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zoom RSS 西村幸祐『報道しない自由―― なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか』を読む

<<   作成日時 : 2017/11/30 01:57   >>

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   「報道しない自由」とフェイク・ニュースに対する批判
 

  昨日、北朝鮮は米国東海岸まで届く能力を持つミサイル発射実験に成功した。このまま推移すれば、本当にもうすぐ、日本にとって、米国による核の傘は有効でなくなると言われている。

 そんな折、一昨日から昨日にかけて、西村幸祐氏の新刊『報道しない自由―― なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか』(イーストプレス、2017年11月)を読んだ。

 今年、平成29(2017)年は、北朝鮮のミサイル開発、核開発が着実に進んだ年であった。だが、テレビも新聞も、メディアは、森友学園問題、加計学園問題ばかりを面白可笑しく報道し続け、多数のフェイク・ニュースを流し続けた。野党も、北朝鮮の脅威や尖閣問題への対処について国会で議論しようとせず、森友・加計問題ばかりを追及し続けた。その結果、尖閣をめぐる中国の脅威どころか、北朝鮮による脅威さえもぼかされ続けてきた。そして、国防問題と密接な関係にある「憲法改正」又は「憲法」問題の重要性についてもぼかされ続けてきた。

 まさしく、マスコミは、「報道しない自由」を思い切り使うことによって、国防問題、憲法問題に関する国民の意識の進化・深化を押しとどめてきたのである。

 本書は、タイトル通り、マスコミが「報道しない自由」を行使しフェイク・ニュースを流すことによって行うメディア・コントロールの実態を、森友・加計問題を切り口にして説明し、更に占領期のWGIPに遡って戦後史を振り返る中で構造的に解明しようとした著作である。
 
まず、目次は以下のようになっている。 

第1章 政権を揺るがしたメディア・コントロールのカラクリ
第2章 メディア・コントロールとは何か
第3章 なぜ、メディアは「歴史洗脳」をするのか
第4章 なぜ、北朝鮮と中国の軍事的脅威は報じられないのか
第5章 メディアに騙されない方法
終章 あらゆるメディアは「プロパガンダ装置」である


 ところどころ、はっとする事実が紹介されており、教えられることの多い著作であった。私が細かい政治事情に疎いせいもあるかもしれないが、各章に必ず教えられることが一つ二つ存在した。

 クロス・オーナーシップの問題性

  例えば、第2章では、〈ニュースの論調は「クロス・オーナーシップ」で決まる〉〈新聞社を軸として編成された「クロス・オーナーシップ」〉以下、6つの小見出し分で、新聞テレビ界のクロス・オーナーシップについて歴史的、構造的に説明している。クロス・オーナーシップとは、「テレビと新聞が互いに資本関係にあり、業績が互いに影響し合う」(90頁)システムのことを指すようだ。テレビ朝日の主要株主は朝日新聞社であり、テレビ朝日の報道傾向は必然的に朝日新聞と同じようなものとなる。日本テレビの主要株主は読売新聞であり、同じくその報道傾向は必然的に読売新聞と同様のものとなる。マスコミ報道の画一化と「報道しない自由」の暴走は、このクロス・オーナーシップの然らしむるところである。この問題を詳しく論じているところは、勉強になった。特に、2010年1月、民主党政権の時に〈クロス・オーナーシップ禁止法案〉を原口一博総務大臣が提案しようとしてマスコミにつぶされたという話が興味深かった。

 「朝ドラ」が国民世論をつくる

 第3章では、〈「朝ドラ」が描いた太平洋戦争暗黒史観〉、〈反戦傾向の強い1970〜80年代の「朝ドラ」〉以下4つの小見出し分、15頁ほど使って、「朝ドラ」が国民、特に女性に戦争観をめぐって与える影響について、台湾の女性研究者黄馨儀氏の研究を下敷きにして、概観している。第2章には〈世論は「朝ドラ」と「ワイドショー」でつくられる〉という小見出しがあるが、「朝ドラ」の戦争観又は国防問題に対する影響力を指摘しているのは、私にとっては新鮮にひびいた。

 報道されない4つの事実 

  第4章では、報道されない事実として、4つの事柄が紹介されている。その部分の小見出しを挙げておこう。

 報道されない事実@――アジアは日本の憲法改正と再軍備を歓迎している
 報道されない事実A――イギリスのメイ首相は自衛艦で栄誉礼を受けた
 報道されない事実B――北朝鮮はすぐにハワイを攻撃できる
 報道されない事実C――台湾は日本の軍事力に興味を持っている


 @は、4年前のことだが、2013年6月1日、インドネシアの国防大臣が、シンガポールで当時の小野寺五典防衛大臣と会談し、国防軍創設を支持すると言明した。東南アジア最大の国家であるインドネシアの大臣、それも国防大臣が支持すると述べたにもかかわらず、日本の新聞社は、小さなベタ記事扱いだった。ここで西村氏も指摘しているが、もしも国防軍創設に反対すると述べていたならば、恐らくトップ記事扱いだっただろうと想像できる。まさしく、マスコミは、「報道しない自由」を行使したのである。

 メイ首相の言葉をかみしめよう

  私にとって衝撃だったのは、メイ首相に関する事実Aの部分の記述である。ただし、タイトルに表れている自衛艦で栄誉礼を受けた点ではない。〈報道されない事実A――イギリスのメイ首相は自衛艦で栄誉礼を受けた〉の小見出し部分で、氏は次のように記している。長くなるが、引用しておこう。

 2016年7月のイギリス議会で、こんなやりとりがあった。日本ではまったく報じられていないが、トライデントというイリス海軍の原潜搭載機核ミサイル更新の予算についての審議だった。多額の予算が必要だからだ。質問に立った野党議員はメイ首相にこう質問した。

 「貴女は罪のない男女や子どもたち数十万人を殺す用意ができますか?」

 メイ首相は即座に「イエス」と答え、淡々と審議が進んだのである。そして、彼女はこう続けた。

 「ここにいる紳士の方々はおわかりかと思います。われわれがそのような覚悟を持つことが、敵がわれわれを攻撃することを躊躇させる抑止力になるのです


 理屈としては分かっているが、当たり前の国家では、少なくとも、その国家を担う指導層は、傍線部のような常識が共有されている。本当は、憲法改正などと言う前に、こういう常識、独立国家意識を涵養していくことが必要なのではないかと思った。

 それはともかく、このメイ首相の言葉を知っただけでも、私には本書を読んで良かったと思えた。しかも、西村氏は、上記引用に続けて、「この答弁のあと、支持率が上昇したメイ首相は」と記しているのである。

 マスコミ問題に関心のある方に、本書をお勧めするものである。



  〈憲法改正派が3分の2を超えた〉というフェイク・ニュース

  なお、最後に、一つだけ指摘しておきたい。マスコミの流すフェイク・ニュースは、本書に書かれたことだけではない。近々の問題で言えば、〈憲法改正派が3分の2を超えた〉という嘘ニュースがある。日本の中で恐らく私だけが指摘している事実であるが、少なくとも今のところ、憲法改正派は死滅しているのだ。9条A項削除を提案する政党は皆無なのだから、今や、改悪派しか存在しないのである。多くの人に、〈憲法改正派が3分の2を超えた〉というものがフェイク・ニュースであることに気付いていただきたいと心から願うものである。


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>第3章では、〈「朝ドラ」が描いた太平洋戦争暗黒史観〉、〈反戦傾向の強い1970〜80年代の「朝ドラ」〉以下4つの小見出し分、15頁ほど使って、「朝ドラ」が国民、特に女性に戦争観をめぐって与える影響について、台湾の女性研究者黄馨儀氏の研究を下敷きにして、概観している

それは面白い研究ですね。本来なら日本人がすべき研究だと思います。朝ドラは余り見ないので、同じような研究を大河ドラマでもしてほしいです。大河ドラマは、物語としては面白くても、いくさ好きの男たちに平和を愛する女たちが振り回されるという紋切り型のパターンが多くて、鼻白む思いをすることがたびたびありました。私は心の中で「大河史観」と名付けて馬鹿にしていましたが、案外ああいうものに影響されている人も多いような気がします。

毎年見ているわけではないのですが、今年の大河ドラマ「女城主直虎」は今までとはちょっと違うのかなと思いながら見ています。女主人公の直虎が平和を希求するという点では、いつもと同じなのですが、徳川家康の武力による天下統一によって平和の実現を目指すという点では、これまでの平和と戦争を単純に二元化するパターンとは違っていて興味深く見ています。

NHKが変わったのか、単に脚本家の個性なのか、わかりませんが、戦争と平和の連続性、つまり力によってしか平和は保たれないというのは、現代の日本人が絶対に持つべき必要のある視点ではないかと思います。来週の最終回がどんな結末になるのか楽しみです。

弁信
2017/12/10 22:32
弁信様
 何度もリツィートしていただきありがとうございます。また、コメントありがとうございます。
 確かに、大河ドラマの影響について分析する研究があれば面白いですね。直虎は、8月ぐらいまでは葛藤のある人物が多くて面白かったですが、ここのところ、無理やり筋を付けている感じですね。葛藤も感じられなくなりましたし。話がずれましたが、そのように感じます。
小山
2017/12/11 00:24
NHKは平成8年放送の「51年目の戦争責任」で、軍が、誘拐に類する方法で慰安婦をかき集める様命じていたと、当時の資料を改竄し、事実に反する放送をしましたが、担当プロデューサー自身が偏向があったと認め、国会でも取り上げられたにも拘わらず、未だに謝罪も訂正もしません。先日も、謝罪も訂正もしない旨、NHKより回答がありました。
国会議員は、NHKを敵に回したくないとの理由で逃げ腰です。
又、放送法第64条第2項に違反している事例があるのですが、その件で総務省に嘘の報告までしています。
NHKは不正や不法行為を組織全体で隠蔽しますが、こちらが提訴できないと踏んだ上で、「不服があるなら裁判にしろ」と平気で暴言を吐きます。
カンパニュラ
2017/12/16 19:49
カンパニュラ様
 情報ありがとうございます。
小山
2017/12/17 00:16

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