平成24公民教科書資料Ⅱ(12)「持続可能な社会」「人間の安全保障」

      Ⅱ、国家主権


          (12)「持続可能な社会」「人間の安全保障」


    「人間の安全保障」と「持続可能な社会」という概念が出てきた。これは、それなりに必要な概念であるが、下手な使い方をすれば、日本国家を滅ぼしていく可能性のあるものである。「人間の安全保障」は、独立国家に対する内政干渉を合理化する理論となり得る。
   
   「持続可能な社会」という言葉は、「人間の安全保障」よりはるかに良く使われる。元々「持続可能な開発」という言い方が元祖のようだが、このパリエーションとして、「持続可能な社会」「持続可能な世界」という言葉が現れた。だが、例えば地球市民を目指す公民教科書は、持続可能な日本、持続可能な国家というような考え方を決してしない。明らかに、日本や国家というものは亡びても構わないものという考え方をしているのである。

   それゆえ、以下では、「人間の安全保障」をどうとらえているか、日本の持続可能という観点があるか、といったことについて、教科書記述を比較していこう。   
   

○分析項目
①「人間の安全保障」……本来は、国家の責任ということが述べられているか
②「持続可能な社会」……日本の持続可能という観点があるか


東京書籍
①「人間の安全保障」……第5章第2節「国際問題とわたしたち」下、「地球市民として」の小見出し下、「人間の安全保障」の言葉が出てきて、「人間の安全保障」の小コラム。
「従来の『安全保障』は、国家が自国の国民を守るという、国家の軍事力による『国家の安全保障』でした。しかし、グローバル化の進展で、国家の安全保障だけでは人々の安全と平和を確保できない場合も見られるようになってきました。そこで、人間一人ひとりに着目し、その生命や人権を大切にすべきだという『人間の安全保障』という考え方が出されています。」(173頁)
②「持続可能な社会」
「終章 よりよい社会をめざして」下、「1 持続可能な社会を形成するために」下、
 「現代社会には、人類の未来をおびやかすさまざまな課題が存在します。例えば、これまで社会科で学習してきた平和、人権、環境、貧困などをめぐるさまざまな課題は、その典型です。いずれも解決が困難で、なかには解決策すら見つかっていないものもあります。
 これらの課題は、自分たちの現在の行動が将来の世代にあたえる影響を、じゅうぶんに把握していなかったり、把握はしていても現在の自分たちの利益のために軽視したために、ますます深刻なものとなりました。この反省に立って……このように、将来の世代の幸福と現在の世代の幸福とを両立させることのできる社会を、『持続可能な社会』といいます。
 持続可能な社会を形成するために、わたしたちにはどのようなことができるでしょうか。地球市民の一員として、現代社会のかかえるさまざまな課題と、自分たちにできることについて考えてみましょう」(176頁)。

○日本文教出版
②「持続可能な社会」……第4編第1章2節単元「3 地球温暖化の問題」下、
 「キーワード 持続可能な発展」下、「将来の世代の欲求をそこなうことなく、現在の世代の欲求を満たすような開発のことです。環境と経済はたがいに反するものではなく、環境に配慮した節度ある開発をしてこそ将来にわたる発展が保証されるという考えに立っています」(206頁)。
・単元「4 持続可能な発展をめざして」下、地球環境への対処中心(209頁)
・結局、持続可能に、世界はあれど、国家はない。(209頁)
①同単元下、「人類の共生をめざして」の小見出し下、「一言でいえば、人間の安全保障が私たちの大きな仕事です。これは一人ひとりの生命と尊厳をたいせつにし、その実現のために市民、企業、政府が協力していこうとする考え方です。日本は、発展途上国への開発支援や平和構築を通して、人間の安全保障に積極的に取り組んできました。」(210頁)
・同小見出し下、「地球号の乗員共通の課題を認識して、多文化の人類が共生し、協力することができるでしょうか。そのための知恵は、私たちが出さなければならないのです」(210頁)
・「日本が世界に提供できる価値 人間の安全保障」(211頁)。

○教育出版
①「人間の安全保障」……第6章1節単元「6 安全がおびやかされる現代 人間の安全保障①」下、「人間の安全保障の考え方」の小見出し下、「現在、一人ひとりの人間の安全を保障するための取り組みを強めようという、『人間の安全保障』という考え方が、国際社会に広がってきています。これは、紛争や災害、人権侵害、貧困などのさまざまな地球的規模の脅威から、人間の生命、身体、安全、財産を守り、すべての人々が、人間らしく安心して生きることができる社会を目ざす考え方です。こうした考え方が注目されるようになった背景には、今日の世界が抱える多くの課題が、複雑にからみ合い、それぞれが深刻さを増している状況があります。」(190頁)。
②「持続可能な社会」……
 第6章1節単元1「『持続不可能』から『持続可能』へ 地球規模の恐怖と欠乏」下、「『持続可能な発展』とは」の小見出し下、「先進工業諸国を中心に進められた経済の開発・発展は、かつてないほどの豊かな社会を実現しました。しかし、そのために世界的な経済格差や、環境破壊と資源の減少を進め、さらにその結果として、将来世代の存続の危機という問題が生じてきました。
 こうした危機感が強まるなか、国連が設置した『環境と開発に関する世界委員会』は、これらの問題を調査し、過去の開発・発展のやり方ではもはや持続不可能だと結論付けました。そのうえで、今後は、①将来の世代の必要を満たす能力を損なわず(世代間の公平)、②世界の貧しい人々の必要を満たすことを優先し(世代内の公平)、③地球環境がもつ能力の限界を守る(環境、経済、社会の3分野の調和)、という開発・発展のやり方に転換していかなければならないと指摘しました。そして、これを『持続可能な発展』と名づけ、全世界にその実現を強く要請しました。」(180~181頁)
 

○清水書院
①「人間の安全保障」……
第1編第3章1節単元3下、「平和の構築をめざして」の小見出し下、「紛争や暴力、飢餓や貧困など、人間の尊厳や生存をおびやかす危機にさらされる人びとを守り、脅威をとりのぞくために、日本は国際連合や他国と協力してとりくみをすすめている」(91頁)。
 ・側注⑤「国家という規模では対応がむずかしいこうした課題に対し、人間を中心とした視点から解決をはかっていくために、1999年、日本の提案で国際連合に『人間の安全保障基金』が設置された」(91頁)。
②「持続可能な社会」……第3編第2章「持続可能な未来へ」第1節「未来の社会をきずくために」下、単元2「かけがえのない地球」下、「地球環境を守るために」の小見出し下、「1992年には、ブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)が開かれ、CO2の排出量を抑制する地球温暖化防止条約(気候変動変動枠組み条約)が結ばれた。また、将来の世代の利益や欲求をそこなわずに、地球環境に配慮して節度ある開発をおこなう指針として、『持続可能な開発』という考えかたがうちだされた。」(170~171頁)。
 続けて、「共通だが差異ある責任」のサブ小見出し下、「この会議では、先進国と発展途上国のあいだで意見が対立したが、『地球環境問題には人類共通の課題としてとりくむ必要がある。しかし、環境の悪化をもたらした責任の程度と、対応する能力には差があるため、先進国はより多くの責任を負う』ということになった」(171頁)。
 ・側注③「先進国が『地球環境問題は人類共通の課題』と主張したのに対し、発展途上国は『現在の環境問題をひきおこしたのは先進国の開発や経済発展であり、途上国の開発まで制限するのはおかしい』と主張した」(171頁)。

○帝国書院
①「人間の安全保障」……第4部第1章単元7「国際社会における日本の役割」下、「日本の国際協力」の小見出し下、「人間の暮らしから安全保障を考える人間の安全保障を目標にかかげて支援を行ってきました。……こうした努力によって、日本は、かつて日本が占領した東南アジア諸国などをふくめ、世界各国から信頼されるようになってきました。」(184~185頁)。
・「持続可能な社会をめざして 緒方貞子さんに聞く『人間の安全保障』」の大コラム下、「3人間の安全保障」の小見出し下、「近年、国家間の紛争は減りましたが、国内での紛争があまりに多く、その被害者たちにどうやって安全をもたらすかが大きな課題になっています。人間の安全保障というのは、人権、保健衛生、貧困、環境など、はば広く『人間の暮らし』から安全保障を考えることです。国家をこえて、人々の生活や安全を守る政策が必要なのです」(201頁)。
②「持続可能な社会」……
 第4部第2章単元4「地球とともに生きるために」下、「循環型社会をめざして」の小見出し下、「『持続可能な社会』が日本をふくめた世界のキーワードになっています。持続可能な社会にするために、私たちは、無駄な消費を少なくしていく生活、省資源・省エネルギーの生活を実現する必要があります」(199頁)
第5部1章「持続可能な社会をめざして」下、「『持続可能な社会』を形成することです」(204頁。)

育鵬社
①「人間の安全保障」……なし
②「持続可能な社会」……第5章第2節単元1「地球的規模の環境問題」下、「地球環境問題への取り組み」の小見出し下、「国際社会は1992(平成4)年にブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)を開き、約180か国が参加しました。この会議では、持続可能な開発に関するリオ宣言が採択され、地球温暖化を防止するための気候変動枠組み条約に多くの国が調印しました。」(177頁)。
 ・側注欄に「持続可能な開発」の説明として、「環境を破壊してしまうような乱開発や、その場しのぎの開発などをやめ、今生活している人々が利益を受けながら、将来の世代も開発の恩恵に浴すことのできるような開発のことをいいます」(177頁)。

○自由社
①「人間の安全保障」……本来は、国家の責任ということが述べられている。
単元64「日本の安全と世界の安全」下、「ミニ知識 人間の安全保障」下、
「『人間の安全保障』とは、民族紛争や人権問題、人口爆発、貧困・飢餓、資源・エネルギー問題、地球環境問題とともに登場した考え方である。これらの問題は、個々の人間の生存や安全をいちじるしく脅かす。この脅威を取り除く責任は、本来、国家にあるが、この責任を果たすことができない国家も存在している。そこで、国際社会が協同して、個々の人間の安全を守るべきであるという考え方が出てきた。そのために、本来国家について使われる『安全保障』という言葉の意味を拡大して、『人間の安全保障』という言葉が作られた。」(181頁)
②「持続可能な社会」……日本の持続可能という観点がある
「終章 持続可能な社会を目指して」下、単元64「日本の安全と世界の安全」下、「わが国の生き残りを」の小見出し(181頁)。
*検定申請本では、「終章 持続可能な国家と社会を目指して」とあった。国家が検定で削られた。



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