平成24公民教科書資料Ⅰ(4)対立と合意、効率と公正

          Ⅰ、共同社会

          (4)対立と合意、効率と公正
 

   今回の学習指導要領の目玉は、対立と合意、効率と公正という考え方である。学者というものは、物事を合理的に割り切れると考えがちであり、人工主義、合理主義の弊に陥りがちである。そのような学者の弊が現れたのが、指導要領に対立と合意、効率と公正という考え方を持ち込んだことである。

   この考え方は、存立目的が明確にある利益社会にしか、通用しない。利益社会においては、効率と公正という観点を最も重要なものとして、両者のバランスを見極めながら合意点を見出すということが出来ないわけではない。少なくとも、理念的にはバランスを見極めながら見出すべきであるとは言えるように思われる(確言できないが)。

   しかし、別に存立目的が明確にない共同社会にとっては、効率や公正という観点は、不要というわけではないが、それほど重要な観点ではなくなる。特に効率はそうである。この効率や公正という観点よりも、和とか楽しさとか、安心感とか、やりがいとか、共同体の安定とか、そういう情緒的なものの方がはるかに重要となるのではないだろうか。いや共同体の存続ということが何よりも重要なものになるであろう。
  
   いや、実は、利益社会の代表格とされる会社組織でさえも、特に日本では共同体の性格をある程度持つことになるから、効率と公正よりも上記の情緒的なもののの方が大事だとさえ言えるのである。利益社会でさえも、効率と公正という観点で物事を議論するという風に割り切れないことに注意されたい。

  このような考えからか、清水は、見事、効率と公正のバランスということを無視した。特に効率ということは完全無視した。清水の態度は一つの見識だと言えよう。

  以下、対立と合意、効率と公正ということに関する各社の記述を掲げよう。


○分析項目
 ①対立と合意、効率と公正の例が適切か
   特に社会編での
 ②共同社会(特に家族)に「効率と公正」を持ちこんでいないか
 ③備考


○東京書籍 
①第1章3節単元「2 効率と公正」下、効率、公正の説明(24~25頁)
  次いで、単元「3 きまりをつくる目的と方法」
続けて単元「4 きまりの評価と見直し」下、「きまりを評価する視点」でまた、効率と公正の観点出てくる(28~29頁)
②持ちこんでいない

○日本文教出版
 ①単元4「『効率と公正』」下、「効率と公正とは」の小見出し下、「まず、だいじな視点の一つが『効率』です。それぞれの人間が最大の利益を得られるように最もよい方法を選び、また、限りあるものや時間は、むだなく使わなければなりません。こうした考え方を効率を重視するといいます。
 いっぽう、きまりの中心には、個人の尊重をおかなければならず、このように考えることを『公正』といいます。合意するときは、『効率』と『公正』の両方をみたすことが必要です。」(28頁)
 ・続けて、「公正な社会をつくるために」の小見出し(28頁)
 ・同単元下、「効率と公正の視点チェック項目」の小見出し下、
   「効率 ・だれにどのような改善をもたらすか。
       ・お金はどのくらいかかるか。
       ・手間や時間はどのくらいかかるか。
    公正 ①みんなが参加して決めているか。(手続きの公正)
       ②立場が変わっても受け入れられるか(結果の公正)」(29頁)
 ②共同社会(特に家族)に「効率と公正」を持ちこんでいないか……明言していないが、理論的には持ちこんでいる……単元2「契約の意義と個人の尊重」の単元下、「結婚も一種の契約とみることができます。さらに、国家も、国民がたがいの存在や生き方を尊重し合うことを約束し、必要な政府をつくるという契約によって成立しているとみることもできます」(24~25頁)とあるから、
 ・「『対立と合意』『効率と公正』の練習問題」の大コラム下、母親が働きに出るかどうかの家族会議。メンバーは、父親と母親、それに招かれた祖母(32頁)。
  ……まだこれは、育鵬社と違って、有りという感じがする
 ・同大コラム下、「練習問題2 球技大会のグラウンド使用問題」(33頁)
③備考……経済編の第2章3節単元「1 働く意味と雇用の問題」下、「どの職業も、共同生活を維持していくのに欠かすことはできないのです。人は、働くことで共同社会に参加し、社会全体に貢献します」(148頁)。

○教育出版
 ①対立と合意、効率と公正の例が適切か……
 「第1章 わたしたちの暮らしと現代社会」下、3節「わたしたちがつくる社会」の下、
単元1「人と人とがつながる社会 ルールがもつ意味」→単元2「ルールを活用するために 効率と公正」→単元3「ルールをつくること 対立から合意へ」(20~25頁)
 ……定義がない
 ②共同社会(特に家族)に「効率と公正」を持ちこんでいないか
  上記単元2で、「トライ」の所で、「家庭や学校での自分の役割分担について、効率と公正の観点から考えよう」とある。(23頁)

清水書院……
①②序章単元6「ともに生きる社会をめざして」下、「対立から合意へ」→「約束の重み」→「競争と共生」の小見出し下、
1、「対立と合意」は大事だという。
2、しかし、「効率と公正」は無視。これは一つの見識。
3、「約束の重み」→「競争と共生」の小見出し下、公正の重要さは指摘。しかし、効率は記さぬ。索引を見ても、公正は出てくるが、効率は出てこない。(18~19頁)

帝国書院……
①対立と合意、効率と公正―――特に社会編での
 第1部第3章単元3「よりよい社会をめざして」下、「対立から合意へ」の小見出し下、「学校の部活動の予算配分を例に、どのように配分するのが一番よい方法かを考えてみましょう。……ここに対立が生じます。合意するための話し合いのさいに、判断基準となるのが『公平でかたよっていないこと』(公正)と『配分について無駄のないこと』(効率)です。……限りある予算を全校生徒のために無駄なく有効に配分するには、『公正』と『効率』の考えを念頭に話し合い、合意へと導く必要があります」(25頁)。
 ②共同社会(特に家族)に「効率と公正」を持ちこんでいないか……持ちこんでいない

○育鵬社
 ①対立と合意、効率と公正の例が適切か
   特に社会編での例が不適切。
 ②共同社会(特に家族)に「効率と公正」を持ちこんでいないか……持ちこむ
 ③備考……
第1章第3節「現代社会をとらえる見方や考え方」下、「対立と合意」「効率と公正」の考え方、万歳。7社の中で一番である。第3節の初めの文章のラストで「この節では、家族と私、地域社会と私、国家と私、そして世界と日本国民である私という順に、しだいに私とかかわる社会の規模を大きくしていく中で、現代社会におけるいくつかの問題点を事例として取り上げ、対立を合意に導くことの大切さについて学びます。この手順が、現代社会をとらえる基本的な見方や考え方になります」(27頁)。

自由社
 ①対立と合意、効率と公正の例が適切か……適切
   特に社会編での
 ②共同社会(特に家族)に「効率と公正」を持ちこんでいないか……持ちこんでいない
 ③備考
「1章 個人と社会生活」下、第1節単元6「共同社会と利益社会」下、
「家族などの共同社会は、特定の目的の実現を目指した社会集団ではないため、効率性を問題にすることは適切ではありません」(21頁)。
・側注④「例えば、『効率的な家族』などを考えることはできるだろうか。親子の例にみられるように、親しさや身近さに基づき、愛情で結ばれた人間関係が、私たちの成長発達に大切なのである」(21頁)




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック