育鵬社歴史教科書執筆者への手紙、推薦者への手紙―――――降りられよ、執筆者と推薦者から

   今回は、育鵬社歴史教科書執筆者への手紙と推薦者への手紙を掲載する。趣旨は、執筆者と推薦者から降りるように勧めるものである。彼らの多くは丸ごと盗作のことを知らなかったのであろうが、早目に執筆者や推薦者から名前を降ろさなければ、執筆者の場合は盗作者として、推薦者の場合は盗作加担者として、後世に汚名を残すことになろう。

   今回も、適宜、掲載にあたって、赤や青の色をつけることにする。また、途中の教科書からの引用部分は、保守系知識人その他への手紙と全く同一なので省略した。


      

  ○執筆者への手紙

拝啓
 寒い日が続いておりますが、先生には益々ご清祥のことと存じ上げます。
突然、お手紙を差し上げるご無礼をお許しください。私は戦後の公民教科書や歴史教科書の内容史を研究してきた小山常実という者です。歴史教科書については『歴史教科書の歴史』(草思社)や『歴史教科書が隠してきたもの』(展転社)を著しております。5年前から「つくる会」の理事も務めておりますが、理事の立場からではなく、教科書史研究者として、あるいは言論に係る者として、ご意見をお伺いしたいと思った事がありましてお便りしました。


  昨年春、先生も執筆者あるいは監修者として名前を出されている『新しい日本の歴史』(育鵬社、伊藤隆他著作)が検定合格し、夏には数パーセントの採択率を獲得しました。ところが、8月末以降、平成17年春に検定合格し、23年度まで使用される扶桑社『改訂 新しい歴史教科書』(藤岡信勝代表執筆)と、単元本文で多くの酷似部分が発見されました。4月に一読した時から似すぎているなという感覚はあったのですが、きちんと比較検証する余裕がなく、ようやく時間ができた8月末以降に検討してみて、その酷似ぶりにびっくりしました。20日ほど前に、一応、扶桑社と育鵬社の比較検証を終えたところです。

  その後、平成21年春に検定合格し、23年度まで使用される自由社『新編 新しい歴史教科書』(藤岡信勝代表執筆)を、扶桑社版及び育鵬社版と比較検討してみました。扶桑社版と自由社版の単元本文は、藤岡氏らが著作権を有してる部分についてはほとんど同一であるため当たり前でもありますが、育鵬社の『新しい日本の歴史』は、自由社版とも酷似しておりました。

  その結果、育鵬社の歴史教科書は、明治期以外は、基本的に「つくる会」側著者の原稿をリライトして作ったものであることが分かりました。盗作箇所として指摘できる酷似部分は、全部で50か所弱発見されました。例えば、三社の摂関政治の箇所は、次のように記されています。下線部は、私が引いたものです。

  中略

 なお、簡単に説明させていただきますと、扶桑社版の単元本文(側注を含む)の著作権はほとんど藤岡氏ら「つくる会」側著作者にあります。そこで、藤岡氏らは、東京地裁民事部に提訴し、扶桑社に対して『新しい歴史教科書』の出版等を平成22年3月1日以降しないように求めた(平成20年(ワ)第16289号・書籍出版等差止事件)のですが、翌21年8月25日の判決で、出版差し止めの請求は認められませんでした。理由は、明示的な契約があるわけではないが、平成23年度までの6年間の出版契約が結ばれているというものでした。ですが、その時、同時に以下の事が認められています。
 ①裁判所は、藤岡氏らの主張通り、結合著作物と認めた
 ……通常、教科書は共同著作物とされているようですし、扶桑社はそのように主張しましたが、その作られ方の特殊性から、判決は『新しい歴史教科書』を結合著作物(例えば歌のように、曲と詩で分離して利用することができるもの)と認めました。
②藤岡氏らの著作権を、単元82個のうち75個について認めた。
 ……残りの7個は全て文化史関係ですが、これは教科書改善の会の一員である田中英道先生に著作権があるようです。私が検証しているものは、藤岡氏らが著作権を有している75個の単元本文です。著作者については、重なっているのは岡崎久彦先生ただ一人です。ですが、岡崎先生が扶桑社版の時書いたのはコラムだけだと思われます。単元本文については、誰ひとり著作者が重なっておりません。にもかかわらず、平成17年の扶桑社版及び平成21年の自由社版と酷似した教科書が平成23年に出されてきたのです。
もともと、教科書改善の会は、一から新たに教科書をつくるから著作権侵害の問題は発生しないと述べていました。ところが、単元本文については藤岡氏らが著作権を有している部分までも、扶桑社版をリライトする形で教科書を作っていたのです。今回の調査でそのことが明確になったことをご報告させていただきます。
③コラム29個中23個に、「つくる会」側著者の著作権を認めた

  以上三点の事を、先生は御存知だったでしょうか。奥付に名前を記している多くの先生方は、御存知ないものと思われます。率直なご感想を聞かせていただけないでしょうか。また、どうしたらよいとお考えでしょうか。

  この問題は単なる教科書問題ではないと思いますし、保守言論界の問題でもなく、日本社会全体の問題だと思います。こんな大掛かりな著作権侵害が許されれば、もはや、日本は中国による知的財産権の侵害を批判できなくなります。この問題が日本を破滅させていくように思われてなりません。極めて異常な事態だと考えています。

  異常な事態を正常に戻すために、是非とも、教科書改善の会の中で先生が御尽力されるよう期待します。よろしくお願いいたします。

  多くの先生方は、上記のような事情を知らずに監修者や著作者になられたものと想像いたします。そのような先生方は、是非とも、奥付にある「著作関係者」からお名前を外されるようにお願いします。「著作関係者」としてお名前がある限り、著作権侵害行為の共同責任者として追及されても社会的には逃れられなくなると思います。また、言論史に盗作者として汚名を残すことになっていくと思います。 

  リライトを自ら行われたり、あるいは事情は十分に承知されて積極的に監修者や著作者になられたりされた先生方は、今回の盗作事件の日本社会に与える害毒について深く考察され、日本社会全体と「つくる会」側著者及び自由社に謝罪されるようにお勧めします。そして、育鵬社に対しても謝罪と賠償を働きかけられるようにお願いいたします。

  このままいけば育鵬社歴史教科書は、いつ終わるかだけが問題です。日本語ができれば、扶桑社版、自由社版、育鵬社版の三社を比較検証することは誰でも出来ます。証拠は隠蔽しようがありません。しだいに多くの人たちがこの問題を研究しだしています。保守の世界の中で批判されているうちに、早めに謝罪と賠償を終えて、一から出直されるようにお勧めいたします。それだけが、育鵬社-「改善の会」系の教科書改善運動が生き残る道だと確信します。そして、そのことが、日本が生き残っていく道につながるものだと考えます。
 

                                             敬具

平成24年2月23日
                                          小山常実
育鵬社版著作関係者各位


  なお、30本ほど、育鵬社による著作権侵害問題について以下の拙ブログで書いて居ます。

ブログ名 「日本国憲法」、公民教科書、歴史教科書
URL  http://tamatsunemi.at.webry.info/


私の連絡先は以下の通りです。
省略

  なお、育鵬社の公民教科書は、自前で作られたものであり、丸ごと盗作によって作られた歴史教科書と比べれば素晴らしいものですが、それでも、到底保守の教科書とは言えないものになりました。保守を偽装する教科書です。その点を拙ブログで書いていますので、その記事のコピーも同封させていただきます。ご一読お願いいたします。


       ――――――――――――――――――――

   ○推薦者への手紙 

 拝啓
  まだまだ寒い日が続いておりますが、先生には益々ご清祥のことと存じ上げます。
突然、お手紙を差し上げるご無礼をお許しください。私は戦後の公民教科書や歴史教科書の内容史を研究してきた小山常実という者です。歴史教科書については『歴史教科書の歴史』(草思社)や『歴史教科書が隠してきたもの』(展転社)を著しております。5年前から「つくる会」の理事も務めておりますが、理事の立場からではなく、教科書史研究者として、あるいは言論に係る者として、ご意見をお伺いしたいと思った事がありましてお便りしました。

  昨年春、先生も推薦者としてお名前を出されている『新しい日本の歴史』(育鵬社、伊藤隆他著作)が検定合格し、夏には数パーセントの採択率を獲得しました。ところが、8月末以降に調査してみると、平成17年春に検定合格し、23年度まで使用される扶桑社『改訂 新しい歴史教科書』(藤岡信勝代表執筆)と、単元本文で多くの酷似部分が発見されました。4月に一読した時から似すぎているなという感覚はあったのですが、きちんと比較検証する余裕がなく、ようやく時間ができた8月末以降に検討してみて、その酷似ぶりにびっくりしました。背筋が寒くなるほどの怖ろしさも感じました。20日ほど前に、一応、扶桑社と育鵬社の比較検証を終えたところです。

  その後、平成21年春に検定合格し、23年度まで使用される自由社『新編 新しい歴史教科書』(藤岡信勝代表執筆)を、扶桑社版及び育鵬社版と比較検討してみました。扶桑社版と自由社版の単元本文は、藤岡氏らが著作権を有している部分についてはほとんど同一であるため当たり前でもありますが、育鵬社の『新しい日本の歴史』は、自由社版とも酷似しておりました。
その結果、育鵬社の歴史教科書は、明治期以外は、基本的に「つくる会」側著者の原稿をリライトして作ったものであることが分かりました。扶桑社版と自由社版からの盗作箇所として指摘できる酷似部分は、全部で50か所弱発見されました。例えば、三社の摂関政治の箇所は、次のように記されています。下線部は、私が引いたものです。

  中略

  なお、簡単に説明させていただきますと、扶桑社版の単元本文(側注を含む)の著作権はほとんど藤岡氏ら「つくる会」側著作者にあります。そこで、藤岡氏らは、平成20(2008)年度検定に臨むにあたって、自分たちが著作権を有している部分をそのまま複製乃至翻案(リライト)し、著作権を有していないものについては新たに起稿する形で『新編 新しい歴史教科書』を作成しました。それとともに、同一執筆者の教科書が同時に出るのもおかしな話ですから、東京地裁民事部に提訴し、扶桑社の出版権は平成21年度で消滅するから『新しい歴史教科書』の出版等を平成22年3月1日以降しないように、同社に対して求めました(平成20年(ワ)第16289号・書籍出版等差止事件)。

  しかし、御承知のように、翌21年8月25日の判決で、出版差し止めの請求は認められませんでした。理由は、明示的な契約があるわけではないが、平成23年度までの6年間の出版契約が結ばれているというものでした。ですが、その時、同時に以下の事が認められています。

 ①裁判所は、藤岡氏らの主張通り、結合著作物と認めた。
 ……通常、教科書は共同著作物(そして共有著作権が成立する)とされているようですし、扶桑社はそのように主張しましたが、その作られ方の特殊性から、判決は『新しい歴史教科書』を結合著作物(例えば歌のように、曲と詩で分離して利用することができるもの)と認めました。

②藤岡氏らの著作権を、単元82個のうち75個について認めた。
 ……残りの7個は全て文化史関係ですが、これは教科書改善の会の一員である田中英道先生に著作権があるようです。私が検証しているものは、藤岡氏らが著作権を有している75個の単元本文です。著作者については、重なっているのは岡崎久彦先生ただ一人です。ですが、岡崎先生が扶桑社版の時書かれたのはコラムだけだと思われます。単元本文については、誰ひとり著作者が重なっておりません。にもかかわらず、平成17年の扶桑社版及び平成21年の自由社版と酷似した教科書が平成23年に出されてきたのです。
もともと、育鵬社-教科書改善の会は、自由社-「つくる会」がそうしたように、自分たちが著作権を有していない部分については一から起稿する形で教科書を作る責務がありました。そして、一から新たに教科書をつくるから著作権侵害の問題は発生しないと述べていました。ところが、単元本文については藤岡氏らが著作権を有している部分までも、扶桑社版及び自由社版をリライトする形で教科書を作ってしまったのです。今回の調査でそのことが明確になったことをご報告させていただきます。

③コラム29個中23個に、「つくる会」側著者の著作権を認めた
 ……コラムについては、育鵬社は、基本的に自前で書いて居ますので、著作権侵害の問題は発生しないようです。

  以上三点の事を、先生は御存知だったでしょうか。率直なご感想を聞かせていただけないでしょうか。
  この問題は単なる教科書問題ではないと思いますし、保守言論界の問題でもなく、日本社会全体の問題だと思います。こんな大掛かりな著作権侵害は、私は聞いたことがありません。このようなことが許されれば、もはや、日本は中国や韓国による知的財産権の侵害を批判できなくなります。この問題が日本を破滅させていくように思われてなりません。極めて異常な事態だと考えています。

  異常な事態を正常に戻すために、是非とも、教科書改善の会の中で先生が御尽力されるよう期待します。よろしくお願いいたします。

   多くの先生方は、上記のような事情を知らずに推薦者になられたものと想像いたします。そのような先生方は、是非とも、推薦者から降りられるようにお願いします。著作権等侵害罪は、親告罪ではありますが、10年以下の懲役に該当する大罪です。この罪は故意の場合に成立しますが、育鵬社編集部や執筆者の中心部分に当てはまる罪だと考えられます。彼らが故意を否定することはできないからです。そのような大罪を育鵬社らが犯しているという事を考慮され、推薦者から降りられるようにお願いいたします。

  このままいけば育鵬社歴史教科書は、いつ終わるかだけが問題です。日本語ができれば、扶桑社版、自由社版、育鵬社版の三社を比較検証することは誰でも出来ます。証拠は隠蔽しようがありません。しだいに多くの人たちがこの問題を研究しだしています。保守の世界の中で批判されているうちに、早めに育鵬社と執筆者が謝罪と賠償を終えて、この問題が解決することを願っております。先生に育鵬社らに謝罪するように働きかけることをしていただければ、とも思っております。

                                     敬具
平成24年2月24日
                                     小山常実
育鵬社版推薦者各位

なお、30本ほど、育鵬社教科書問題について以下の拙ブログで書いて居ます。

ブログ名 「日本国憲法」、公民教科書、歴史教科書
URL  http://tamatsunemi.at.webry.info/

  特に、お読みいただきたい2012/01/28 18:39「育鵬社による盗作の全体像」のコピーを同封します。また、他にお読みいただきたい記事のURLを掲げておきますので、ご笑覧下さい。

2012/02/20 11:00
育鵬社による盗作の法的被害者は誰か
http://tamatsunemi.at.webry.info/201202/article_3.html

2011/12/05 01:08
悪貨は良貨を駆逐する―――育鵬社が自由社に勝利した事情
http://tamatsunemi.at.webry.info/201112/article_1.html

2011/09/03 00:39
「つくる会」を背後から刺した「教科書改善の会」
http://tamatsunemi.at.webry.info/201109/article_1.html

2011/08/28 01:55
育鵬社公民教科書はなぜ低レベルのものになったのか
http://tamatsunemi.at.webry.info/201108/article_58.html


私の連絡先は以下の通りです。
  省略
 




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 4

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス
ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック