「日本国憲法」無効論を広げるための四つの作業―――平成19年12月10日

  同じく平成19年12月10日に記した「『日本国憲法』無効論を広げるための四つの作業」という覚書を掲載する。
                                            
     「日本国憲法」無効論を広げるための四つの作業  
    
                                                    平成19年12月10日

   「日本国憲法」無効論は何故に広がらなかったのか。学問的、思想的な原因を探っておこう。

   第一の原因は、GHQの検閲指針を守った憲法学界とマスコミによる思想弾圧によって、「日本国憲法」成立過程の真実が隠された結果、憲法学者、歴史学者、政治学者等がまともな成立過程史を築いてこなかったことである。とりわけ議会審議における自由意思の不在を論証してこなかったために、民定憲法説に基づく「日本国憲法」有効論が生き延びてきた。

  第二の原因は、戦後「憲法学」と歴史学が明治憲法を歪曲し、国民の間に明治憲法に対する悪いイメージが定着し、明治憲法の復元改正は困るという雰囲気があることである。最近の歴史学では明治憲法のイメージは良くなっているが、それでもそれは教科書に反映されないし、「憲法学」では保守系学者も明治憲法をそれほど良く思っていない。明治憲法に対する歪曲を正すこと、正しい認識を一般に拡げることが無効論普及にとって喫緊の課題である。

  第三の原因は、成立過程は少々いかがわしいかも知れないが、「日本国憲法」は良い憲法だと国民の過半数が、特に元「優等生」が信じ込んでいることである。「日本国憲法」の内容に対する部分的な批判は多数存在するが、総体的な批判は余りにも為されてこなかったからである。「日本国憲法」の内容に対する総体的な批判を行い、内容的にも憲法とは言えないことを論証することが必要である。

  それゆえ、第一に「日本国憲法」成立過程史の研究、第二に明治憲法の研究、第三に「日本国憲法」の内容の総体的研究、という三つの研究が必要となる。今の私は特に、第二の明治憲法に対する歪曲を正す作業を早急にしないといけないと考えている。

  もちろん、この三つの作業の次に、第四に、憲法として無効とされた「日本国憲法」に対する法的位置づけをどうするかということが問題になる。「日本国憲法」を過去に遡って無効にすれば、法秩序を不安定にする恐れがあるからである。「日本国憲法」をそのまま無効として「推定有効」で処理するか、憲法以外の何らかの法として無効行為(規範)の転換等により有効と扱うかという問題である。さらに、後者の説は、占領解除後も有効と扱う説と解除後は失効するが「推定有効」で処理するという説に分かれる。そして、それぞれの説は、特に後者の説は全て法律説、緊急勅令説、勅令説、条約説などに分かれることになる。

  私は、この第四の作業は、第一から第三の作業をきちんと行なって初めて行える作業だと思っている。憲法学界の人々は、「護憲」派・「改憲」派・無効派すべてが、これらの作業を(第一の作業さえも)ちゃんとやらずに、あるいはやる必要がないと考えて第四の問題ばかり議論してきた。事実関係と切り離して、あるいは事実関係を軽視して、法律論議のみに力を入れてきたのである。

  議会でさえも自由な審議が行われなかった事実関係を重視すれば、とても無効行為の転換など出来ないであろう。特に憲法条約への転換は、憲法条約は憲法の場合に準ずる自由意思を必要とするから、とてもできない相談である。

  今の私は、第一の作業は基本的に終えたが(自由意思の不在故に憲法説と条約説、特に憲法条約説は成立しないことになる)、第二、第三の作業は半分程度しか出来ていない。三つの作業をきちんとし終えていない今、第四の点については、今のところ井上説に従い、無効として「推定有効」で処理する説と、占領管理基本法という内容の法律として転換解釈できるが占領解除後は失効するから「推定有効」で処理していくという説の間で揺れている状態である。もちろん、原則的には、無効として「推定有効」で処理する前者の説が正しいと考えている。

  ただし、三つの作業を全て終えないと確かなことは言えないが、憲法であることを否定された「日本国憲法」に対する法的位置づけの問題は、学問、法学の問題と言うよりは、法政策的な問題である。それゆえ、議会なり政府が、転換解釈しないと困ると判断するならば憲法と条約(特に憲法条約)以外の何ものかに自由に認定すればよいと考えている。ただ、今の段階で敢えて言えば、無効→「推定有効」説か法律転換解釈→失効後「推定有効」説が妥当であろう。こうすれば、「日本国憲法」を過去に遡って無効にして法秩序を不安定にする心配はなくなるであろう。

  更に言えば、菅原氏や井上氏が述べているように、「推定有効」が成り立つか不安であれば、過去に遡って無効にしないことを規定すればよいだろう。こうすれば、どのように考えても、法的安定性の問題に対処する事ができるだろう。

  要するに、今の私の立場は、『憲法無効論とは何か』で記しているように、「絶対的の支障」が何か示せれば(示せると思わないが)、占領期にのみ有効な法律として転換解釈してもよいという立場である。あるいは、どうしても国家権力が無効行為の転換をしたければ、それを否定はしないし、転換するならば法律が相対的に正しいだろうという考え方である。
 


2010/07/17 01:53
占領管理基本法学から憲法学へ(一)―――反日原理主..
http://tamatsunemi.at.webry.info/201007/article_39.html


2010/07/17 10:17
占領管理基本法学から憲法学へ(二)―――占領管理基...
http://tamatsunemi.at.webry.info/201007/article_40.html

2010/07/17 16:11
占領管理基本法学から憲法学へ(三)―――独立国精神...
http://tamatsunemi.at.webry.info/201007/article_41.html



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この記事へのコメント

酔芙蓉
2010年10月24日 14:21
「日本国憲法無効論」はやや複雑になってきましたが、当ブルグの説明ですっきりしてきました。ありがとうございます。

>憲法として無効とされた「日本国憲法」に対する法的位置づけをどうするか<

第一から第三までの作業は仰るとおりですが、やはり第四の問題がうまく整理できないと、講和条約発効前日までの議論としてはよいとしても、戦後65年の今日の議論としては混乱します。

この辺の分かりやすい説明を是非お願いします。
小山
2010年10月25日 00:10
酔芙蓉様
コメントありがとうございます。
法政策の問題だと考えていることもあり、確定的な考えではないですが、今日の「日本国憲法」の位置づけについては、今のところ、3年前の別冊正論で書いたように考えています。本ブログでも、「占領管理基本法学から憲法学へ(2)」として掲載しています。すなわち、1952年から19960年までに日本は国際法的に独立国になりましたから、それに合わせて「日本国憲法」は保護国の占領管理基本法から独立国の国家運営臨時措置法に変化したとみなせるというふうに理解しています。この論文を読んでみてください。
小山
2010年10月25日 00:25
酔芙蓉様

不正確な表現をしましたので、訂正します。「保護国の占領管理基本法から独立国の国家運営臨時措置法に」ではなく「被占領国の占領管理基本法から独立国の国家運営臨時措置法に」です。要するに、暫定的・時限的な位置づけをしておかなければならないと考えています。
酔芙蓉
2010年10月25日 22:37
ご説明ありがとうございます。「占領管理基本法から憲法学へ(2)」も読ませていただきました。
>1952年から1960年までに日本は国際法的に独立国になりました<
手続きとしては独立国になり、日本国憲法は「国家運営臨時措置法」に変化したとの考え方には納得しました。「臨時措置法」なら帝国憲法に戻し、必要ならそれを改正すれば不連続は発生しないように思います。難問題ですが、これからも勉強させていただきたいと思います。

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