共同社会と利益社会の区別を説いた―――『新しい公民教科書』の記述(4)

  3年前の学習指導要領の改訂で、対立と合意、効率と公正という考え方が導入された。しかも、身近な日常生活から国際社会まで、効率と公正のバランスを見極めて合意点を見出すべきである、あるいは見出していけるという考え方が強烈に出てきた。だが、この考え方は、企業社会を中心にした利益社会でこそ通用する考え方である。共同社会、特に家族にはこういう考え方は通用しないことは誰にでもわかる事柄である。

  そこで、「1章 個人と社会生活」「1節 家族の中で育つ私たち」の最初の単元に「6 共同社会と利益社会」を置き、「さまざまな社会集団」→「共同社会と利益社会」→「公正と効率」という順序で小見出しを設けた。そして、共同社会と利益社会の原理的な違いを明確化した。こういう原理的な違いを明確化したのは、『新しい公民教科書』だけである。この単元から必要な部分を引用しておこう。

  共同社会と利益社会
  
  共同社会とは血のつながった人々の集まりや、同じ村や町に暮らしてきた人々の結びつきによって自然に生まれた生活のための集団であり、特定の目的のためにつくられた集団ではありません。ですから、その存続自体が目的だともいえます。家族や地域社会は、共同社会の典型です。

 共同社会は大災害などによって滅亡しない限り、存続していきます。共同社会への加入は個々人の自由意思によってではなく、そこに生まれたことによって、自然になされます。個々人は、所属する共同社会のために、全人格、全
生活をかけることがあります。若者も、大人も、お年寄りもその共同社会のなかで、助けあい、支えあい、教えあい、
生活しています。子供はその中で、いろいろなことを学びながら、育っていきます。

  一方、利益社会とは、個々人が特定の目的を実現するために集まり、目的やルールについて合意し、場合によっては明確な契約をとりかわすことによって人為的につくられた集団です。利益を追求する企業や、楽しみを追求するクラブなどがその典型です。利益社会への加入は個々人の自由意志によってなされます。そのメンバーが、合意すればいつでも解散することができます。
 

  公正と効率

   企業などの利益社会は、特定の目的・利益を実現するための集団ですから、メンバーのあいだで意見の対立が生まれた場合には、目的・利益に照らし合わせて解決策の合意をはからなければなりません。その場合に重要なのは、公正と効率のバランスをみきわめることです。一方、家族などの共同社会は、特定の目的の実現を目指した社会集団ではないため、効率性を問題にすることは適切ではありません。

  これに対して公正さは、共同社会においてもとても大切なものです。また、共同社会においては、親子の例にみら
れるように、親しさや身近さに基づき愛情で結ばれた人間関係がたいへん重要だということができます。
  
                                                     (20~21頁)

側注④「例えば、『効率的な家族』などを考えることはできるだろうか。親子の例にみられるように、親しさや身近さに基づき、愛情で結ばれた人間関係が、私たちの成長発達に大切なのである」(21頁)



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