八木秀次氏よ、これのどこが盗作ではないのか、10月27日改訂増補

  全てが寒い

 10月22日、安倍首相は、またも村山談話継承を表明した。安倍首相は、結局、戦後レジーム脱却などできないまま終わるだろう。安倍氏には、日本が滅亡するまでの時間稼ぎを出来るだけしてもらうことしか期待できないだろう。ただし、この時間稼ぎは極めて大事なことである。日本が生き残っていく道は、安倍氏に時間稼ぎをしてもらっている間に、国民意識の変化を実現し、まともな政治家を二桁台に載せ、日本をリードする識見と度胸のある指導者を生み出すことであろう。
 
  このところ、暑い日が続いていたのが嘘のように寒い日が続いている。寒さのせいか、体調が悪く、気分も良くない。いや、寒さのせいではない。うすら寒い日本の思想状況、政治状況のせいであろう。

  八木秀次氏の放言 

安倍氏の体たらくとどの程度関係しているのか分からないが、最近、八木秀次氏は、渡部昇一氏、潮匡人氏との鼎談本を著した。『日本を嵌める人びと』である。この中で、八木氏は、「迷走する保守論壇人たち」という小見出しの下、育鵬社盗作問題等についてとんでもない発言をしている。その部分を引用しておこう。

渡部 教科書問題では、八木さんが訴えられていますね。

八木 a私を含め、屋山太郎、伊藤隆の両先生と育鵬社の社長の四名が「著作権侵害」として藤岡信勝氏(拓殖大学客員教授)から訴えられました。まあ、自分たちのつくった教科書がほぼゼロ採択だったことからくる嫌がらせというか、男の嫉妬ですから裁判の結果は見えています(笑)。……b昨年は月刊誌で私をスパイ呼ばわりしました。私が中国共産党の指示で「新しい歴史教科書をつくる会」を分裂させたというのです。そんなバカな(一同、笑)。……

潮 ……保守陣営のなかで内部対立が生まれることによって、いったい誰が得をしているのかを考えるべきでしょう。

八木 そう、結果的に「日本を嵌める人々」に塩を送っている。戦う相手を間違っています。


 
 八木氏が述べているのは、aが育鵬社歴史教科書盗作事件のこと、bが中国人スパイ李春光事件のことである。李春光事件の件から触れれば、藤岡氏は、八木氏のことをスパイと言った事はない。スパイに籠絡されて、中国の望む方向(例えば、検定申請段階から「南京事件」を肯定する記述をしていた)に教科書運動を変化させたと述べているだけである。きちんと、藤岡氏が昨年著した論文を読み直していただきたい。

  藤岡信勝「歴史教科書『検定』に関与した中国人スパイ李春光」--『WiLL』平成24年10月号掲載
     http://tamatsunemi.at.webry.info/201212/article_8.html          

  藤岡信勝「『つくる会』分裂を仕掛けた中国人スパイ」―――【WiLL・2012年8月号掲載】
     http://tamatsunemi.at.webry.info/201208/article_3.html


  李春光事件云々の件はこれぐらいにしておこう。私が問題にしたいのは、育鵬社歴史教科書盗作事件のことを述べたaの記述である。裁判が終わるまでは当ブログでも基本的に盗作事件には触れないでおくつもりであったが、ここまで出鱈目なことを言い放たれては放っておくことはできない。

 知的財産権のルールを守るため 

  著作権侵害は紛うこと無き真実である。その点は後で論じていくとして、「自分たちのつくった教科書がほぼゼロ採択だったことからくる嫌がらせというか、男の嫉妬ですから裁判の結果は見えています」とは、何たる物言いであろうか。「嫌がらせ」とか「男の嫉妬」とか、見当違いの低次元なことを述べているのには驚かされた。

   一体、八重山事件の時、育鵬社の公民教科書採択という成果を守るために沖縄に乗り込んで先頭で闘ったのは誰だったのか。藤岡氏ではないか。再生機構側の動きは藤岡氏に比べて極めて鈍かったではないか。「つくる会」は、特に藤岡氏は「嫌がらせ」とか「男の嫉妬」とかで動いたりはしない。

  「つくる会」は、日本の著作権秩序を守るために、ひいては中韓に知的財産権をめぐるルールを守らせるように持って行くためにこそ、まずは話し合いに基づく謝罪を求め、話し合いが不調に終わったからこそ裁判に訴えたのである。こういう社会的正義を守るという発想が八木氏の心の中には全く存在しないのであろう。だからこそ、このような低次元の想像しか出来ないのであろう。

 つくる会攻撃をリードした八木氏 

  氏は、「自分たちのつくった教科書がほぼゼロ採択だったことからくる嫌がらせ」と言うが、自由社の教科書を「ほぼゼロ採択」に追い込んだのは誰だったのか。八木氏ら教育再生機構の人達ではなかったか。そのあたりのことに関しては、新しい歴史教科書をつくる会編著『歴史教科書盗作事件の真実』(自由社、2012年)は次のように記している。

  つくる会は上記のように、育鵬社の教科書が採択期間中に決定的なダメージを受けないよう、盗作問題を公表することを封印したのに、日本教育再生機構と教科書改善の会、及び育鵬社は、年表問題を徹底的に利用して、自由社=「つくる会」攻撃を開始した。

  指摘された年表の問題は、「つくる会」側も東京書籍側も全く気付いていなかったことである。この年表問題に気付いたのは、「教科書ネット21」などの左翼側ではなく、日本教育再生機構の陣営だった。そして、左翼陣営を使って年表問題を大問題に仕立て上げたのも、日本教育再生機構であった。(傍線部は引用者、以下同じ)

  日本教育再生機構の理事長・八木秀次氏は、自由社の年表問題を四月ころにすでに掴んでいたといわれている。しかし、同機構はすぐには問題を公表しなかった。早く公表してしまうと「供給本までに直します」という釈明が通って、自由社の採択のダメージにならないと考え、採択戦が山場にさしかかるまで暖めておいたのであろう。

  五月二十六日になって、インターネットで「プロジェクトJ」と名乗る覆面の人物が開設している「正統保守の敵『つくる会』一部首脳を追撃します」というタイトルのブログに、「東京書籍の年表を盗用した自由社版教科書―記述検証〈6〉」という記事が掲載された。このブログは、八木氏と極めて近い関係にある某氏が開設したものであることは公然の秘密である。ブログ名に見られるように、「つくる会」攻撃のためだけに作られたブログである。「フジサンケイグループ育鵬社こそが正統保守教科書です」と一貫して主張しており、事実上、育鵬社=教育再生機構のスポークスマンの役割を果たしているブログである。

  その記事の中で、某氏は「著作権侵害ですから、採択から撤退することをお勧めします。東京書籍と文部科学省には連絡しておきました」と記している。するとすぐ、その翌日には、「新しい歴史教科書をつくる会WATCH」という左翼系のブログに「自由社版教科書が東京書籍の年表を盗用」という記事が掲載された。育鵬社=教育再生機構は、左翼に自由社攻撃のエサを与えたのである。こうして自由社年表問題の口火が切られたのである。

  六月十三日、先に述べたように、「教科書ネット21」が、自由社版の歴史教科書が一部地域で使用されていた横浜市で記者意見を行った。六月十四日、朝日新聞が「つくる会歴史教科書、他社の年表と酷似」という記事を掲載した。

  六月二十二日、横浜市会の自民党議員団の主催で、中学校教科書採択を考える勉強会が開かれ、八木氏が講師として講演した。約百五十人の参加者の前で八木氏は、朝日新聞の記事を配り、五分間にわたって年表問題で自由社攻撃を行った。その後も各地で、自由社教科書へのネガティヴ・キャンペーンを育鵬社=教育再生機構は執拗に繰り返し、自由社・「つくる会」潰しに狂奔した。

  七月二十七日、衆議院文部科学委員会で、日本共産党の宮本議員が自由社の年表問題について質問してこの問題を蒸し返し、八月二日、読売新聞、毎日新聞等が初めて一斉に報道した。自由社が採用されていた横浜市での採択が迫っているなかで、自由社を採択させないための狙い撃ちといえるキャンペーン記事であった。八月二日、「つくる会」はただちに文科省で記者会見を開いて反論したが、こちらの方は各紙とも完全に黙殺して、ただの一行も報道されなかった。八月四日、横浜市は全市域で、自由社にかえて育鵬社の歴史教科書と公民教科書を採択した。
     (48~51頁)


 この部分を熟読していただきたい。潮氏は「保守陣営のなかで内部対立が生まれることによって、いったい誰が得をしているのかを考えるべきでしょう」と述べ、八木氏は「そう、結果的に『日本を嵌める人々』に塩を送っている。戦う相手を間違っています。」と応じているが、これらの言葉は、育鵬社と再生機構、そして何よりも八木氏自身に対して発射されるべきであろう。

 育鵬社の盗作例

 とはいえ、年表問題に関する八木氏の行動は、育鵬社の教科書が盗作をしていなければ、それほど非難されるべきものではない。だが、育鵬社は33単元47箇所の単元本文で、盗作をしていたのである。最後に一つだけ例を挙げておこう。以下に、フェートン号事件・モリソン号事件に関する育鵬社(平成24~27年度版)、扶桑社(平成18~23年度版)、東京書籍(平成18~23年度版)、帝国(平成18~23年度版)の4社の記述を掲げよう。比較していただきたい。

○育鵬社(平成24~27年度版)

単元38「欧米諸国の接近」下、「イギリス・アメリカの接近」の小見出し下、
「18世紀末のヨーロッパでは、フランス革命により共和国となったフランスが勢力を強めオランダを征服しました。イギリスはこの機会にオランダの海外拠点をうばおうとして、東アジアへの動きを活発化させました。
  1808(文化5)年には、イギリスのフェートン号が長崎港に侵入し、オランダ商館員を連れ去り、食料をうばうなどの乱暴をはたらくという事件がおこりました(フェートン号事件)。 
   一方、北太平洋ではアメリカの捕鯨活動がさかんになっていました。これらの船は、わが国に接近して、水や燃料の補給を求めるようになりました。これに対し幕府は、海岸防備をかためるとともに、1825(文政8)年には異国船打払令を出して、鎖国政策を守ろうとしました。
  1837(天保8)年、日本人の漂流民を救助して、わが国に送り届けようとしたアメリカ船モリソン号が、異国船打払令によって砲撃される事件がおきました(モリソン号事件)。これに対し、高野長英や渡辺崋山などの蘭学者は、西洋の強大な軍事力を知って、異国船打払令を批判する本を書いたため、幕府は彼らをきびしく処罰しました(蛮社の獄)。」(122~123頁)

○扶桑社(平成18~23年度版)

単元40「欧米諸国の接近」下、「イギリス・アメリカの接近」の小見出し下、
「19世紀に入ると、イギリスとアメリカの船も、しばしば日本の近海に出没するようになった。1808(文化5)年、イギリスの軍艦フェートン号が長崎港に侵入し、当時対立していたオランダの長崎商館の引き渡しを求め、オランダ人2人をとらえるなどの乱暴をはたらいた(フェートン号事件)。このように、日本はヨーロッパの国際情勢の変化に影響されるようになった。
  いっぽう、北太平洋では、アメリカの捕鯨船の活動がさかんになり、日本の太平洋岸にこれらの船が接近して、水や燃料を求めるようになった。幕府は、海岸防備を固めて鎖国を続ける方針を決め、1825(文政8)年には、異国船打払令を出した。そのため、幕府は、1837(天保8)年、浦賀(神奈川県)に日本の漂流民をとどけにきたアメリカ船モリソン号を砲撃して打ち払った(モリソン号事件)。 
  蘭学者の高野長英や渡辺崋山は、西洋の強大な軍事力を知って、幕府の措置を批判した。しかし、幕府は彼らをきびしく処罰した(蛮社の獄)。」(121頁)

○東京書籍(平成18~23年度版)

第4章第3節単元6「外国船の出現と天保の改革」下、「外国船を打ち払う」の小見出し下、
「18世紀後半からのロシア船の来航に続き、19世紀になると、イギリスやアメリカの船が日本に近づくようになりました。こうした動きを警戒した幕府は、1825(文政8)年、外国船打払令を出しました。このため、漂流民をわたそうとしたアメリカの商船を打ち払うという事件が起こりました。蘭学者の渡辺崋山と高野長英は、外国船の打ち払いを批判する書物を書き、幕府によってきびしい処罰を受けました。」(116頁)

○帝国書院(平成18~23年度版)

第4章第4節単元3「せまりくる外国と広がる改革の波」下、「外国船の接近と幕府の対応」の小見出し下、
「18世紀の終わりごろから、日本の沿岸には外国船がひんぱんに現れるようになり、幕府に通商をせまりました。幕府は、台場(大砲陣地)をつくるなど、海の守りをかため、異国船打払令を出してこれに対応しました。この方針に対し、一部の学者が批判しましたが、幕府はその意見を聞かず、逆に学者たちを弾圧しました。」(128頁)

 
 著作権侵害を認めて謝罪せよ 

  誰が見ても、平成24年度版の育鵬社は、平成18~23年度版の扶桑社と酷似している。そして、平成18~23年度版の東京書籍や帝国書院とは全く似ていない。扶桑社版の文章を盗んだことは明白である。扶桑社版の単元40は藤岡氏らに著作権があるから、育鵬社は藤岡氏らの著作権を侵害しているのである。

  ところで、教科書改善の会代表世話人の屋山太郎氏は、平成21年9月3日 、「中学校教科書採択結果を受けて」という声明を出した。この声明の中で、「歴史教科書については全く新しい記述となり、著作権の問題が生じる恐れはありません。」と述べていた。扶桑社版の単元本文についてほとんど自分たちに著作権が存在しないことを知っていたからこそ、全く新しく記述すると約束していたのである。

  しかし、この約束は破られた。47箇所もの多くの部分で、藤岡氏らの著作権を侵害して、育鵬社版は作成されたのである。当然に、八木氏と伊藤隆氏らは、藤岡氏ら「つくる会」側著者と社会に対して謝罪すべきであろう。

   ダブルスタンダードを止めよ 

  それにしても、八木氏のダブルスタンダードには、驚くべきものがある。上記のように、八木氏は、自由社による東書に対する軽微な著作権侵害を徹底的に攻撃しておきながら、大規模な盗作によって育鵬社歴史教科書をつくりあげていた。しかも、盗作を指摘されてもとぼけて謝罪せず、居直り続けている。このようにあからさまなダブルスタンダードは、いかなる人間でも許されるものではないが、特に言論人には許されるものではない。

  更に言えば、著作権侵害かどうかは、言論人にとって最も神経を使わなければならない問題である。ところが、八木氏は、一貫して何の反論もしなかった。私は手紙の中で氏に対しても何度も著作権侵害の事実を指摘してきたが、氏は一度も反論してこなかった。正面から反論せず、「嫌がらせ」などという低次元の言い方しかできないとは!?

  ともあれ、何度も言ってきたが、日本の言論界は腐っている。八木氏だけではなく、ダブルスタンダードの言動を平気で行う言論人があふれている。また。あっと驚くような著作権侵害の事実もあふれている。日本の言論人は、言動におけるダブルスタンダードを排除していくように心がけるとともに、著作権侵害問題に対する感度を格段にアップさせていく必要があろう。

  最後に付言すれば、私は、日本が滅んでいくのは政治のせいというよりも思想や学問のせいだと思っている。それは、単に反日思想に染まっているということではない。思想や学問の作法自体のレベルを上げていかない限り、思想内容も劣化していくことになろう。例えば、ダブルスタンダードを平気で行う人は、平気で歴史偽造を行うようになる。そして、世論や権力が反日の方向に動けばそれに合わせて、自己の言論も反日の方向に動かしていくことになるからである。

   *なお、最後の二つの小見出し部分は、10月27日に改訂増補した。
    育鵬社盗作事件については、新しい歴史教科書をつくる会編著『歴史教科書盗作事件の真実』(自由社)を参照されたい。



   転載自由
   
   



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 4

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック