平成24公民教科書資料Ⅲ(3)日本歴史と立憲主義

             Ⅲ、立憲主義か全体主義か

          (3)日本歴史と立憲主義


   「日本国憲法」前文は、社会契約説の考え方に基づき、日本歴史を全く無視する態度を示した。その結果、いわゆる憲法学は、西欧と米国の憲法思想や歴史に基づき「日本国憲法」の解釈を試みてはきたが、決して日本の歴史に基づき解釈しようとはしてこなかった。また、大日本帝国憲法について考える場合も、憲法学は、決して江戸時代までの日本政治史との関連で考えることをしてこなかった。以上のことは、基本的に、護憲派・改憲派を問わず、あてはまることである。

  だが、大日本帝国憲法は、西欧米国の影響だけではなく、江戸時代までの政治史・政治思想史を背景に出来上がったものである。この点を公民教科書は記しているだろうか。以下に7社の記述を掲げていこう。  


○分析項目
①近代以前に特別に頁を割いてるか
②近代以前の歴史と立憲主義を関連付けているか


○東京書籍
①②全くなし

○日本文教出版
①②全くなし

○教育出版
①②全くなし

○清水書院
①②全くなし

○帝国書院
①②全くなし

○育鵬社
①割いていない
②書いているとも、書いていないとも言えない。明確にきちんとは書いていない。思想的には伝統的な天皇権威と大日本帝国憲法下の立憲君主制を関連付けていることは確かである。

○自由社
①割いている
②明確に関連づけている。
「もっと知りたい 立憲主義を受け入れやすかった日本の政治文化」という大コラムで、「権威としての天皇」という小見出しを置き、次のように記している。
 「わが国は世界で最も歴史の古い国の一つである。明治維新により国民国家が形成され、大日本帝国憲法の制定により、立憲君主制の立憲主義の国家が成立した。この立憲君主制は欧米の政治体制を参考にしながら、わが国の伝統的な政治文化に調和させてつくったものである
 古代、天皇の重要な役割は民のために神に祈ることだった。同時に天皇は、実際に政治を行う政治的権力ももっていた。しかし、歴史が進むにつれ、政治的権力から遠ざかっていった。特に鎌倉幕府が開かれてからは、天皇は自ら権力を行使することはなかった。
 それでも、天皇の存在は政治権力に対し、政治を行う地位を与える権威として存在し続け、政治権力は、天皇の権威を押しいただいて政治を行うことが日本の政治文化としての伝統となった。政治権力は、天皇のもとで築いた古い文化を破壊したりすることは少なく、「民安かれ」と願う天皇の思いを受け止めて、民を過酷に扱うようなことは少なかったとも考えられる。
 権威としての天皇が存在し続け、政治が大いに安定し、外国に比べて平和な時代が長く続き、文化は着実に成熟していったと考えられている。
  大日本帝国憲法下の天皇が統治権を総攬する一方、実際の政治は立法、司法、行政の三権に任せる立憲君主であり続けた背景には、このような権威と権力の分離があったのである」(46頁)。
続けて、「合議の伝統」の小見出し下、
 「日本では古くから話し合って物事を解決し、できるだけ力の争いは避けるべきだという考え方が存在していた。
 7 世紀、聖徳太子は、十七条憲法の第1条において「和を以って尊しとなす」と謳い、政治は一人だけの独断ではなく、人々が議論をつくして行わなければならないと説いた。天皇が政治の中心であった古代律令国家でも、重要な事項は、有力貴族が集まる公卿会議で決めていた。
 合議の伝統は、鎌倉時代からの武家政治においても引きつがれ、江戸時代でも、幕府の役職は複数の人間が担当し、全員の合議で決めていた。合議によってものごとを決めれば、極端な結論が避けられ、多くの人も納得する結論になりやすい。
 庶民の社会でも、村寄合や町寄合によって村や町の方針が決められていた。その経験が、近代において町村議会を生み出していく基礎になっている。
 このような歴史的背景のもとに、明治政府を樹立するにあたって、いちはやく「五箇条の御誓文」を出し、その第1 条で「広く会議を興し、万機公論に決すべし」と宣言することもできたのである。
 日本ではこのように、古くから合議を重んじる伝統があったために、近代西欧で発達した議会での話し合いを重んじる立憲主義を容易に受け入れることができたのである」(47頁)。
    ……この単元では、国体という言葉が削られたりもしたが、検定の過程で論理がきちんとしてわかりやすくなったという印象がある。



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