたとして、平成25年4月15日に東京地方裁判所に損害賠償を求めて提訴したものである。その訴えの概要は、以下の通りである。

  被告・育鵬社が発行し平成24年度使用開始の中学校歴史教科書『新しい日本の歴史』が、原告の執筆にかかる平成18年度使用開始の『改訂版 新しい歴史教科書』(扶桑社)のうち、原告が著作権を有する部分から47箇所にわたり、無断で流用し、原告の著作権を侵害した。

(2)原告の主張--扶桑社版歴史教科書には創作性がある

  原告は、東京地裁の次の判決(平成20年(ワ)第16289号)に依拠して主張を展開した。
【本件教科書(本件書籍)が、中学校用歴史教科書としての使用を予定して作成されたものであることから、その内容は、史実や学説等の学習に役立つものであり、かつ、学習指導要領や検定基準を充足するものであることが求められており、内容や表現方法の選択の幅が広いとはいえないものの、表現の視点、表現すべき事項の選択、表現の順序(論理構成)、具体的表現内容などの点において、創作性がみとめられるというべきである。】

 原告は、この判決に基づき、①表現の視点、➁表現すべき事項の選択、③表現の順序(論理構成)、④具体的表現内容の4点に即して、47箇所の創作性を論証した。(別表参照)

(3)被告扶桑社・育鵬社等の主張--歴史教科書には著作権はない

  被告は、歴史教科書は同一の歴史事実をありふれた言葉で記述したものであり、著作物としての創作性がないから、被告の行為は著作権侵害に当たらない、とする論を展開した。一言でいえば、「歴史教科書には著作権はない」という主張である。

(4)原告の請求棄却の根拠--指導要領等の制約

   判決は、歴史教科書については学習指導要領及び教科書検定基準によって記述内容および記述の方法が具体的に定められ、よって記載できる事項は限定的であるから、著者が主観的には創意工夫を凝らしたというものであっても著者の個性が現れないこともありうるので、表現上の創作性があるとはいえない、として、原告のすべての請求を棄却した。

(5)本判決は、教科書制度と著作権制度への挑戦である

  本判決は歴史教科書には創作性がなく、従って事実上著作権は存在しないという結論に導くもので、極めて不当な判決である。
  第一に、歴史教科書に事実上創作性を認めない判決は歴史教科書執筆者への冒とくであり、教科書の実態にも合わない。
  第二に、この判決は著作権制度そのものへの挑戦というべき内容である。
  私たちは、教科書制度と法秩序を守るためにも控訴して争う決意である。


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この記事へのコメント

憂子(ゆうし)
2014年12月23日 18:13
判決の論理では、極端な話、他社教科書と一言一句違わない教科書を出版しても違法ではないということになりませんか。
学習指導要領や検定基準に準拠するのは他教科も同様ですから、他教科の教科書も同様に著作権は認められないことになるのでしょうか。
全く理解できない判決です。控訴が当然と思います。
小山
2014年12月23日 22:33
憂子様
コメントありがとうございます。
他教科の場合にもあてはまるのはその通りです。裁判所は、指導要領が簡単なものであり、それほど書くことに制約を設けていないという事実を知らないのだと思います。教科書だから書くことに多様性がないという、かつてな思い込みがあるのだと思います。特に歴史教科書の場合は、本当に多様です。だからこそ、歴史教科書問題が起きるのです。
 論理的には、一字一句同じものでも違法ではないということになりかねないのは確かです。ただ、一方でデッドコピーの場合は図表や年表などでさえも許されないとすることは定説ですから、そういうデッドコピーの教科書はさすがに今回の裁判官でも違法だと認定するでしょう。しかし、例えば帝国書院の教科書を基にして、全くおなじ単元構成で、全く同じ事実を選択して全く同じ順序で記述し、文章だけところどころ修正して検定申請しても許されることになっていくでしょう。検定を通った、例えば帝国書院の教科書を盗めば、楽に検定も通過しますし、目立つところで魅力的な教科書にすれば、帝国書院を出し抜くことも可能です。こういう教科書は簡単に作れますから、費用もかかりません。教科書検定制度も著作権制度も崩壊していくでしょう。その意味でも、平成18年以降の八木氏はとんでもない不始末をしでかし続けているのだと私は捉えています。

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