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zoom RSS 通州事件(1)――通州事件は保安隊と29軍による日本人ジェノサイドである

<<   作成日時 : 2018/04/21 01:56   >>

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以下、《戦時国際法学事始め》という拙ブログから以下の記事を転載する。


通州事件(1)――通州事件は保安隊と29軍による日本人ジェノサイドである
                    
 満州事変について3回にわたってみてきたが、今回から通州事件について検討していくこととする。

 通州事件は、戦闘と虐殺事件という二つの面から捉えるべきである

 1937年7月29日、冀東自治政府の首都であった通州で、中国軍によって日本人(朝鮮人を含む)250名ほどが殺害された。その大部分は民間人であり、むごたらしい殺され方をした。まさしく虐殺であった。

 3月には、通州事件に関する書物をノートを取りながら読み続けた。その中で、事件に関して何点か思うところがあった。一つは名称の問題である。もちろん、何と言っても、29日の出来事の中で最も大きなものは民間人虐殺である。それゆえ通州事件という言い方は、絶対に必要であろう。

 しかし、29日はほぼ12時間にわたって戦闘が行われており、戦闘のことを把握するためには「通州戦」または「通州事変」という捉え方も必要であり、この捉え方に即した名称も必要なように思われる。

 通州事件は中国軍による日本人ジェノサイドである

 二つは虐殺事件の性格問題である。虐殺事件ということに焦点を当てれば、アトロシティ(衝撃的なほど暴力的で残虐な行為)やジェノサイド(民族殲滅)にあてはまる。

 倉山満『歴史戦は「戦時国際法」で闘え』(自由社、2016年)は、1937年の「南京事件」と絡めて「虐殺」にあてはまる英語を四つ挙げ、それぞれ説明している。倉山氏は通州事件に触れていないが、氏の説明に基づき、四つの用語が通州事件にあてはまるか考えていきたい。

  (一)ジェノサイド(genocide)

 第一はジェノサイドである。これは民族殲滅と言う意味である。日本人の中で「支那人はみな殺しにしろ」といった人は全くいないから、所謂「南京大虐殺」はジェノサイドとは言えない。これに対して、通州事件では、事件の一カ月前から「日本人皆殺し」と叫んで行進する学生たち(教導総隊)がいたし、事件当日も予め日本人の居宅に×とか△の目印を付けて襲っている。戦闘の中で軍事的に必要性があって日本の民間人が殺されたのではない。日本人だから殺されたのである。中国軍は民族殲滅の思想から日本の民間人の過半数を殺害していったのである。こう見てくれば、通州事件は、明確に、日本人を対象にしたジェノサイドだと言えよう。

 (二)ホロコースト(holocaust)

第二に、ホロコーストである。元々は、「燔祭」という生贄を捧げるユダヤ教独特の儀式を指す。転用されて、「焼き尽くすことによる破壊や殺戮」と言う意味となる。そして、「the Holocaust」と言えば、ナチスのユダヤ人ジェノサイドを指す。

 しかし、「南京大虐殺」はユダヤ教と関係がないし、南京で「支那人絶滅計画」を実行したわけでもない。明らかに、ホロコーストではない。

 通州事件も、ユダヤ教と関係ないし、ホロコーストではない。ただし、「南京事件」があったと仮定して「南京事件」と通州事件を比較した場合、ホロコーストにより近いのは通州事件であることは確かである。

  (三)アトロシティ(Atrocity)

 第三にアトロシティである。「残虐さ(cruelty)」を意味する中世フランス語又はラテン語が語源だと言う。「衝撃的なほど暴力的で残虐な行為」を意味する。戦争関係で言えば、特に「軍による民間人や捕虜への極度の残虐行為」を意味する。

 倉山氏は、日本が例えば重慶爆撃で軍事目標主義を貫いたことを指摘し、このように律儀に国際法を守る国が、「極度の残虐行為」を働くわけがないとして、アトロシティを否定する。

 対して、通州事件では、中国軍は多数の日本人の掌に穴を開け縄を通して数珠つなぎにしたり、妊婦の腹から胎児を取り出したり、腸を引きずり出したりする「極度の残虐行為」を行っているし、200人以上の日本人が狙い撃ちされて虐殺された。文句なく、アトロシティと言える。付け加えれば、「南京事件」では、中国軍が通州事件で行ったような、「軍による民間人や捕虜への極度の残虐行為」は全く存在しなかったのである。
 
(四)マサカー(massacre)                      
 第四にマサカーである。定義は「理由もなく残虐に人を殺すこと」である。別の言い方をすれば、「軍事合理性と無関係な手段で行った、無意味/無益な殺傷」のことである。「理由もなく」又は「軍事合理性と無関係」と言う点が重要である。倉山氏は、ここで死体陵辱の例とダムダム弾の例を挙げている。死体陵辱については、次のように説明する。

 たとえば、死体の陵辱は軍事合理性と関係ありません。兵隊が相手を殺したあと、死体を切り刻んでいたら、次の軍事行動に移れないからです。相手の恨みを買うだけですし、軍隊の作戦行動にも無益です。だから、戦争を行うとき、責任ある指揮官がそういうことをきちんと取り締まりなさい、というのが国際法の考え方です。 (倉山本、93頁)

 少し話がずれるかもしれないが、傍線部は重要である。交戦者の資格には指揮官要件と言うものがあるが、傍線部のようなことを中国軍の指揮官は行っていなかったし、行いたいと思っても、中国軍の構造的問題としてできなかったことは拙記事「中国軍に交戦者資格はあるのか」の中で述べたとおりである。

 話を続けると、ダムダム弾について氏は次のように説明している。

 ダムダム弾も同じです。普通の銃弾で貫通して殺せるものを、わさわざ銃弾を体内でくるくる回して苦しめて殺すような、そういう武器を使うのをやめましょう、というように、合理性に基いて慣習を積み重ね、法になっていくのが国際法です。……

 ですから、仮に「無抵抗の民間人を銃殺した」という事実があったとしても、それ自体は「マサカー」の証拠になりません。本当に理由もなく面白半分に殺したというような場合が「マサカー」です。 (同)


 「南京事件」の場合、現代人の感覚からすれば残虐に見えようとも、「理由もなく残虐に人を殺すこと」は行っていないし、軍事合理性から行っている。いや、3月には「南京事件」と言われるものを子細に検討してみたが、軍事合理性を犠牲にして人道的に振舞いすぎている。だから、死ななくてもよい日本兵が多数殺されている。一旦投降した中国兵に手榴弾を投げつけられて死亡した日本兵が多数いるのはその例だ。

 対して、本記事の主題である通州事件においては、中国軍が、まさしく無抵抗の民間人を面白半分に殺している。通州駐留の日本軍に勝利するためには、日本の民間人を殺す必要は全く存在しない。まさしく、理由もなく、軍事合理性と無関係に殺人を行っているのである。つまり、「南京事件」はマサカーではないが、通州事件は明確にマサカーにあてはまるのである。

 以上を踏まえれば、通州事件とは文句なしにアトロシティであり、マサカーである。そして、通州における日本人殲滅を図った事件だから、ジェノサイドも当てはまるのである。

 下手人は29軍と保安隊である

  三つは、虐殺の下手人、責任者の問題である。一般的には事件は保安隊が起こしたと言われる。だが、事件の詳細を見ていくと、29軍の兵士が主導した虐殺現場がかなり存在する。50人単位の日本人・朝鮮人を処刑する二つの現場では、29軍兵士が仕切っている。あるいは、事件の中で最も残虐な行為と思われる妊婦の腹を裂き胎児を取り出す行為は29軍兵士が行っている。数は少なくても、29軍と保安隊が同席する現場においては29軍の方が保安隊よりも優位の存在だったと思われるのである。

 戦闘という面からみれば、通州事件は保安隊の仕業であるが、民間人虐殺事件という面からみれば、29軍と保安隊両者の共同行為だったと見なければならない。

 保安隊は元々反日派であった

 四つは、下手人である保安隊は親日派の「軍隊」であったと言われるが、いつから反日派になり、いつからどのように事件を起こす計画を立てていたのか、ということである。この問題について詳細を把握し整理するに至っていないが、事件を起こした保安隊第一総隊と第二総隊は、1935年段階から既に張学良系の反日・容共派に転換していた。また、29軍の長である宋哲元は、同じく反日・容共派の馮玉祥の子分であり、上司である蒋介石政府との関係も当然持っていた。つまり、保安隊と29軍がいつでも合流する可能性が存在していたのである。事実、日本軍に追われて通州から逃げ出した保安隊のうち約1000名は29軍に合流している。

  以上、四つのことを思ったが、最初の二点については、これ以上述べることはない。次回からは、通州事件の前史と事件そのものについて検討しながら、三つ目、四つ目の問題について追究していくこととする。

参考文献 
 田中秀雄『日本はいかにして中国との戦争に引きずり込まれたか』草思社、2014年
 倉山満『歴史戦は「戦時国際法」で闘え』自由社、2016年4月
 藤岡信勝編著『通州事件 目撃者の証言』自由社、2016年7月
 加藤康男『慟哭の通州』飛鳥新社、2016年10月
 広中一成『通州事件 日中戦争泥沼化への道』星海社、2016年12月
 皿木喜久編著『通州の奇跡』自由社、2017年5月
 藤岡信勝・三浦小太郎編著『通州事件 日本人はなぜ虐殺されたのか』勉誠出版、2017年7月、藤岡信勝「第一章 通州事件とは何か」、田中秀雄「第四章 通州事件の時代背景」

  通州事件については、更に4本の記事を《戦時国際法学事始め》に記しているので、興味のある方は参照されたい。
             通州事件(2)――事件そのものの概観、保安隊と29軍は何をしたのか
              http://skhkotohajime.blog.fc2.com/blog-entry-83.html

             通州事件(3)―――保安隊と29軍による民間人虐殺の具体像
              http://skhkotohajime.blog.fc2.com/blog-entry-84.html

             通州事件(4)――通州事件の原因論
              http://skhkotohajime.blog.fc2.com/blog-entry-85.html

             通州事件(5)―――広中一成『通州事件』に関するコメント
              http://skhkotohajime.blog.fc2.com/blog-entry-86.html


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