資料・公民教科書分析(9)(10)を載せて思うこと--歴史隠蔽体質は「日本国憲法」に由来する

  尖閣ビデオを公開せよ

  尖閣ビデオの一部が流出した。大騒ぎになっている。これで、明らかに中国側が故意にぶつけてきたことが明らかになった。本来ならば、政府が率先してビデオを公開し、中国側の非を全世界に訴えるべきところである。日本政府が9月にでも公開していれば、圧倒的に日本側に有利な国際情勢が生まれただろう。今回流出させた人は、政府がやるべきことを代行したにすぎない。流出者が海上保安庁職員であると仮定すれば、その職員としては、政府がビデオを公開せず売国的であるとき、国を守るために「犯罪」を犯したということなのだろう。
 
  しかし、気になるのは、中国人船員を逮捕するときに海上保安庁職員が海に落とされ銛で突かれて死亡した、あるいは死亡しかけたという情報である。残りのビデオの内容が明らかになれば、この情報の真偽がわかるのだろうか。いずれにしても、政府は、ビデオを公開し、一体どういう状況で事件が起きたか、職員が殺されたのか、殺されていないのかを国民に対して明確に説明する必要があろう。

   日本政府の歴史隠蔽体質 

  ともあれ、諸外国、特に米国・韓国・中国との関係では、戦後の日本政府は、相手側を刺激してはまずいという判断の下に日本側に有利な情報を隠蔽する体質がある。しかし、変な話である。普通の国は自国に都合の悪いことを隠蔽する傾向があるけれど、日本政府は、対外国関係で日本に有利な事柄を隠してしまう傾向があるからである。この隠蔽体質は、何に由来するのであろうか。

   隠蔽体質は、「日本国憲法」の作られ方から生まれた 

 私に言わせれば、その根源は、「日本国憲法」にある。特に、そのデタラメな「日本国憲法」成立過程にある。出鱈目な「日本国憲法」成立過程をそのまま国民に明らかにしたのでは、「日本国憲法」を憲法として機能させることができない。そこで、戦後の「憲法学者」は、できるだけ日本側が自由に「憲法」をつくったように歴史を作り替えてきた。この歴史偽造は、この20年間で余計にひどくなってきた。特に中学校公民教科書に即して言えば、平成5~8年度版以降、ますますひどくなっている。このことを改めて確認した。簡単に、「日本国憲法」成立過程の教科書記述をまとめて感じたことを箇条書きで確認しておこう。

  ①相変わらず、議会審議における議員の自由意思のなさは書かれない。GHQによる議会統制は書かれない。それどころか、日本文教出版のように、「議員は、この改正草案を熱心に討議し」などと書いている。GHQによる議会統制を記した扶桑社の記述は、検定で削除されてしまった。
   

  ②GHQによる憲法改正の指示を書かない。書くのは扶桑社と日本文教出版の二社のみ。しかも、「指示」と正確に記すのは、日本文教出版一社のみ。扶桑社も正確に書かない。ちなみに、平成2~4年度版では4社が「指示」と記していた。

  ③GHQが日本政府に提示した憲法改正案は全社で出てくる。しかし、GHQが作成したと書かない教科書が4社もある。

  ④GHQが多くの日本側民間草案を参考にしてGHQ案を作ったとか、憲法改正案を国民が支持した、といった与太話が相変わらず出ている。
  
  ⑤要するに、教科書が言いたいのは、「日本国憲法」は、GHQが押し付けたものではなく、日本側とGHQが協力してつくったものであるということである。すさまじい歴史偽造である。この歴史偽造を続けるには、絶対に、議会審議は自由に行われたことにしなければならない。だからこそ、議会審議におけるGHQの統制を書いた扶桑社の記述は、削除されてしまったのだろう。

  ⑥この日本側とGHQが協力してつくったものであるという物語は、GHQ案の存在を隠せなくなった時から一貫して語られてきたものであり、「日本国憲法」無効論を排斥するためにつくられたものである。
   しかし、日本側とGHQが協力してつくったという物語は、条約説とは相性がよいように思われる。条約とは、まさしく対立交渉し、協力し合って作成するものだからである。条約説と無効論とを組み合わせた「新無効論」への違和感は、この点に由来する。
   
  ⑦ただし、1995(平成7)年に衆議院憲法改正小委員会議事録が公開されてからは、この協力物語は成立しないはずである。議事録公開により、見事に、日本側に自由意思がないことが明らかになってしまったからである。
それゆえ、条約説というのは、1995年までの古い「日本国憲法」成立過程史を根拠にして初めて成り立つ可能性が出てくるものなのである。もちろん、この説が成り立つためには、他にもいろいろ乗り越えるべき壁があるけれども。
  
  ⑧「新無効論」を信じる人たちは、「日本国憲法」無効論を広げるために、私の築いた成立過程史を大きな根拠として利用している。しかし、私の築いた成立過程史は、日本側の自由意思を完全に否定し、協力物語を否定したのである。それゆえ、「日本国憲法」有効論とともに条約説をも成立しがたいものにしてしまったのである。どうも「新無効論」の信奉者は、この点に気付いていないようである。   

  ⑨更にいえば、私は「日本国憲法」成立過程に関する憲法解釈学と公民教育の研究をしてきたが、この研究によって、憲法解釈学と公民教育が成立過程の真実を隠してきたこと、偽りの成立過程を国民に対して教えてきたことを明らかにした。いや、それどころか、歴史偽造の程度はますますひどくなつてきていることを明らかにした。したがって、「日本国憲法」は成立したときは無効かもしれないが、60年間の積み重ねによって有効になったとする追認説・時効説も成り立たなくなったのである。
   ただし、追認説・時効説をとる保守派(現在では保守派の中で最大か、いや左翼も含めて最大かもしれない)は、教育には関心がないからか、このことに気付いていないようである。  
   更にいえば、追認説・時効説を守るためには、長年にわたって「日本国憲法」について真実が教えられれてきたとしなければならず、公民教科書が記してきた物語(GHQと日本の協力による憲法成立という物語)を真実として位置づけなければならなくなるだろう。つまり、追認説・時効説に立ってしまえば、その途端、歴史教育の根底的改善に対する闘志も失っていくことになるのである。

  大日本帝国憲法をめぐる歴史歪曲

  ともあれ、教科書は、「日本国憲法」成立過程における日本側の自主性、自由意思を仮構するために、様々な歴史捏造を行ってきた。これは、保守派も関与しているが、基本的に左翼「護憲」派が行ってきたものである。

  彼らは、「護憲」のために、大日本帝国憲法に関する教科書記述をでたらめにしてきた。今回記述を整理してみて、そのデタラメぶりを改めて痛感させられた。ともあれ、整理してみて気付いたこと、感じたことを箇条書きで記していこう。

  
  ①「アジア初の憲法」「アジア初の立憲国家」といった記述は、三社でみられるだけである。

  ②大日本帝国憲法下の国体政体二元構造は、相変わらず無視されている。

  ③三権分立あるいは権力分立は、全社で出てこない。
   ちなみに、昭和52年度までは、三社ほどが三権分立あるいは権力分立を記していた。ところが、当時の学界では、天皇制絶対主義論が多数派であった。

  ④扶桑社以外の全社が天皇を主権者、権力者とする。戦前の憲法学界では天皇主権説は少数派であったことは、学者は皆知っているはずなのに。なお、歴史教科書では、天皇主権説をとる教科書は少数派であることを考えれば、本当に公民教科書は異常である。

  以上のように、「日本国憲法」成立過程の異常さを糊塗するために、大日本帝国憲法=「悪い憲法」のイメージ作りのために歴史歪曲を行っていることに注目されたい。
  明らかに、戦後日本がさまざまな歴史の隠蔽、歪曲、偽造・捏造を行ってきた出発点は、「日本国憲法」成立過程史における歴史の隠蔽、歪曲、偽造・捏造にあるといってよいだろう。そして、この延長上に、民主党政権が行う今回の隠蔽工作があるのである。

  その意味では、歴史教育・公民教育再建の立場からも、尖閣ビデオの全面公開は是非とも必要だと強調して、筆を擱きたい。  


 

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