平成24公民教科書資料Ⅰ(7)日本文化、社会、国家の特色

             Ⅰ、共同社会

             (7)日本文化、社会、国家の特色


   日本社会の紐帯をなすものには、宗教だけではなく、生活文化も含めた文化全体がある。その意味で、きちんと日本文化の本質的な特色を生徒に対して伝えることが重要となる。そのことに各社は成功しているだろうか。以下に、7社の記述を掲げておこう。


○分析項目
①日本文化の特色
②日本社会の特色
③日本国家の特色
④日本文化の多様性だけを指摘することはないか


○東京書籍……
①第1章2節「わたしたちの生活と文化」下、単元「2 くらしに生きる伝統文化」の下、「伝統文化とは」の小見出し下、「ユーラシア大陸の東に位置する日本は、大陸文化の影響を受けながら歴史的に独自の文化を形成してきました。例えば……平仮名や片仮名を考え出しました。このような、長い歴史の中でつちかわれ、人々に受けつがれてきた文化を伝統文化といいます。伝統文化の中には、能や歌舞伎、茶道や華道といった一部の専門家の人々によってになわれてきた文化と、広く庶民によって日常生活の中で受けつがれてきた衣食住、年中行事、冠婚葬祭などの生活文化があります。」(16頁)。
……日本文化の本質、思想的特質をまとめたような言葉がない。
①単元「4 文化の継承と創造」下、「グローバル化と日本文化」の小見出し下、「もったいない」が強調される。
 ・次いで、「文化の継承」→「新しい文化の創造」。
 結局、単元2から4までで日本文化の本質、思想的特質が全く書かれない。
②③一切なし
④多様性の強調
 「第1章 私たちの生活と現代社会」下、「1節 現代社会とわたしたちの生活」下、単元「1 グローバル化」下、「国際協力と文化の共存」の小見出し下、
 「日本でくらす外国人が増え、わたしたちの身近な地域でも、さまざまな文化を持った人々が共生する多文化社会が進展してきています」(9頁)。
 第1章2節、単元「3 日本文化の多様性」下、「日本文化の地域的多様性」→「琉球とアイヌの文化」→「日本の中の外国文化」の小見出し(18~19頁)
・地方自治のところでも、「多文化共生に向けて」の小コラム(99頁)
⑤第5章2節「国際問題とわたしたち」下、単元「1 文化の多様性」(162頁)……ともかく、文化の統一性は示さず、多様性ばかり強調するのが東書の特色である。

○日本文教出版
①日本文化の特色……「第1編 私たちと現代社会」下、「第1章 私たちが生きる現代社会と文化」下、「1節 私たちが生きる現代社会の特色」下、単元4「グローバル化する世界で生きる私たち」下、「日本社会のグローバル化」の小見出し下、「日本製のアニメや漫画は世界じゅうに受け入れられています」(12頁)。
 ・第1編2節単元「2 受けつぎ、創造する日本の伝統・文化」下、「日本の伝統と文化」の小見出し下、「温帯に属し、山地が国土面積の4分の3を占め、四季の変化が美しい日本には、自然とともに生き、他人を思いやるくらし方が育ちました。春のお花見や鯉のぼり、神社の秋のお祭りも、雪国のかまくらも、そうしたくらしの中から今日に伝わっています。
 また日本のくらしからは、日本家屋や庭園、日本料理や、能、歌舞伎、和太鼓などの文化も受けつがれてきました。入学式や卒業式も、それぞれの学校の伝統行事として大切にされています。伝統工芸の分野では、たえず新しいくふうを積み重ね、現代のくらしやセンスにマッチしたものをつくり出そうとする努力が、新しい伝統をつくり出していきます。
 こうした文化の伝統は、現代のくらしにも息づいています。町工場の職人の技術、携帯電話の高機能、使う人への気配りがゆきとどいた電器製品や自動車、さらに、アニメのテーマやキャラクター、ファッション、外国で生まれたロック音楽にも、日本の文化と日本人の感性がこめられています。」(16~17頁)
 ・続けて、「変わらないものと変わるもの」の小見出し下、「私たちが、さまざまな知識を身につけ、新しい考えを受け入れながらも個性を失わないように、文化も異なる文化との接触を通じて少しずつ変わる側面と、長いあいだ変わらない部分とをもっています。
 日本文化は、弥生時代に農業を受け入れ、奈良時代に仏教を学び、平安時代に国内で独自の文化(国風文化)を発展させました。室町時代には南蛮貿易で新しい技術を取り入れ、江戸時代には鎖国をして再び独自の文化を育み、明治以降は欧米諸国に追いつこうと近代化の過程をあゆんできました。
 現在は、交通手段や情報通信手段の発達で、地球規模での文化の交流が起こっています。そうしたなかで、日本の工業製品やお金の力だけでなく、日本人の美意識や地球環境問題に関する考え方そのものが、世界の人々にも受け入れられるようになっています。今も日本文化は世界の多くの文化との交流のなかで、変わる部分と変わらない部分を保っています。」(17頁)
・「日本における文化の受容と創造」の小コラムで、法隆寺夢殿の建設の話(17頁)
 *端的に日本文化の特色を表せていない。
   しかし、特色を書こうとはしている。
②日本社会の特色……「第1編 私たちと現代社会」下、「第1章 私たちが生きる現代社会と文化」下、
 「1節 私たちが生きる現代社会の特色」下、単元「2 少子高齢化の社会と日本の挑戦」下、「始まった日本の人口減少」→「少子高齢化への挑戦」の小見出し、
「少子高齢化への挑戦」の小見出し下、「日本人の平均寿命はのび続け、今や世界で最も人々が長生きする国になりました」(7頁)。
・同小見出し下、「私たち日本人の知恵が試される時代に、私たちは生きているのです」(7頁)。
・第3編、「日本経済を支える中小企業」の大コラム下、「日本が誇る世界の中小企業」の小見出し(141頁)。
・「日本が世界に提供できる価値」として、「日本の環境対策」(167頁)。
③日本国家の特色……これはなし
④日本文化の多様性だけを指摘することはないか
単元4「グローバル化する世界で生きる私たち」下、「グローバル化と多文化共生社会」の小見出し下、「そこで、グローバル化の世界にあってもなお、私たちの個性、地域の文化、国の特徴をたいせつにする多文化共生社会が求められています」(13頁)
 ・側注欄に「⑨多文化・多民族と共生する街づくり」の写真(13頁)。
次いで、2節「現代社会の文化と私たち」下、単元「1 現代社会と文化の多様性」下、「世界の文化の多様性」の小見出し(15頁)。

○教育出版
①日本文化の特色……「第1章 わたしたちの暮らしと現代社会」下、2節「現代につながる伝統と文化」の下、単元「1 進歩する科学」下、「からくり人形からロボットへ」→「人間にかわるロボット」→「日本の科学技術のこれから」
・単元「2 芸術・宗教のもつ力」下、「芸術によって変わる地域」→「日本人の宗教観と宗教の持つ意味」
・単元「3 暮らしのなかに息づく文化 受け継がれる伝統・文化」下、「暮らしのなかの文化」→「伝統文化としての『茶』とその現在」
・日本文化の特色に対する意識は高いが、思想的特徴を明らかにする形にはならぬ。
②日本社会の特色……「第1章 わたしたちの暮らしと現代社会」下、1節「わたしたちが生きる現代社会」下、単元「2 社会の変化と家族のあり方」下、「加速する高齢化」の小見出し下、「高い医療水準のもとで平均寿命も世界一に上昇しました」(9頁)ぐらい。
 ……社会の特色を明らかにしようという意識はない。
③日本国家の特色……なし
④日本文化の多様性だけを指摘することはないか
 ・第1章1節単元「4 世界とつながる日本 グローバル化する社会」下、「①外国人向けの日本語の事業の様子(2009年、静岡県浜松市)」の写真(12頁)ぐらい。

○清水書院……
①日本文化の特色……序章単元2「私たちの生活と文化」下、「日本不の文化と伝統」の小見出し下、ほぼ1頁(11頁)。
 「日本にも、先人によってきずかれてきた伝統や文化がある。はるか昔から、私たちの祖先は森にも川にも神がやどると考え、自然を敬ってきた。季節ごとに咲く花を美しく感じ、鳥や虫の声を愛し、夜空の月や星の光に心安らがせてきた。
 私たちの祖先は、手間ひまをかけた農作業をおこない、……村落の共同体を育ててきた。……盆踊りや収穫を祝う祭りがあった。……
 日本の伝統は、自然ととけあい、風や光を生かす簡素で風雅な美しさをもつ庭園や住居にも見ることができる。和歌や俳句などの簡素に略された表現は、ことば以上の意味をそえて人の心にとどく。日本の芸能は、歌舞伎や能楽などの様式美だけでなく、狂言や落語など笑いとユーモアの精神もたいせつに伝えてきた。こんにち、世界じゅうで愛されている日本の漫画やアニメーションの起源は、『鳥獣戯画』にまでさかのぼる

 日本の文化は、世界のさまざまな文化をたくみに取りいれることで発展してきた。古代に大陸から伝えられた漢字や仏教、儒教、近代以降に取りいれた技術や思想、生活様式など、世界の文化は私たちの毎日のくらしに定着している。」(11頁)
②日本社会の特色
③日本国家の特色……ない
④日本文化の多様性だけを指摘することはないか……ない

○帝国書院……
①日本文化の特色……第1部2章単元3「伝統文化に根ざす現代」下、「自然と一体化した日本の文化」下、「自然と人間の調和や均衡を考えた生活様式は日本文化の特徴です。」(18頁)
 ・同単元下、「日本人の生き方・考え方」の小見出し下、「……年中行事……通過儀礼といいます。これらの行事や儀式の多くは、自然とのつながり、宗教的な意味や由来をもつています。……自国の伝統的な文化を理解することは、日本人らしい考え方を確立することにつながります。」(19頁)
・同単元下、「伝統文化を受けつぐ」の小見出し(19頁)
②日本社会の特色……
第1部1章単元1「大きく変化した私たちの生活」下、「人々の努力と高度経済成長」の小見出し下、「政治の面から、国の将来を見通して、経済成長のための政策を立てた人々もいました。」(3頁)。「今では世界でも有数の環境先進国となっています。」(3頁)。
 ・単元3「少子高齢化が進む現代」下、「平均寿命が年々のびており、現在では世界の中でも最高位です。」(6頁)
③日本国家の特色……なし
④日本文化の多様性だけを指摘することはないか……ない

○育鵬社
①日本文化の特色……日本を意識しているが、その特徴を明確化できていない。「『公民』を学ぶにあたって」下、「独自の文明をもつ国・日本」の小見出し下、古い歴史、古代より外国から受け入れ日本のものにしてきた、ぐらい(5頁)
 ・第1章第1節単元1「文化の意義と影響」下、「日本の文化の特徴」の小見出し下、古代より外国から受け入れ日本のものにしてきた云々のみ。(9頁)
②日本社会の特色……
単元2下、「科学技術の発達」の小見出し下、「日本人の平均寿命は世界有数の水準になっています」(10頁。)
・経済編で、日本の中小企業や技術の高さを強調する。
・第5章第2節下、大コラム「地球環境問題と日本」下、「日本人の環境に対する意識」の小見出し下、「自然と共生」を強調(182頁)
③日本国家の特色……
④日本文化の多様性だけを指摘することはないか……なし
単元3「文化の継承と創造の意義」下、「文化の多様性と異文化理解」の小見出し下、「多文化社会が形成されつつあります」(12頁)。……これはどう評価すべきか。

○自由社
①日本文化の特色……単元5「文化の継承と創造」の下、日本文化の特徴を、文化の調和と融合、和の精神(社会の融和と連帯)、「ものづくり」の文化伝統(勤労と勤勉)、自然との共存の四点にまとめている(10~11頁)。
②日本社会の特色……単元3「日本の自画像」下、平和な社会、礼儀正しさ、科学技術、世界一の長寿国、
③日本国家の特色……単元3で、一貫して独立の維持
    最も歴史の古い国の一つ(申請本では、最古の君主国ともあった)

④日本文化の多様性だけを指摘することはないか……ない
・①「文化の調和と融合」の小見出し下、
「文明が高度化し、グローバル化が進むなかで日本社会がかかえる課題は、これから生きる日本人によって解決されなければなりませんが、祖先が築きあげたわが国の社会と文化の伝統のなかに、意外と解決の手がかりが存在しています。
 私たちの祖先は、神道の起源となった在来の伝統文化の上に、外来のさまざまな異文化を積極的に受け入れてきました。古代には仏教と儒教に代表される大陸文化に学び、近代以降はキリスト教を基礎としたヨーロッパとアメリカの文化に学んできました。そして、外来の文化を自己の文化と調和、融合させ、新しい独自の文化を育ててきました。
私たちの祖先は、外来のさまざまな文化を尊重し、それから学びながらも、決して自己の文化を見失わずにきました。今日、グローバル化によって日本の文化が動揺する危機の時代にあって、私たちの先輩の得た経験は大変大きな指針となります。」(10頁)
・「社会の融和と連帯」の小見出し下、
「私たちの祖先は、国や社会などを形成し維持していくにあたって、国内、組織内の融和と連帯を重視し、組織を構成するメンバー一人ひとりを大事にする和の精神を大切にしてきました。近代においても、企業に代表される日本の社会組織は、メンバーを平等に大切にして一人ひとりの能力の開発をはかる一方で、先見性や指導力のある人物をリーダーに抜擢し、そのもとで一致協力することによって新しい状況に対応していくという組織文化をはぐくんできました。」(10~11頁)。
・「勤労と勤勉」の小見出し下、
「私たちの祖先は一貫して、勤労、勤勉をよいことと考え、大切にしてきました。それ
によって得られる利益とは関係なく、働き、努力をすること、世の中の人々に貢献すること自体に喜びと価値をみいだしてきたのです。この精神のあり方が、自分自身で納得できる良質のものをつくりだし、それを社会に提供しようとする『ものづくり』の文化伝統を生み支えてきました。」(11頁)
・「自然との共存」の小見出し下、「私たちの祖先は、自然との共存を大切にし、簡素な生活を尊んできました。日本人は、自然と人間を対立させてとらえず、自然を征服するのではなく、山川草木などの自然をわが同胞ととらえる考え方を維持してきました。
今日、国際社会における地球環境問題への取り組みにおいて参考になるのが、自然と共存してきたわが国の祖先の生活スタイルです。」(11頁)。



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